もみカル。
2024-02-26T09:28:06+09:00
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お笑い・音楽レビューを中心に続いています。細々と更新し、20年目。SPECIAL OTHERS、スカパラ、ゴッドタン、クイズ☆タレント名鑑 etc。/スポーツ系記事はこちら→http://agemomi.exblog.jp/
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2ヶ月遅れの「M-1グランプリ2023」レビュー
http://agemomi2.exblog.jp/33267591/
2024-02-23T23:15:00+09:00
2024-02-26T09:28:06+09:00
2024-02-23T23:15:41+09:00
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お笑い
このところ、「ボクらの時代」で、令和ロマンとヤーレンズが共演。
たまたま見た「アンタウォッチマン」で、ヤーレンズ特集。
「そういえば、まだ去年のM-1レビューを書いてない(^^)」
ということで、昨年に続き、2ヶ月遅れのM-1レビューを。
ただ、記憶もだいぶ曖昧なので、基本は、昨年のM-1直後に、X(Twitter)で書いたときのレビューをもとに。
字数制限で書けなかったことや、Xでレビューを書いた後に感じたことなどを追加して、編集した内容となります。
なお、昨年までのM-1(and「THE MANZAI」)レビューは下記より。
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〔※「M-1グランプリ」/「THE MANZAI」 過去記事〕○M-1グランプリ 2022
○M-1グランプリ 2021(1、2)
○M-1グランプリ 2019
○M-1グランプリ 2017○M-1グランプリ 2016(1、2)
○M-1グランプリ 2015(1、2)
●THE MANZAI 2014
●THE MANZAI 2013
●THE MANZAI 2012
●THE MANZAI 2011
○M-1グランプリ 2010
○M-1グランプリ 2009(1、2、3)
○M-1グランプリ 2008(1、2)
○M-1グランプリ 2007(1、2、3)
○M-1グランプリ 2006(1、2)
○M-1グランプリ 2005(1、2)
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まずは、出番順に、各組の短評。
1. 令和ロマン
トップバッターとは思えないほど、観客の笑いの量を引き上げたのは見事。
裏にあるであろう、笑いの方程式が悪目立ちしないのは、くるまの熱量によるものか。
ただ、途中しつこく行ったところで何も無かったところは、やや肩透かしを食らった。
91点。
2. シシガシラ
敗者復活からの勝ち上がり。
脇田の佇まいは、ヨコハマホームラン時代から、声も含めて面白い。
ただ、ハゲいじりに続く、2段目のロケットが無いと、決勝のステージでは厳しかったか。
なお、敗者復活組が上位に来ないということは、ある意味、最初のファイナリストの選出が妥当であることの証とも言えるか。
89点。
3. さや香
技量の高さは見えたが、ちょっと、笑いに持っていく展開が強引に感じた。
ホームステイという題材自体が悪い訳ではないのだが、笑いに持っていくためのマッチポンプ感も感じてしまった。
90点。
4. カベポスター
正直、ネタが弱かった印象。
永見のネタの切り口はセンスを感じる部分はあるが、まだ、そのセンスの面白さを倍加させる「演」の部分が追いついてない印象。
89点。
5. マユリカ
お笑いファン内の評価は高いが、中谷の感じがボケっぽいので、まだその見方に戸惑いを感じる部分もある(「ラヴィット」などを見ていれば、また違うのかもしれないが)。
中谷の途中の動きは面白かったが、一つ一つのボケがまだ弱いか。
阪本次第で、さらに面白さが加速する可能性を秘めたコンビではあると思う。
なお、ネタとは関係ないが、中谷には、どうしてもVaundyの影がちらつく。
Vaundyのアーティストとしての才能が素晴らし過ぎるだけに、色々と複雑な思いが渦巻く(^^)。
90点。
6. ヤーレンズ
最初から最後までずっと面白かった。
昨年の敗者復活は、以前のスタイルからの変化をまだ受け入れきれなかったが、完全に新しいスタイルを自分達のモノにした感じ。
言うならば、ツッコミとの共犯関係のあるアンタッチャブル。
全く隙の無い漫才だった。
95点。
近年は、ほぼネタ番組を見ていないが、ヤーレンズの最初の印象は、6~7年前、「チャップリン」シリーズに出ていた頃の、少し、おぎやはぎを彷彿させる感じ。
また、その後、「ゴッドタン」で、K-PROの児島氏が「もう少し頑張ってほしい芸人は?」といったような質問をされたときに、ヤーレンズの名を挙げていたのが印象的だった。
「このまま、消えてしまっても…」というところから、自分たちの力での、見事な這い上がり。
7. 真空ジェシカ
課題の「頭で考えた感」の払拭は、今年も叶わずといった印象。
ガクの川北へのアプローチの仕方を変えるなど大きな変化が必要にも思う。
また、お笑いファンが多いせいか、観覧客のボケへの反応が、やや早すぎるのが気になった。
90点。
8. ダンビラムーチョ
昨年の敗者復活に続く歌ネタ。
色々な要素を入れた所に進化が見えた。
歌ネタの場合、選曲の時代設定が難しいが、ある程度、バランスもとれていたと思う。
個人的には、「アイドル」のインストゥルメンタルバージョン(無機質に音が鳴っている感じ)の再現が、刺さった(^^)
「漫才とは」がテーマになるM-1だが、こういうネタも評価されるべき。
92点。
9. くらげ
2019年の敗者復活が初見だったが、派手さはないものの、雰囲気があるコンビ。
いいネタだったが、パターンが一定、プラス既視感があるとみなされたか。
渡辺の朴訥とした感じは意外と貴重なので、今回の結果にめげず、またネタを磨いていってほしい二人。
なお、横浜DeNAファンとして、杉が、大貫に似すぎている(^^)。
89点。
10. モグライダー
一昨年の「さそり座の女」に続く歌解釈ネタ。
二人の関係性が反映されたいいネタ。
10・20代の多くは、もはや、スターにしきのを知らない人も多いだろうが(^^)。
モグライダーの面白さへの評価として、ともしげがあたふたする反応が面白いという時期はもう過ぎていると思うので、今回の感じは決して悪くないと思った。
92点。
ということで、1st round の個人的点数は、下記のような形に。
1位 95点 ヤーレンズ
2位 92点 ダンビラムーチョ、モグライダー
4位 91点 令和ロマン
5位 90点 マユリカ、真空ジェシカ、さや香
8位 89点 カベポスター、くらげ、シシガシラ
1位は圧倒的。2位の2組は、構造の独自性を評価しての点数。
続いて、最終決戦。
1. 令和ロマン
入りは不安を感じさせたが、「単純作業」以降はどれも大きくウケる。
1本目とやや違う角度のネタというのも、評価ポイント。
1st roundに続き、裏にあるであろう計算も「演技力」の高さで気にならない。
強いて足りない部分を探すなら掛け合いの少なさか。
2.ヤーレンズ
1本目と同じく、快調にボケてリズムよく突っ込む。
ただ途中、笑いが少ない時間帯が。ほぼ全編笑わせてくれるだけに、少しの穴が目立ってしまった。
あと、自分達の世代のあるある芸能小ネタはいらなかったように感じた(day after tomorrow、ラブストーリーは突然に)。
これは、今後ブレイクしたとしても、気を付けた方がいい部分だと思う(「懐かしい」ということでのセレクトならばまだいいが、途端に「古さ」を感じてしまうので要注意)。
それでも、十分ハイレベルの漫才。
3. さや香
見せ算。このネタをやりたいんだろうなという思いは伝わってきたが、さや香の「掛け合い」を見たいと思っていた多くの人の心には入ってこなかったのでは。
ネタ自体は悪くない。
ただ、見ている側の純粋な「笑わせてほしい」という期待に応えるネタではなかったように思った。
いざ、最終決戦の判定。
個人的には「よくぞ、ここまで」という意味で、ヤーレンズに優勝してほしかったが、客観的に見ると、ずっと笑わせ続けたという部分、そして、ネタの強度で、令和ロマンが少し上だと感じた。
審査ボードの反転は、これ以上ない展開。松本人志の前で、もっと溜めてもいいと思った(^^)。
結果、令和ロマンが優勝。
結成10年以内での優勝は、2018年の、霜降り明星以来。
最後、さや香には、山田邦子の凄い爆弾が。
なお、時間の関係で決勝後に見た、敗者復活についても少し。
個人的には、各ブロックで1組選ぶならば、Aブロック … ロングコートダディ、Bブロック … ナイチンゲールダンス、Cブロック … ダイタクで、ロコディ勝ち抜け。
(実際は、Cブロックを勝ち上がったシシガシラが、芸人5人の審査でも最多得票で、決勝進出)
ロングコートダディは、「大喜利 → 回収」とありがちな構成も、その既視感を上回る完成度。
ナイチンゲールダンスは、中野のキレキレ度に一票。
ダイタクは既視ネタだが、2023年版に改訂された所を評価。
他では、トム・ブラウンはもはや別競技(^^)。ただ工夫次第で決勝進出もあったと思う。
各組、全体的に「わけのわからないボケ」をするネタが多かったが、ななまがりはその「わけのわからなさ」のレベルが違う。
また、スタミナパンのツッコミが上手いと思った(ちょっと鮎川誠似)。
初見のエバースにも力を感じた。
なお、審査方式に関して言えば、知名度投票になりがちな昨年までの方式よりはいいとは思ったが、やはり出順が後ろの組、インパクトの強い組が有利なのは否めず。
ここ4年、敗者復活組が決勝で結果が出てないことを見ても、更なる方式の変更が必要にも思った。
また、昔に比べて、随分、選出される芸人の数は減ったが、力不足を感じる芸人も散見された。
さらに絞って、12組ぐらいにした方が、より爪痕を残す組を選べるのではとも思った。
さて、再び、決勝に戻って、総括を。
今回は、令和ロマンが漫才脳を、ヤーレンズが揺るぎないポテンシャルを見せた大会だと思う。
前述のとおり、1st round の個人的ベスト3は、ヤーレンズ、モグライダー、ダンビラムーチョ。
ヤーレンズをのぞき、実際の審査員の評価とは違ったが、モグライダーは、2人の関係性がいい意味で見えるネタという部分、また、ダンビラムーチョは、しゃべくりが重視されるなか、今後、漫才の面白さの可能性を広げていくという意味では、ああいったネタも評価されるべきと思っての評価。
なお、全体的に、観覧者のボケへの反応が早過ぎるのが気になった。
お笑いファンが多いからなのかもしれないが、テレビの視聴者の反応とはやや乖離があったのではと思う。
実際、令和ロマンとヤーレンズは見事だったが、2019年と比べると全体的な面白さは低かった。
お笑いファンの解釈はともかく、出場芸人初見の視聴者がどれだけ面白く感じたか。
スピンオフの増加など、大会の年々の肥大化とは裏腹に、正直ここ数年に限れば、M-1は、面白さでキングオブコントに負けている。
そうしたなか、単に、出場資格年数の違いだけでなく、M-1でストレスを感じる部分を上手く削ぎ落とした「THE SECOND」が今年も開催される。
その、トーナメント抽選会で、令和ロマンが進行を務めるというのも、なかなか興味深い。
例えば、ロングコートダディやニッポンの社長のような、まだM-1を制していない芸人の漫才を、果たして「M-1での成績」という評価軸だけで評価することが正しいのか、という疑問もちらつく、ここ数年。
2024年のM-1は、再開してちょうど10回目となる。
「果たして、M-1が『一番面白い漫才を決める大会』になっているか」
今年の、M-1に課せられた課題のように思う。
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更新
http://agemomi2.exblog.jp/33206635/
2023-12-31T01:14:00+09:00
2023-12-31T01:14:01+09:00
2023-12-31T01:14:01+09:00
momiageculture
未分類
もう一つのブログと同様、なかなか書く時間がとれない現状ではありますが、ブログを書き始めてから20年となる、2024年。
もう少し一つ一つの投稿をコンパクトにするなどして(^^)、来年こそ、更新頻度を上げていきたいと思っています。
(2023年は、音楽界においても、書いておかなきゃいけないことがありましたし)
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無題
http://agemomi2.exblog.jp/33005695/
2023-06-19T23:27:00+09:00
2023-06-19T23:27:45+09:00
2023-06-19T23:27:45+09:00
momiageculture
未分類
「THE SECOND」のレビューを書こうと思ってはいるのですが、なかなか書く時間がとれないうちに、すでに大会終了から1ヶ月が経過(^^)。
今週末までには何とか、と思ってはいますが、HDDレコーダーの残量を減らす作業もしなければならず。
先日読んだ「OWARAI AND READ」も面白かったので、そのあたりの感想も書ければとも思いますが、野球も追わなければならないので、そちらにも時間を…。
(今季は、横浜DeNAも見ごたえのあるシーズンを送っているので、スポーツ関連のブログも更新したいところ)
来月はいよいよ、井上尚弥vsフルトンもやるし、錦織が復帰したテニスも……と、色々なことに惹かれる6月の日々。
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2ヶ月遅れの「M-1グランプリ2022」レビュー
http://agemomi2.exblog.jp/32907411/
2023-02-28T00:38:00+09:00
2024-02-23T21:22:42+09:00
2023-02-27T00:38:21+09:00
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未分類
決勝からすでに2ヶ月以上が経つが、遅すぎるM-1レビューを(^^)。
なお、2022年大会は、大会前に「Number」がM-1特集号を発売。
Number Webでは、近年、お笑い関連の記事が載ることもあり、自分の場合はスポーツもお笑いも好きなので、ポジティブに受け止めたが、「思い切ったなあ」という印象も持った。
記事の多くを受け持っていたのは、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧幻の三連覇』『早実vs.駒大苫小牧(木村修一氏との共著)』など、野球の著作を多数出す一方で、ナイツ塙の本の構成なども手掛ける中村計氏。
『お笑い芸人就職読本』の著作がある増田晶文氏は、2003年M-1のドキュメント記事を。
毎年、大会後に審査員レビューをしている堀井憲一郎氏にM-1データ検証記事、スーパーマラドーナ武智には分析的視点に秀でた生島淳氏、という布陣には、適材適所感を感じた。
さて、本題。
昨年と同じく、出番順に、感想と個人的点数を(審査員平均は、小数点第一位までを記載)。
個人的採点は、ネタを見た直後にメモった点数なので、「後で考えたら違ったかなあ」という思いもあるコンビもいるが、その時感じた思いを重視して、変えずに、そのまま書いた(感想も同じく)。
1. カベポスター
2021年M-1敗者復活での「ミュージシャン組み合わせ」ネタがかなり良かったので、それ以来、気になる存在に。
2022年は、賞レースでの戴冠もあり、決勝初出場ながら上位もうかがえる力があると見られていたように思う。
ネタは「大声コンテスト」。テーマの微妙さもあってか、立ち上がりは静かだったものの、徐々に上げていき、さらに、ネタの後半になるにつれ、色々なものが繋がっていく、という構成力を感じるネタ。
個人的には、その構成力を評価して、92点。さらにトップバッターとして2点をプラスして94点をつけた(結果的にトップタイの数字に)。
トップバッターとして2点追加したのは、やはりトップバッターのハンデを考えて。
「以前ほど、トップバッターの不利さはない」と言われることも多いが、「じゃあ、トップでいきなり96点以上つけられるか」というと、はやり厳しいと思う。その意味で加点をした。
ただ、実際の審査員の点数は伸びなかった(トップということもあり、この時は、どのぐらいに位置する点数かはわからなかったが)。
テーマのセレクトもあったかもしれないが、カベポスターの場合、浜田の喋りの訥々さが、やや気になる。「永見のボケを丁寧に説明している」という見方もできなくはないが、ちょっと説明的すぎるきらいもある。
大会後、山田邦子がつけた最初の点数が低すぎる(84点)という批評もあったが、もし90点をつけていたとしても合計は640点で、7位のオズワルド(639点)は抜くものの、5位タイ(647点)の真空ジェシカ・ヨネダ2000には大きく及ばなかった。
「面白いところがあったネタ」という印象は残せたものの、「面白いコンビ」という印象までは残せなかったというのが、決勝初出場での爪痕ではなかったか。
★個人的採点…94点(92+2)〔1位タイ〕、審査員平均…90.6点〔8位〕
2. 真空ジェシカ
昨年に続いての、決勝出場。
ネタは「シルバー人材センター」。ウケの度合いからすると、結構ウケていたと思う。順位も昨年の6位から一つ上がり、1位との得点差も縮まった。
ただ、個人的には、このコンビで気になる部分は解消されていないと思った。
昨年のレビューで書いた「一つ一つのボケツッコミが分断されている」というところは、シルバー人材センターという、ある意味では何となくイメージできるものを持つものをテーマにしたことで、そこまでは感じなかった。
ただ、同じく、昨年も書いた「端々に『面白いこと考えた』感が出てしまっている」印象は拭えなかった。
その原因としてあるのが、大会後、ナイツの塙も同様のことを指摘していたが「ツッコミのワードチョイスの気が利きすぎている」こと。
笑いを誘う要素としては優れているワードかもしれないが、やりとりのなかで出てくる言葉としては、ちょっと「センスが利きすぎている」。
そこがこのコンビの強みかもしれないが、漫才ということで考えると、マイナスの側面も大きいのではと思う。
「人力舎の若手」という意味では応援したい気持ちもあるが、バラエティ番組での「わかる人にはわかる」というボケの方向性も含め、ちょっと内向きすぎているところに、自分たちの可能性を抑えつけている部分も感じる。
評される際に「センス」というワードが使われなくなったとき、初めてこのコンビの本当の面白みが出てくるのではないか。
★個人的採点…88点〔7位〕、審査員平均…92.4点〔5位タイ〕
3. オズワルド
敗者復活からの、決勝進出。
なお、昨年のM-1と同じく、日曜ながらこの日は仕事だったので、敗者復活を見ない状態でオズワルドの勝ち抜けを知ることとなった(後日、視聴。感想は、本記事の最後に)。
今回で4年連続4回目の決勝進出のオズワルド。
「出場を重ねれば重ねるほど、手の内が知られていることで、不利になっていく」とも言われるM-1だが、「一番面白い漫才師を決める」という観点からすると、そうなってしまうことはどうなのだろうというのが、最近感じていたことだった。
なので、今回はあえて「オズワルドのネタを見るのが初めてだったら」という視点で見た。
その視点で付けたのが、94点(1位タイ)という点数。
審査員に「テーマとしては微妙だったかもしれない」という評価を受けた「夢」というテーマだったが、個人的には面白い切り口だと感じた。
「いつものオズワルドよりテンポが早い」というのは、確かにそうだったかもしれないが、ネタの構成のレベルの高さを考えると、そのマイナスポイントを上回っていると感じた。
一方、長年見ていることで、当初は戸惑いを感じることもあった、伊藤の声張り上げツッコミ(あるいはワード強めツッコミ)の唐突さが気にならなくなってきている(マイナスポイントとして換算しない)のは、審査という意味では、「知っていること」の弊害と言えるかもしれない。
結果的に、審査員の点数は伸びなかった。
一言で言えば、「オズワルドにしては…」という評価だったのだろう(ただ、大吉は、3位タイ(93点)の点数をつけている)。
この「○○にしては」という評価は、逆に、これまで決勝で点数を残せなかった芸人にとっては、プラスの方向に働くこともあるのかもしれない…。そんなことも思った、オズワルドの得点だった。
★個人的採点…94点〔1位タイ〕、審査員平均…91.3点〔7位〕
4. ロングコートダディ
入りはともかく、ネタを通して、両者がボケまくるネタ。
それぞれのボケの強度は強い。しかも、その強度が落ちない。
となると、昨年も書いたが、このネタが点数をとれるかどうかは、「コントでも…」「漫才でやる必然性」という見方を上回れるかどうか。
結果、2位という高い評価を受けた(昨年も4位だったので、一定の評価は受けたが、それを大きく上回る結果に)。
それぞれのボケの強度に加え、兎、堂前とも、表情・しぐさで笑いがとれるというのが強い。
このことで、「センスが高い」と感じるボケだけでなく、シンプルなボケでも笑いがとれる。これは、芸人として、本当に強み。
キングオブコント決勝のネタは、ややニッチな部分を狙い過ぎた印象もあったが、今回のネタはわかりやすかった。
結果的に優勝には届かなかったが、優勝するポテンシャルがあることを改めて感じさせてくれた今回。
ただ、昨年も書いたが、今後、優勝しなくてもその評価が落ちるコンビでもない。
今後も決勝出場の可能性が大きいと思われる「キングオブコント」しかり、優勝とは違う部分で「コンテスト大会」の意味を感じさせてくれそうな存在(それは「ニッポンの社長」もだが)。
ただ、来年以降、M-1に対して、本人たちが、どのようなモチベーションを持てるか、という部分は気になる。
★個人的採点…93点〔4位〕、審査員平均…94.3点〔2位〕
5. さや香
思えば、昨年の大会も含めて「正統派」のスタイルのコンビって少ないよなあ、という思いもよぎるなか、待望の「正統派登場」のタイミングだったかもしれない。
テーマのセレクト、掛け合いの自然さ、ネタ内の展開。どれも、素晴らしかった。
5年前の決勝初出場は、7位。審査員7人中5人が「90点」という結果が、当時の現在地を表していた。
掛け合いは自然で、上手さを感じる。ネタも面白くなくはない。
ただ「もの凄く笑ったかというと……」。
そんな印象だったと思う。
そこから5年。素晴らしい「漫才」を見せてもらった。
このネタの素晴らしさは色々とあるが、一番大きかったのは、やはり「34歳で免許返納」というファーストインパクト。
その後の、「47歳」というワードであったり、佐賀のくだりなども面白かったが、それも「まさかの『免許返納』」という、誰しもがツッコむ「着火点」があってこそ。
「免許返納」を言う直前の石井の溜めもよかった。
新山の熱さは、やや「他のネタだと、少し過剰に感じるかも」という印象も抱いたが、このネタは、その熱さが生きるネタだったと思う。
審査員の点数も高得点がならび、まさに「爆発」といった感じで、1位の座に。
★個人的採点…94点〔1位タイ〕、審査員平均…95.3点〔1位〕
6. 男性ブランコ
平井の「隠してもにじみ出てくる『奇妙さ』」と、浦井の「温かさを感じる『落ち着き』」が印象的なコンビ。
今回はどんなネタをやるのかと思っていたところで、披露したネタは「音符運び」。
その発想には感心させられる……と書きたいところだが、「音符運び」というネタだとわかった瞬間、頭をよぎったのは、バカリズムの「都道府県の持ち方」だった。
扱っているものは別のものなので、全く別のネタと言えばそうなのだが、どうしても、都道府県ネタの幻影が頭が離れず最後まで見てしまったというのが正直な所だった。
もちろん、浦井の斬られ方は、なかなか他の芸人がマネできるものではなく、平井の「あたふたするだけで、何もしない」表情も、100点の演技だった。
欲を言えば、それぞれの音符運びをつなげた時にもう一つの画が見える、という構成があっても、とも思ったが、そうなると、見ている側に「画」が浮かびづらいかもしれず。今回のようなシンプルな形が、このネタの見せ方としては最善だったかもしれない。
いずれにしても、バカリズムのネタが終始浮かんでしまったという部分で、ちょっと客観的な点数の付け方が難しかった。
なお、「キングオブコント2021」のレビューの時に書いた、「数年後、ドラマでちょくちょく見る顔になっている」という思いは、さらに強くなった(特に浦井)。
★個人的採点…91点〔5位タイ〕、審査員平均…92.9点〔4位〕
7. ダイヤモンド
ロングコートダディ、さや香、男性ブランコと、3組連続でウケた後を継ぐ形での出番順。
前3組が結構インパクトがあるネタだっただけに、入りで「そこまで面白くならないかもしれない…」と思われてしまったことが最後まで響いたところはあったと思う。
ただ、前の組の影響を差し引いても、ネタの力不足は否めなかった。
ネタの着眼点自体は悪くなかったように思ったが、ネタが進化(ここでは、あえて「進化」という言葉を使う)し続けている現在、一つの筋だけだと、見せ方などがかなりうまくないと、物足りなさを感じてしまう。
同時並行で、「…もね」という口癖へのツッコミという筋も進めていたが、こちらの筋が全くハマッていなかったことは、本人たちにとっては誤算だったのかもしれない。
なお、どちらかというと、野澤の方にスポットが当たるコンビだと思うが、個人的には、小野の方に注目して見ていた。
というのは、このブログで何度もレビューを書いた「笑けずり 1stシーズン」に出演していたメンバーだったため(そこから、もう8年が経った)。
「笑けずり」出演時、小野はアルドルフというコンビで出場していたが、正直、当時は厳しい評価を書いた。
番組終了後、半年ほどしてアルドルフは解散(なお、現在、相方の松下は、芸人として活動する一方、競馬関連の記事も寄稿している)。
小野は、元カーニバル(「バチバチエレキテる」に出演)のゆきえと「セクシーパクチー」と男女コンビを組むも、1年で解散し、その後、ダイヤモンドを結成した。
8年前のレビューでは、厳しい評価を書いたうえで、「おそらく、今回の結果は、本人たちにとっても屈辱以外の何物でもなかったのでは。これで、2年後ぐらいに、ビックリするぐらい面白くなっていたら、それこそ、逆の意味で「『笑けずり』効果、恐るべし」ということになるが。」と書いた。
さすがに、2年というわけにはいかなかったが、2度の解散を経験したうえで、「笑けずり(1stシーズン)」メンバーでは、ぺこぱに次ぐ、M-1の決勝進出を果たしたことは快挙といっていい。
ただ、初の決勝の舞台は、自分たちの力を思い知らされた場だったかもしれない。
ここまでの道のりや、ネタでの喋りを見ていると、「一生懸命さ」を感じる小野。ただ、一生懸命「だけ」で笑いを勝ち取れるほど甘い世界ではないのだろう。
今後、「あの最下位があったからこそ」と振り返ることができる未来をつかみ取ることはできるだろうか。
★個人的採点…86点〔10位〕、審査員平均…88.0点〔10位〕
8. ヨネダ2000
個人的には、今回の決勝メンバーで一番期待をしていたコンビ。
「漫才」「コント」といったカテゴライズを論じること自体の意味を無効化するネタで、インパクトはもとより、優勝までかっさらう可能性も…とも思っていた。
ネタは、「イギリスで餅つきをしたい」。
審査員の点数やコメントを見る限りでは、ある程度の評価は得ていたように思う。
ただ、個人的には、物足りなさ、そして、少し引っかかるものを感じた。
奇想天外さを感じるテーマではあるが、「外国で日本人の奇妙な風習を行う」という設定に、少し「古さ」を感じてしまう部分があって、正直、ネタに乗りきれなかった。
「何やってんだ」(褒め言葉)というヨネダ2000らしさがあるネタであり、「ペッタンコ~」のリフレイン効果も凄かったが、疑問を感じてはいけない、ヨネダ2000のネタに、最初のところで疑問を感じてしまったがゆえに、笑いきれなかった。
なお、ネタ終了後、大吉が、「『ダ・パンプのKENZO…」というセリフの、「ダ・パンプ」はいらないんじゃないか」と指摘していた。
この指摘がどこまで正解かは、その人の世代などにょって、意見が分かれるかもしれないが、今後のヨネダ2000にとって大事なのは、こうした具体的な指摘をしてくれる人の存在ではないかと思った。
やっているネタがかなり特殊なだけに、指摘も難しく、ともすると「独自のネタなので…」という一言で評されてしまうこともあると思うが、だからこそ、具体的な修正箇所を言ってくれる人は貴重。
今年になり、バラエティ番組への出番も増えているようだが、今後、ただの奇想天外だけでない、より洗練された奇想天外ネタを見せてほしい(それができる実力があると思っているので)。
★個人的採点…88点〔8位〕、審査員平均…92.4点〔5位タイ〕
9. キュウ
何の因果か、決勝に進出したタイタンの芸人2組が、最後の2組に残った。
まずは、キュウ。
他の芸人から、独特の空気感やテンポが評価されつつあるコンビ。
前年の敗者復活の順位(最下位)からすると、視聴者投票では得点が伸びないタイプだけに、ダイレクトで決勝に進めたことは、キュウにとってかなり大きな一歩だったと思う。
となると、独自のスタイルで、審査員の心も、観覧客の心も、ギュッと掴みたかったところだったが、残念ながら、そうはいかなかった。
得点が伸びなかった原因としては、やはり、ネタへの共感ポイントが少なかったことが一番。
清水が、ぴろの言葉並べを解き明かしていくネタだが、「なるほど」感が薄いと、せっかくの清水の空気感づくりも浮いてしまう。
独特の「空気感」を作れるコンビだが、独特の「世界観」を持っているコンビではないので、やはり、言葉並べの精度が高くないと、面白さが半減してしまう。
なお、ネタが終わっての審査員の講評の際、低い点数をつけた松本人志に対し、「太田さんの事務所だから…」とコメントし、微妙な空気を作った、ぴろ。
その後、ぴろが「とろサーモン・久保田の入れ知恵だったと」語ったそうだが、ダウンタウンと爆笑問題自体が「ラフ&ミュージック」で2度共演し、もはや、反目も過去のものとなりつつあるなか、これは悪手だった。
出場していないのに、時流を読めてないことがわかってしまったのが、久保田らしいと言えば、らしいが(^^)。
★個人的採点…87点〔9位〕、審査員平均…88.6点〔9位〕
10. ウエストランド
3年ぶりの決勝進出。
井口がぼやきまくるスタイルは変わらないが、「あるなしクイズ」の体裁をとったことで、一つ一つのターンがはっきりしたように思う。
3年前の決勝は、正直、河本が噛み噛みで、評価云々以前の問題だった(結果は9位)。
ウエストランドを初めてみたのは、2012年のTHE MANZAIの「認定漫才師50組大集結スペシャル」だったが、かなりのインパクトがあった。
隠すこと無く、心から愚痴を言い続ける様は、作り物ではなく、ナチュラルボーンに見えた。
司会の岡村にもハマっていて、ほどなく「笑っていいとも!」はじめ、いくつかの番組への出演も果たしたが、ブレイクするまでには至らず。
また、ネタで吐かれる愚痴の多くが「モテない男性を見下してくる女性への攻撃」のため、次第に「また言ってる」感が増してくることで、今後「笑える度」が少なくなっていく危険性もあったと思う。
その意味で、今回のネタでは、攻撃対象(^^)が広くなったのはよかった。
対象が、「自分(井口自身)が言える人」から、「みんな多少の違和感を感じてはいるけど、言えない人」になったことで、共感度や爽快感が増したのではと思う。
ただ、(井口自身が)やっていることは、10年前と変わらない。ということで、個人的には「91点」とそこまで高くない点数をつけた。
実際の審査員の点数は、高評価が並び、男性ブランコを抜いて、3位で最終決戦に滑り込んだ。
前述の「あるなし」の導入でネタが見やすくなったこと。加えて、数年前に比べ、さらに「言ってはいけないこと」の範囲が広くなってきたことが、逆に、そんなことお構いなしに喋る井口の毒を際立たせたのかもしれない。
★個人的採点…91点〔5位タイ〕、審査員平均…94.1点〔3位〕
ということで、最終決戦は、さや香、ロングコートダディ、ウエストランドの3組が進出。
まず、最初の出順は、ウエストランド。
結果的には、この1番手という順番が功を奏した。
1stラウンドに続いて、2本連続のネタ披露。1stラウンドの余韻も冷めやらぬ状況で、さらに、井口が強い毒を吐く。
個人的に最高だったのは、「M-1 アナザーストーリー」のくだり。
ともすると、この後、自分が出るかもしれない番組への攻撃。しかも、その番組で一番ウリともしている部分(これまでの苦労を映し出すことでの感動演出)を突くのは、井口しかできない芸当だと思った。
舞台裏が見られる「アナザーストーリー」の貴重さを感じつつも、「お笑い」という特性上、「裏の苦労を見せ過ぎること」は必ずしもお笑いのためにならないのでは、と感じていたこともあり、「よくぞ言ってくれた」と思った。
1stラウンドにも増して、色々なものを斬りまくる、井口。
「次は、何を言うんだろう(言っちゃうんだろう)」と、見ている側が求める空間づくりは見事だった。
2組目は、ロングコートダディ……だっだが、正直、「井口台風」の余韻がまだ残っており、中盤までは、あまりネタが入ってこなかった。
正直、最終決戦の出順に関しては、完全に割を食ったと言えよう。
そんななかで気になったのが、堂前が、拳を前に出して、タイムマシンのポーズ(?)をしたときの、兎の「原監督かと思った」というツッコミ。
「野球たとえ」は、時折、芸人が使う方法だが、自分が野球ファンであるがゆえに、「(野球を知らない人が見た時に)これで笑いとれるかなあ」と心配をしてしまう。
ナイツぐらい、野球を知らない人はハナから眼中に入れていないネタ(^^)ならばいいが、安易に入れると、少し微妙な空気を作る可能性もあるかなと思った(今回のロングコートダディの場合は、ある程度笑いをとっていたが)。
あと、ネタを見て改めて思ったのは、兎の面白さ。「たとえボケ役でなくても、一つ一つのしぐさが面白い」というのは、本当に芸人として強い。
3組目は、さや香。
印象的には、1stラウンドは、圧倒的1位、という感があったが、M-1の場合、1stラウンドの得点としてのアドバンテージは無い。
その意味では、改めて、強いネタが求められた。
1本目に続き、二人のやりとりは安定していた。
石井と新山の攻守が途中から逆転する展開も、構成としてはキレイだったと思う。
ただ、唯一気になったのは、「大人の関係」というテーマ。
昔より、そうしたことに寛容でなくなりつつある雰囲気もあるなか、ちょっとテーマとして、微妙なものを感じる人もいるかもしれないと思った。
ネタ自体は、「大人の関係」というワードを上手く使ったネタではあるし、前述のように、やりとりや構成は高いレベルを見せてくれたが、そうした微妙さをはからずも感じたことに、さや香云々ではなく、社会の変化とネタのウケの関係みたいなものを感じたりもした。
3組のネタが終了し、正直、審査員は迷ったと思う。
漫才の構成ややりとりの完成度をとるならば、さや香(形式上は、最終決戦のネタで決める形だが、1stラウンドのネタの見事さも、当然頭にあっただろう)。
ネタの強烈さ(というより、井口の強烈さ)をとるならば、ウエストランド。
結果は、6票 対 1票で、ウエストランドが、優勝をもぎ取った。
ウエストランドの勝因は、色々とあるだろうが、何と言っても、井口の「愚痴」、というより、魂の叫びが、手繰り寄せた優勝だと思う。
正直、基本的なネタのスタイルは、テレビに出始めた頃と変わらない。
ただ、目に見える部分、目に見えない部分含めて、井口がネタを改良していったことで、「攻撃」が、「咆哮」にパワーアップした。
「毒舌漫才」と評されることが多いウエストランドだが、毒舌には、見てから言うまでに、少し「考える」時間があるように思う。
井口のそれは、もはや瞬時のものであり、それこそ「咆哮漫才」と言ってもいいと思う。
なお、後日、「アナザーストーリー」でも、「苦労」より「反骨」が見えたのもよかった(河本の方は、しっかり「アナザーストーリー」だったが(^^))。
最後に、決勝後に見た、敗者復活について。
こちらは、全組ではないが、それぞれメモした一言を(順番は、ネタ順)。
・シンクロニシティ … 上手い。
・ママタルト … 前半低調、後半盛り上がり。
・からし蓮根 … 上手いが、最後はけるのが早かった。
・オズワルド … ツッコむまでの間が少し早い。
・令和ロマン … ウケ大。元ネタがわからないものもいくつか。
・ストレッチーズ … オチの部分をやり切って欲しかった。
・カゲヤマ … パワー。ビジュアル的な「空耳アワー」感。
・ビスケットブラザーズ … 着眼点は面白い。
・ななまがり … 奇天烈。
・ダンビラムーチョ … 歌。
・ケビンス … 勢い。
・ヤーレンズ … キレ。
・ミキ … 面白かったけど…。
もし、3組投票するとしたら、シンクロニシティ、令和ロマン、ヤーレンズ。
シンクロニシティは、よしおかの暗さにスポットが当たりがちだが、ネタをよく見ていると、二人とも上手い。
単に、ディスコミニケーションだけで笑いをとっているのではなく、それぞれのセリフの言うタイミングが正解であるがゆえに、笑いを引き出している。
今後については、ネタのバリエーションをどれだけ作れるかが一つの課題のような気もするが、持っている技術は間違いなく高いので、さらに、その力に磨きをかけてほしいところ。
令和ロマンは、前述のコメントにも書いたが、ところどころ、元ネタがわからないボケもあった。笑いをとるに際しては、その元ネタがわかる人に刺さることも大事だが、その元ネタがわからない人にも「なんか面白いこと言ったんだな」と思わせることも大切(ちなみに、自分の場合、アニメ・漫画は、からっきし弱い)。
その意味で、令和ロマンは、今回、敗者復活で2位に入ったことで、その壁を破るパワーを見せたと思う。
ただ、今後その先へ行くには、元ネタがわからない人にも「面白いことがわかる」ところまで、ネタを引き上げることが大事なのでは、とも思った。
ヤーレンズは、今回、久々に前評判が高いこともあって、期待して見た。
正直、その期待ほどは…、という部分もあったが、今回敗者復活に出た17組のなかでは、やりとりのキレに関しては一番、ということで、3組のうちの1組に挙げた。
気になったのは、やりとり内の、若干の「古さ」と「あざとさ」。
「こそこそチャップリン」に出てた時から二人とも年を取ったというのもあるが(^^)、「上手さ」が「古さ」に見えないような工夫が必要かなと思った(なすなかにしのような例もあるので、一概にベテラン感が悪いことではないが)。
ということで、自分の見たままに、点数、そして敗者復活の3組を選んてみたところ、決勝で1位タイに選んだオズワルドは、敗者復活の上位3組に入らないという結果になってしまった。
決勝は、「どのコンビも初見として見るならば」という視点。
一方、敗者復活は、ある程度、前知識を持ったうえで「光るものを見せた芸人」という視点で見たことが、そうした選択になったのもかもしれない。
その意味で「審査基準の難しさ」というものを改めて感じた。
なお、今回話題になった審査員の選出についても、少し触れたい。
M-1の審査員は、大きく分けて、下記のように分類されると思う。
1. 芸人が審査されてうれしい人・評価に重みがある
2. 漫才の実績が高い人・技量が認められている
3. 審査員としての鑑識眼がある
4. 漫才師ではないが、お笑いの世界で実績を残している
5. 審査員を続けるうちに、名物審査員化
実際の審査員を当てはめると、下記のようになるだろうか(2回以上審査員を務めた人を中心に)。
1 … 松本人志(2にも分類)、島田紳助(2にも分類)、立川談志(4にも分類)
2 … 西川きよし、オール巨人、中田カウス、島田洋七、中川家礼二、富澤たけし、博多大吉、塙宣之
3 … 渡辺正行、大竹まこと、ラサール石井
4 … 立川志らく、春風亭小朝、南原清隆
5 … 上沼恵美子(2にも分類)
今回、その選出に色々な声が上がった山田邦子は、分類するとしたら、4に入るだろうか。
ただ、いわゆる第一線を張ってたのは、30年ほど前。
さらに、その前任といってもいい上沼恵美子が、2、さらには5のポジションだったがゆえに、選出が発表されたとき、正直、物足りなさはあった。
実際の審査では、1番手・カベポスターと2番手・真空ジェシカの得点差に衝撃を受けた人もいたようだが、ネタ後のコメントも含め、無難な印象を受けた。
SNSの発達があり、コンテスト系の審査員を受けることは、以前に比べて、オファーを受けた人によって、非常にリスクを伴うものになってきている。
その意味で、今回、審査員を引き受けたこと自体は凄いことだと思う(博多大吉も同じく)。
ただ、点数の理由について、「私は面白かった(or そこまでは面白いと感じなかった)」だけではない具体的な理由を、番組内でコメントできないと、審査員としての説得力を伴わないようにも感じた。
一方で、審査員の評価に、視聴者が「絶対」を求めすぎると、審査員の幅は、ますます狭まる。
過去の審査員を見ても、審査員全員パーフェクトの布陣を求めるということは結構難しい。
おそらく、何かを捨てなければ、ベターな審査員の布陣を作ることは難しく、その意味では、捨てる選択肢の一つは「メジャー感」かなとも思った。
なお、今年は、芸歴16年以上の芸人が出場する「THE SECOND~漫才トーナメント~」が開催される。
この大会の存在が、年末の「M-1」に、いくらか影響を与える部分もあるだろうか。
〔※「M-1グランプリ」/「THE MANZAI」 過去記事〕○M-1グランプリ 2021(1、2)
○M-1グランプリ 2019
○M-1グランプリ 2017○M-1グランプリ 2016(1、2)
○M-1グランプリ 2015(1、2)
●THE MANZAI 2014
●THE MANZAI 2013
●THE MANZAI 2012
●THE MANZAI 2011
○M-1グランプリ 2010
○M-1グランプリ 2009(1、2、3)
○M-1グランプリ 2008(1、2)
○M-1グランプリ 2007(1、2、3)
○M-1グランプリ 2006(1、2)
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ブログ19年目。
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未分類
と言っても、ここ数年は、年1~2回しか(年ゼロだった年も…)書いていませんが、現在、2ヶ月遅れの「M-1グランプリ 2022」レビューを作成中。
もう一つのブログも、月1ぐらいの更新ペースになっていますが、気がづけば、ブログを書き出してから19年目。
今年は、もう少し、本ブログも更新頻度を上げて、月1ぐらいで、お笑いに関して思うことをつらつら書こうとも思っています。
〔※「M-1グランプリ」/「THE MANZAI」 過去記事〕○M-1グランプリ 2021(1、2)
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コントの祭典、再び -「キングオブコント2022」レビュー ー
http://agemomi2.exblog.jp/32788240/
2022-10-17T23:27:00+09:00
2022-10-19T09:06:40+09:00
2022-10-19T00:14:07+09:00
momiageculture
お笑い
求められる面白さのハードルがかなり上がったとも言える、2022年のキングオブコント。
しかし、結果的には、昨年に匹敵するレベルの高い大会だった。
8位に終わったクロコップでも、得点は460点(平均92点)。
5位のかが屋(463点)から、9位のいぬ(459点)まで、すべて合計得点は1点差。
1本目で2番目につけたコットンと、や団は同点(470点)と、熾烈な争いを繰り広げた。
オープニングは、昨年の「アナーキー・イン・ザ・ムジーク」とはまた違ったテイストで始まった今大会。
以下、出番順に、個人的感想を。
1. クロコップ
にんじゃりばんばんや空手ネタのイメージが強いが、今回も、ゲーム性のある、というか、ゲームネタ。
以前のような重い空気は無いものの、トップバッターという多少なりともハンデがある状況で、大きな笑いを取った。
460点は、昨年の蛙亭の461点と、ほぼ同じ得点。
惜しむらくは、もう少し、パターンの変化が欲しかったか。5分というネタ時間を考えると、後半で、あっち向いてホイに「引っかかる」パターンがあってもいいように思った。
あと、アクション終わりの動きのブレが気になった。
ゲームの、真剣かつバカバカしい感じを増幅させるには、アクション後はピタッと止まってほしかったところ。
★個人的採点…88点〔7位〕/審査員平均…92.0点〔8位〕
2. ネルソンズ
「地力は十二分にあるが優勝がない」芸人の最右翼に位置するといってもいい3人(「おもしろ荘」での優勝はあったが)。
3年ぶりとなる決勝出場。昨年、ジェラードンが爪痕を残しただけに、今回、目に見える何かをつかみたかった所だったが…。
ネタは面白い。何より、これまで何度も見ているにもかかわらず、どのコントでも、和田まんじゅう演じるキャラが笑えるというのが凄い。
でも、あと一つ、何かが足りないと感じるのも事実。
今回、個人的採点では低い点数としたが、それは「新たなネルソンズが見たい」という期待を上回るネタではなかったため。
結果的に4位には入ったが、見せ場のあった4位というより、口惜しさが募る4位ではなかったか。
さきのジェラードン、また、6~7年ぐらい前のチョコレートプラネットと同様、「そろそろ、ブレイクしてほしい」とずっと思っている芸人たちでもある。
今回のキングオブコントでは、正直、壁は超えられなかった。
今後、壁を超えるには、和田のキャラをさらに突き詰めるか。それとも、和田以外の他の要素で変えていくか。
何度も跳ね返され、心が折れるところもあると思うが、それでも、自分たちのコントを突き詰めてほしい。
★個人的採点…87点〔8位〕/審査員平均…93.2点〔4位〕
3. かが屋
2020年の不出場、2021年の準決勝敗退を経て、3年ぶりの決勝出場。
設定は素晴らしかった。ドアの使い方(初見では、あのドアが何のドアかはわからなかった)も見事だったし、賀谷と加賀の行動の二段重ねもよかった。
ただ、最後、もう一展開欲しいと思った人は多かったのではないか。
それは、審査員の得点の跳ねなさにも表れた。
つまるところ、かが屋の場合、二人のネタの表現力、また設定や展開のレベルが高いだけに、オチや終盤で物足りなさを感じると、そのぶん、がっかり感が増してしまう。
自らの才能が、自らに高いハードルを課しているともいえる。
ただ、今回5位には終わったものの、「かが屋だからこそできるネタ」を見せられた大会ではあったのではないか。
もちろん本人たちには「いつかは優勝したい」という気持ちはあるだろうが、キングオブコントという枠組みだけで評価される芸人でもない。
来年は2人とも30代に突入。これまでのテイストを保ちつつ、また新たな一面が見られるネタもで見せてくれるだろうか。
これまで温めてきたが、「30を過ぎた今だからできる」というネタもあるかもしれない。
★個人的採点…91点〔5位〕/審査員平均…92.6点〔5位〕
4. いぬ
今回、審査員の評価と最も違った(^^)コンビ。
醸し出す独特過ぎる雰囲気(特に太田)。
ネタの感想は「何だ、これ(^^)」。そして、ちょっと引くほどの「生々しさ」。
もう一度書くが、「テレビで何やってんだ」という思い。でも、そのバカバカしさが、最高に面白かった。
飯塚が「キスは反則だと思っちゃったんですよね」と感想を述べていたが、自分は「しそうでしない」という寸止め感を感じさせる笑いではなく、「実際にキスしてしまう」ところが、このネタの面白さ、ひいては、いぬらしさのように思った(なお、点数を見ると、秋山と松本人志の評価が高かった)。
見ていて、「これ、得点が高かったとしても、絶対バラエティの仕事にはつながらないだろうな」とも思ったが、そんな、他のことへの汎用性の無さも含めたネタの独自性に、高い得点を付けた。
今回の決勝のネタ披露が、今後の仕事増につながるかというと、正直、期待薄だと思う。いわゆる「洗練された」ネタでもない。
ただ、強烈なインパクトは残した。
その「何かしでかしそうな」匂いは、「いぬ」というあまりにシンプルなコンビ名とも相まって、いつか爆発する。そう願ってやまない。
★個人的採点…94点〔2位(同率)〕/審査員平均…91.8点〔9位〕
5. ロングコートダディ
2年ぶり2回目の決勝出場。
その実力を考えると、今後の賞レースを、ニッポンの社長との2組で全部持って行ってしまうのではないか。
決勝進出メンバーを見たとき、そんな思いもよぎった。
実際にネタが始まり、「一点突破系で来たか」と。ただ、堂前の立ち位置が、いま一つはっきりしないのが気になった。
ネタ自体は面白いし、ロングコートダディらしさもあるネタ。
ただ、見ていて「大ハネはちょっと厳しい」という思い、さらに、最後の方は「ロングコートダディの面白さをより伝えるにはどんなネタがいいのか」なんてことも思いながら見ていた。
昨年のM-1決勝は、今後の優勝の可能性を十分感じさせるネタだったが、今回のキングオブコントは、逆に、「このテイストのままだと、今後の優勝は厳しいか」と思ってしまった。
多くの引き出しを持っているコンビではあるので、来年以降、強力なネタを持ってくる可能性も十分に考えられる。
ただ、武器になり得る堂前の飄々とした感じが、ネタによっては、面白さの勢いを抑えてしまうこともある。そんなことも感じた今大会だった。
★個人的採点…90点〔6位〕/審査員平均…92.2点〔7位〕
6. や団
いわゆる「カッコよさ」を感じるネタではないかもしれない。
アラフォー男性3人ということもあり、ある種の野暮ったさもある。
しかし、「コント師としての演技力」が抜群だった。
さらに、トリオの場合、「1対2のバランス」が求められることが多いが、そのバランスも絶妙。
3人を三角形の頂点だとすると、伊藤と中嶋に幾度も本間が引っ張られそうになるが、パワーで引っ張り返す。
加えて、そこまで複雑でない設定も、面白さにつながった(無論、複雑だといけないというわけではない。そのあたりは、それぞれのコンビ(トリオ)の持ち味によるところ)。
ネタの途中、伊藤がインスタントジョンソンの「スギ。」に、中嶋が大吉に、そして本間が誰かに(あとで、サンシャイン池崎と判明)見えてきたが、それはさておき、かなりブラックさな部分も含んだネタを、ここまで、スッキリと笑えるネタにしたのは見事。
個人的には、今回の最高得点。
★個人的採点…95点〔1位〕/審査員平均…94.0点〔2位〕
7. コットン
一つ前の、や団が、”爆発”といってもいいほどのウケをかっさらった後の出番は、ある意味、かなり厳しい状況だったと思う。
ネタも、少し抑えめな感じからのスタート。
しかし、きょんの、キャラへの同化っぷり。そして、それを邪魔しない、西村の演技の自然さ。
細かいところもキチンと詰めてあるネタに、だんだんと引き込まれていく。
フィクションのキャラ設定と、それへの憑依度が強いと、少し「わざとらしさ感」が目立ってしまうこともある。
だが、そうしたマイナスになりそうな要素を上回る、きょんの演技力と、二人のやりとりのスムーズさが際立つネタでもあった。
見ていて思ったのは、「他のコントも見たくなるコント」だなあということ。
『しくじり先生』での改名から1年半。
2人とも、十分バラエティでも面白い要素を秘めているだけに、ブレイクへの足掛かりをつかんだか。
★個人的採点…93点〔4位〕/審査員平均…94.0点〔2位〕
8. ビスケットブラザーズ
今回1本目の最高得点。山内を除く4人が最高点を付けた(その山内も、トップのコットン・ネルソンズと1点差の95点を付けている)。
ただ、個人的には、いぬとは逆の意味で、審査員とは全く違う評価。
ネタ自体は面白かった。ただ、「セーラー服にブリーフ」での登場が、そこまで面白いと思えないという気持ちをずっと引きずってしまった。
野犬(や団のネタにも登場(^^))に囲まれるという設定も、実際にはほぼあり得ない設定ではあるものの、コントだとありがちかな設定という感じを受けた。
原田の堂々たる体躯と暑苦しさは、コントを演じるにはピッタリ(少し、秋山の匂いも感じる)。
きんの甲高い声でのツッコミとのコントラストは、意外と他のコンビには無いもの。
どのネタもある程度の安心感を持って見られるコンビだと思っているのだが、ネタ終盤、共同で戦うバターンも含めて、とにかくハマらなかった(^^)。
それこそ、(飯塚が指摘した)いぬのキスではないが、「ブリーフ一丁は反則かなあ」という思いが、ネタの面白さを感じたいという気持ちを、最後まで邪魔してしまった。
★個人的採点…86点〔9位〕/審査員平均…96.2点〔1位〕
9. ニッポンの社長
今回の優勝候補筆頭と思っていた二人。
自分だけでなく、そう思っていた人は多かっただろう。
ネタの独自性という意味では、他の追随を許さないコンビ。「ニッポンの社長しかできない」ネタをやるのは間違いなく、その時点で、半歩リードしていると思っていた。
しかし、結果は振るわず。
ウケなかった理由は色々あるだろうが、一つ思ったのは「ケツのショックを受けた顔」以上に面白い設定ボケが無かったこと。
それほど、ケツの「ガーン」顔の破壊力は大きかったが、それゆえ、その顔に見合うだけの「理由」のハードルは高いものが要求された。
終盤の暗転間隔の変化も、そこまで面白さを感じられない状態でのものだったため、面白さの倍加というより、ノイズに感じてしまった人もいたのではないか。
今回で3年連続の決勝進出となったが、今回の決勝メンバーで連続出場はニッポンの社長のみ。
一昨年、昨年と、ファイナルの3組には残れなかった(2020年:5位、2021年:4位)ものの、確実に爪痕を残していただけに、コントで面白さを届けることの難しさを、改めて感じた。
★個人的採点…85点〔10位〕/審査員平均…91.0点〔10位〕
10. 最高の人間
ファーストステージ、トリでの出番となったのは、吉住と岡野のユニットコンビ。
コンビでのネタを見たことは無かったが、ネタの「深さ」は10組中一番だった。
吉住らしさが存分に散りばめられたネタだったし、岡野のひとクセありそうな感じも出ていた。
個人的には、2位(同率)の得点をつけたが、少し気になる点もあった。
一番気になったのは、「逃げて!」の部分。
もう少し岡野が見えなくなってから言った方が、さらに笑いが倍加したように思う。
その他、これは吉住のピンのネタでも感じるのだが、本人の思いが溢れ出すせいか、コントでのキャラというより、吉住の地の部分が間々見えてしまうところがある。
一方の岡野は、無難にこなしていたようにも見えたが、ネタ後に、飯塚にアガッていたことを指摘されていた。このあたりは、普段、見ているからこそ、気づく部分か。
今後、ユニットでの活動を続けるかはわからないが、ピンでのネタでも含め、演技の面はじめ、まだまだ伸びしろがある二人だと思う。
ただ、そのネタの特異さもあって、単に演技力を向上させればいい、というわけでもないのが、難しいところ。
吉住の場合は「キャラを使い分ける力」、岡野の場合は(今後もネタをやるのであればだが)「より、人間的なものを出せるか」がポイントになるのではないか。
★個人的採点…94点〔2位(同率)〕/審査員平均…92.4点〔6位〕
10組がネタを終え、ファイナルに残ったは、ビスケットブラザーズ、コットン、や団の3組。
ウケ方を考えると、順当な3組が残った印象。
1. や団
予報を外した気象予報士を怖いほど恨む視聴者、という設定。
1本目と同じく、3人のバランスが素晴らしい。
ビジュアル的に、伊藤-インジョン、中嶋-大吉という印象は変わらなかったが、本間はコントやるときの小堺一機にも見えた(あと、わかる人にしかわからないと思うが、伊藤は日テレの平川アナにも似てる)。
伊藤の猟奇性という部分は、1本目と同じながら、設定としては、また1本目とは違う角度からのネタ。
1本目のネタが終わった後、本間が言った「こんないいトコあったんですね」という言葉が印象的。
持っている幅の広さも見せた、今回の2本のコントが、さらなる活躍の場の導火線になってほしい。
★個人的採点…94点/審査員平均…94.6点
2. コットン
1本目と同じく、2人の演技力が映えるネタ。
2人のやりとりの自然さも変わらず。
ただ、タバコの1テーマで通したことに、自分は若干飽きを感じてしまい、や団より低い得点とした。
もし、後半、タバコ以外の切り口も入れたら、どんなネタになっただろうか。
合計得点は、944点で、や団をわずか1点抑えて、この時点でのトップに。
★個人的採点…92点/審査員平均…94.8点
3. ビスケットブラザーズ
点数的には、1本目で2位に11点差。一人あたり2.2点と考えると、安全ではないが、ある程度のネタのクオリティであれば1位を守れるという状況で迎えた2本目。
面白かった。
そして、上手かった。
1本目と違い、設定の重ねも含め、構成的にも素晴らしいネタで、「これは文句ないな」と思わせるネタ。
途中、原田が1か所がっつり噛んだが(^^)、それを補って余りある内容の濃さ。
2本目も3組中トップを獲得し、見事に優勝。
なお、関西での大会も含め、タイトル獲得の多いコンビではるが、すぐに大ブレイクとまではいかないかもしれない(バラエティへの適性を感じる部分はあるが)。
ただ、以前に比べ、コントでの高い評価が、他の仕事にもつながる風潮になってきているようにも思う。
一部マスコミは、すぐに「優勝したのに○○」的な記事を書くが、地に足をつけた活動こそが、ビスケットブラザーズの良さをさらに広げるのではないか。
★個人的採点…96点/審査員平均…96.4点
ということで、昨年に続いて、全体のレベルの高さを感じた今大会。
なお、昨年、決勝に進出した10組中6組が今年も予選に出場した。
前述したが、そのうち決勝に行けたのはニッポンの社長のみで、ザ・マミィ、男性ブランコ、蛙亭、うるとらブギーズ、そいつどいつは涙をのんでいる。
(ジェラードンは、海野の休養もあり、今大会は不参加)
優勝した芸人だけでなく、他のコンビも爪痕を残しているという意味では、15回近く回を重ねて、さらにいい大会になりつつある(初回のときは、こんなレビューも書いていた)。
最後に、審査について。
今回、自分とは全く違う点数となった組もあったが、審査自体への不満は全く無し。
昨年からメンバーがほぼ一新された5人の審査員だが、いいと思うのは、個々の好みが得点に表れているところ。
やっているコントを考えたら、秋山と飯塚で得点が違うコンビがあるのは当然だし、松本人志の得点も、必ずしも他の審査員とは一致していない。
バナナマン・さまぁ~ず・松本が審査員だった時は、年を重ねるにつれ、段々と5人の得点傾向が似てきて、採点が出る前に予想がついてしまうところもあった。
準決勝で敗退した芸人が審査員をしていた時も、やはり、全体的に同じ傾向になりがちということもあり、得点という意味での妙味は少なかった。
ここ2年、審査員の採点傾向がバラけることで、僅差の争いを生んでいるという側面はあるだろう。
いずれはこの5人も変わるであろうが、この2年については、非常にいいバランスが保たれている審査だと思う。
いずれにしても、早くも来年の決勝が楽しみになる、素晴らしい大会だった。
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「M-1グランプリ2021」レビュー
http://agemomi2.exblog.jp/32453762/
2022-01-27T02:20:00+09:00
2023-01-13T22:43:34+09:00
2022-01-27T02:20:32+09:00
momiageculture
お笑い
年が明け、1月もそろそろ終わりますが(^^)、改めてレビューを。
今回の大会は、決勝に選ばれたメンバーを見ると、どうなるか全くわからないという印象。
その最も大きな要因はランジャタイ(^^)だったが、他にも、モグライダー、ロングコートダディ、真空ジェシカ、また、関東ではなかなか見る機会の無いもも、と初出場組がどう評価されるかの予想が立てづらい大会でもあった。
以下、出番順に、感想と個人的点数を。
(得点が同じ場合は「○位タイ」と表示。また、審査員平均は、小数点第一位まで)
1. モグライダー
キャリアは長いが、一般的にはまだ知名度が高いとは言えないコンビ。
以前見たときは、ともしげの慌てっぷりがこのコンビの笑いどころ(それを操る芝の手綱さばきも印象的)だったが、今回初めて決勝に選ばれたのは何が評価されてのことだったのか注目して見ていた。
ネタのテーマが「さそり座の女」だとわかったときは、正直、セレクトが古いかなと思った。
ただ、スポットを当てたのが、冒頭の「いいえ♪」だというのがわかって、「そうきたか(^^)」と。
このネタのいい所は、各ターン、歌始まりまでのイントロで、「次は何がくるんだ」というワクワク感があるところ。
「コンテストでは歌ネタは難しい」と言われることもあるが、このネタは、歌ネタだからこそ作れる面白さがあり、非常によく練られていると思った。
一方で、以前の、ともしげが慌てふためき、それに芝がべらんめ調で矢継ぎ早に突っ込んでいくテイストからすると、ちょっと大人しい、よく言えば「大人になった」ネタという印象も。
今大会、準決勝までのネタは未視聴だが、今回決勝に残ったのは、そうした変化を「進化」と捉えられたからだろうか。
なお、ネタとしては十分に面白かったが、「このネタだと、平場での露出につながるような、ともしげ、そして芝のストロングポイントが認知されることにはならないかもなあ…」という思いも残った。
★個人的採点…89点〔5位タイ〕、審査員平均…91.0点〔8位〕
2. ランジャタイ
2組目にして、今大会最大の問題コンビ。
前回の短評で、「一般層に対し、今大会一番の正念場」と書いたが、それは、客席から見て一番右に座っている審査員についても同様。
芸能人を登場させるパターンもあるランジャタイのネタだが、今回は、そうした種類のネタではなく、「猫」(^^)。
こういった破天荒のネタだと、「破天荒だけど、なんだか面白い」という場合もあるが、ランジャタイの場合、まず破天荒さがどっちを向いているのかが皆目見当がつかず、初見の人からすると「呆気にとられた」というのが正直なところだったのではないか。
おそらく、上から点数をつけるような選び方だと絶対に決勝に選ばれないコンビだが、今回決勝に選んだ準決勝の審査員の決断は凄い。
それこそ、ランジャタイの場合、面白いか面白くないかというよりも、「ランジャタイ」という存在を認知させることができたかどうかが最大のポイント。その意味では、十分に爪痕を残したのではないか。
個人的採点では低くつけたが、もはや点数をつけることに意味があるネタではないということでのこの点数。
なお、いつも国崎の横で「被害者」のような佇まいで立っている伊藤だが、実は「共犯者」であることを、お笑いファンの多くは気づいているだろう。
『おグッズ』では、もう中と非常に親和性があることがわかった国崎だが、天竺鼠・川原とのマッチアップも見てみたい。
なお、舞台への通路での国崎の突飛な行動に、瞬時に対応したヒロドアナのアドリブは素晴らしかった。
★個人的採点…78点〔10位〕、審査員平均…89.7点〔10位〕
3. ゆにばーす
3年ぶり3度目の出場。
このコンビのポイントは、川瀬のネタ内での強弱のアクセントだと思っていた。
M-1への並々ならぬ思いが有名な川瀬だが、そのせいか、ときに、かかり気味に思える時がある。
すでにその芸人のキャラが浸透している場合は別として、演者と見ている側の温度に差がある場合、見ていてもネタが入ってこず、せっかくの面白い(であろう)ポイントも感情移入できなかったりする。
そうしたことを考えると、できれば、段々とペースを上げていき、観客の笑いのペースに合わせていくことが必要かと思っていたが、いざネタが始まると、川瀬のテンションは序盤からフルスロットル(^^)だった。
もう一つ気になったのが、川瀬とはらのやりとりのテンポ。
確かに、審査員評で言われていたように、はらの掛け合い力はかなり上手くなっていた。
ただ、上手くなったことで、はらが当初持っていた天然さ(それが計算されていたものか、考えられたものかはわからないが)の魅力が失われてしまったのも事実。
もしかしたら、「上手さ」におけるレベルアップがプラスの評価を得たがゆえの今回の決勝進出だったかもしれないが、上手さで勝負することはこのコンビのよさを消してしまうのでは、という思いは拭えなかった。
なお、ネタは、はらのビジュアルをフリに使う形でのネタと言えたが、他のコンビも含めそうした類のネタはすでにある程度やられており、正直、交わされるやりとりも想定の範囲を超えるものにはならない。
いっそ、このネタではボケの扱いをされていた「社会問題」ネタなど、まったくの想定外のテーマを持ってきた方が、ネタが弾ける可能性があるのではないかとも思った。
★個人的採点…87点〔9位〕、審査員平均…91.1点〔6位タイ〕
4. ハライチ
今回は、日中テレビを見れなかった(決勝もリアルタイムでは見られず、22時から追いかけ再生で見た)ので、敗者復活戦は見ていない状態でハライチの勝ち抜けを知る。
ノリボケパターンをメインでやらなくなってからだいぶ経つが、そのイメージがいまだ強いだけに、見るたび、新たな漫才をしている印象があるハライチ。
今回も、また「新たなハライチ」と言われそうなネタを披露。この日、敗者復活で披露したネタしかり、多様なアイデアが出てくるなあと思う反面、新たな取り組みに感心する導入部から、ネタが進むにつれ「もうひと広がりないのかな」と感じたまま終わってしまう、という印象は今回も拭うことができなかった。
そう感じてしまう要因は、(「ゴッドタン」での腐り芸人扱いに端を発して)平場でも独自のポジションを築き、もはや指摘する人もいないだろうが、やはり、岩井のプレイヤーとしての物足りなさにある。
アイデアだけで漫才の4分を見せるのは限界がある。澤部のキャラクターが生み出す面白さは、ほぼ上限まで来ており、そうなると、もうひと笑いを生み出すのは、やはりプレイヤーとしての岩井の存在になる。
決勝で披露したネタは、ハライチのネタのなかでは、かなり岩井の動きにバリエーションを付けられるネタだったが、もう一変化か二変化は見たかったという思いが残った。
23歳にして早くもM-1決勝に初出場(2009年)。その後、2010年、そして中断期間を経て2015年、2016年と4大会連続で決勝に出場。M-1決勝5度目は、麒麟、和牛と並んで歴代2位タイ。
ただし、その決勝での成績は、5位・7位・9位・6位・9位。
ラストイヤーのM-1をやり終えて、本人たちの心に残ったのは充足感だったのか、それとも。
★個人的採点…88点〔8位〕、審査員平均…90.9点〔9位〕
5. 真空ジェシカ
今回のメンバーのなかでは若い部類に入るコンビ。人力舎にとって、アンタッチャブル以来のM-1決勝、ということに少し驚く(M-1の歴史を通じても、おぎはやぎ、アンタッチャブルに次いで、まだ3組目)。
ネタは、センスを感じさせるボケに、驚きぎみのツッコミが入るという展開。
一つ一つのボケは結構練られている。漫才内に、伏線回収的要素を入れることで、より大きい笑いを生み出すことも成功していた。
にもかかわらず、一つ一つのボケツッコミが分断されているように感じてしまった。言うなれば、大喜利の面白い答えをくっつけたような感じ。ネタなので当然フィクションではあるのだが、端々に「面白いこと考えた」感が出てしまっている印象を受けた。
もう一つ気になったのが、ボケの川北の発声が時折聞き取りづらかったこと。
ある種の雰囲気を感じさせるのは大事だが、セリフは聞き取りやすく言ってほしいところ。
また、ツッコミのガクの特徴的な風貌も、「ネタの面白さ」を伝えるのには邪魔になっているように感じた。
正直、今回の決勝出場は、スタートラインに立つという意味での経験にはなったが、コアなお笑いファンでない人に顔を売るまでのインパクトは残せなかったのはないか。
なお、本当の意味でのセンスを見せたのは、敗退決定時の仕込み。小道具というには随分と大きい仕込みに、「センス」にプラスして「度胸」を感じた。
★個人的採点…89点〔5位〕、審査員平均…91.1点〔6位タイ〕
前半の5組がネタを終えたが、「ウケたなあ」とまで言えるコンビは、まだ出てこない状態で迎えた、後半戦。
6. オズワルド
昨年のM-1決勝では、松本人志からは「静かな感じが見たかった」、オール巨人からは「最初から大きな声でツッコんでみては」と、真逆のコメントをもらい、心底悩んでいた様子の伊藤。
自分がオズワルドを最初に「いいな」と思ったのはボソッとしたツッコミのネタだったので、どちらかといえば、静かな伊藤のツッコミの方が好きではあった。しかしその後の伊藤のバラエティでのはっちゃけている姿を見ると、どちらかというとイケイケ系のキャラなのかという思いも。
いずれにしても、正解は「静かか、勢いがあるか」ではなく、「いかに畠中を面白く見せるツッコミをするか」だと思っていた。
そして1年後の同じ舞台。
伊藤は、ある程度の正解を出したのではないか。
妹の存在もあって、伊藤が脚光を浴びることが多いオズワルドだが、漫才においては、やはり畠中が中心。その醸し出す不思議な感じを引き出すのに、その場面場面で最適なツッコミ方ができているように見えた。
なお、後日放送された「アナザーストーリー」で、「小林、いらねえな」の前に「じゃあ、」を入れるかどうかを二人で話し合っている場面は興味深かった。
結果的には「じゃあ、」は入れなかったのだが、個人的には入れた方がもっとウケたように思った。ただ、「じゃあ、」を入れることは、「いかにも漫才のために作ったセリフ」ととられるリスクもある。それこそ、コンマ何秒「じゃあ、」を言い出すタイミングが早いか遅いかで、大きな武器になるかもしれないしブレーキになってしまうかもしれない。そんな漫才の繊細さが垣間見えた気がした。
なお、ネタのテーマ自体も、みんながわかるテーマだが切り口が面白いという部分で、非常にいいネタだった。ときに唐突に感じる、伊藤の声張り上げ系ツッコミも、このネタでは納得のできる使い方がされていた。
審査員からも絶賛され、6組目にして、ようやく爆発が起こる。
★個人的採点…94点〔1位〕、審査員平均…95.0点〔1位〕
7. ロングコートダディ
「肉うどん」の存在が強烈なネタ(^^)。
このコンビの強みは、二人とも「面白そうな」雰囲気を持っているところ。面白いことを言っていないときでも面白さを醸し出しているというのは、芸人にとって、かなりの武器。
また、今回のネタは兎がツッコミの役回りだが、「肉うどん!?」という兎の顔は、ある意味ボケにもなっていた。
ネタ自体は、最初から最後まで非常に面白かった。このネタが点数を取れるかどうかは、つまるところ、「コントでも、そのままできるじゃん」という見方を覆す要素があったかどうかだったと思う。
オール巨人は、「センターマイクをもっと使ってほしい」というコメントをしていたが、実際の点数も高くはなかった。
ただ、今後、必要以上に「M-1に勝つため」の漫才を目指すべきかというと、このコンビに関してはそうではないようにも思う。
2020年のM-1の後だったか、ロングコートダディもそこに含まれていたような記憶があるのだが、何組かの若手芸人が集まったインタビュー記事で、「必ずしもM-1の決勝に行かなくても…」といったような発言があった。
レビューを書かなかった前回2020年のM-1だが、敗者復活を見て、「なぜ決勝に行かなかったんだ」とまで思えるコンビはいなかった。
ただ「決勝に行けるか行けないか」とは別の視点で見たときに、興味を惹かれるコンビは結構いて、ロングコートダディもそのうちの一組だった(なお、2020年M-1の自分の感想メモを見ると、「芸人によって持つ意味が違った大会」と書いてある)。
今回4位という結果だったことで、2022年はキングオブコントも含めて、いわゆる「賞レース」で注目を浴びる存在になるかもしれない(ニッポンの社長らとともに)。
ただ、このコンビのゴールはそこじゃないなとも思った。
★個人的採点…91点〔2位〕、審査員平均…92.7点〔4位〕
8. 錦鯉
2020年のM-1で決勝初出場を果たした、錦鯉。
数年前のことを考えると、まさかの決勝出場ともいえ、それゆえに爆発することも期待されたが、決勝4位という順位ほどにはインパクトを残せなかった感があった。
その後、テレビやラジオなどでの「決勝に出られたことで、もっと嬉しいかと思ったが、悔しさが残った」という発言に、決勝進出を果たしたことに満足感はなく、逆に「さらに漫才心に着火した」ことが感じられた。
その意識の高さで勝ち取った、2年連続での決勝(今大会、決勝連続出場は、10組中、オズワルド(3年連続)、インディアンス(3年連続)、そして錦鯉の3組)。
ネタは、長谷川の年齢を最大限に生かした(^^)合コン。
自分の場合、錦鯉を最初に見たとき(2016年の敗者復活)の印象が強烈だった(見た目のインパクトもあったが、見かけ倒しではなく、ネタをやっても実は面白いというところも印象に残った)せいか、ネタへの評価については、なかなかフラットな視点で見れない部分がある(最初に長谷川を見たときは、お笑いファンなら誰もが思うワッキー、そして、ほんの数%だけ、MOON CHILDのボーカルを想起させた)。
今回のネタはわかりやすいネタだったが、漫才でありがちな設定(内容はありがちではなかったが(^^))であったので、より長谷川のバカバカしさを打ち出すのであれば、「なぜ、その設定?」といったような、設定の時点で思わず笑ってしまうようなネタを見たい気もした。
なお、露出が増えてくると、いわゆる「じゃない」方の芸人にもフォーカスが当たってくるが、このコンビの面白さは、渡辺の風貌が「しっかり43歳」であることも大きいだろう。
結果的に、昨年かなわなかった、最終決戦3組に入る得点を獲得。
初の準決勝進出から5年。そのステージにまで来て当然とも言える存在になったことに、「お笑い芸人サイコロ」の目の無限さを感じた。
★個人的採点…89点〔5位タイ〕、審査員平均…93.6点〔2位タイ〕
9. インディアンス
前年は、敗者復活からの決勝出場(そしてトップバッター)だったが、今回はストレートでの出場。
ボケまくるスタイルがある程度浸透した今、このコンビのポイントは、きむがどこまで自分の方にも流れを持ってこれるかだと思っている。できれば、田渕がちょっと引くぐらいの時間があってもいいぐらい。
ここ数年で何度か、そういった、きむがかなり弾けた漫才を見ることがあったので、今回もそれを期待したが、そこまではいかなかったかなという印象。
それでも、漫才のために無理してキャラを作っているようにも見えた数年前と比べると、自然に見られるようになった感がある。
ただ、繰り返しになるが、田渕の手数の多さがほぼ上限に達している状況下、さらなる笑いを生み出す、さらに言えばインディアンスの芸風が苦手な人にも面白いと思ってもらえるためには、きむの果たす役割が大きい。
インディアンスのネタの方向性を見ると、やはり、比較してしまうのが、アンタッチャブル。
アンタッチャブルの場合、何より山崎というモンスターの存在が大きいが、あれだけの面白さの強度を持っていたのは、柴田のツッコミがあったからこそ。
べらんめえ調のツッコミが生み出すテンポも大きいが、「本気であきれる」「本気でキレる」「本気で突き放す」「本気で怒る」という「本気度」が常に伝わってきたがゆえに、見ている側もその漫才へ取り込まれていった。
それと比べると、インディアンスの場合、まだ「漫才のためのボケ」「漫才のための怒り」と感じてしまうところがある。
もちろん、他の漫才師も実際そうではあるのだが、特に、インディアンスのようなボケ連発のスタイルの場合、「漫才のための…」と感じさせてしまった瞬間、見ている側を素に戻してしまう危険性がある。
審査員も言っていたように、漫才技術という意味では、今の若手漫才師のなかでもトップクラスなのかもしれない。
ただ、「速い」「上手い」を超えた「凄い」を感じさせたとき、もう一つ上のステージが待っているのではないか。
★個人的採点…90点〔3位タイ〕、審査員平均…93.6点〔2位タイ〕
10. もも
今大会、唯一、ネタを一度も見たことがなかったコンビ。
ネタは、ダブルツッコミとでもいうスタイル。
ある意味、大喜利の出し合いとでもいう形。最後まで連打が要求されるだけに、失速する可能性も考えられたが、最後まで笑いを取り切ったのは素晴らしかった。
ネタの前半で挟んでいた、ツッコミとツッコミの間の「会話」の部分を、後半では、ほぼカットしたことも、スピード感を生み出していた。
10組目ということで、見ている側もかなり疲れているなか、ある種シンプルなやりとりだったところもよかったかもしれない。
他のネタは見ていないが、このスタイルだと限界もあるかもという思いと、アレンジを加えることでさらなる展開を作れる可能性の、両方を感じた(ツッコミ間の、ツッコミ内容の否定コメントも、内容次第ではさらなる笑いを生み出す可能性を持っている)。
錦鯉・長谷川の年齢がクローズアップされた今大会だったが、20代の決勝進出者は、ももの2人のみ。
30代が中心になりがちなM-1だが、来年以降、決勝に20代が3組ぐらい出てくるようなことがあると、また大会の色も変わってくるかもしれない。
★個人的採点…90点〔3位タイ〕、審査員平均…92.1点〔5位〕
【最終決戦】
メンバーを見ると、色々な意味で「荒れる」M-1になることも予想されたが、結果的には、最終決戦に残った3組は、いずれも、前年も決勝に出場したコンビだった。
錦鯉とインディアンスは同点だったが、より高い得点をつけた審査員が多かった錦鯉が2位扱いで、ネタ順は、インディアンス→錦鯉→オズワルドの順番に。
インディアンスは、1本目のネタにも増して、テンポのあるネタ。途中、サザエさんの件がわかりやすかったからか、笑いも1st ラウンドに比べて多く、きむもノッていたように見えた。
ただ、インディアンスがネタでよく使うサザエさんではあるが、昔に比べると誰もが見るコンテンツではなくなっており、今後のネタ作りにおいては、そのあたりの見極めは大事なように思った。
錦鯉の2本目は「サルの捕獲」ということで、1本目より、長谷川のキャラが生きるネタ。
3度ワナにかかるくだり、そして最後の「ライフイズビューティフル」は、笑いの量の面でもインパクトの面でも大きなポイントとなった。1本目では、やや「強さ」が目立った渡辺のツッコミも、このネタでは、バリエーションを感じさせた。
そして、オズワルド。1本目は他の組に差をつけた出来だと感じたが、キングオブコントと違い、M-1の2本目は、得点面ではゼロベースからのリスタート。
それでも出番順が最後ということでのアドバンテージはあった。
ただ、番組が始まってから3時間以上経過ということもあってか、見ている側が展開についていくのが難しいネタだった。「脳溶けちゃうよー」が、このネタの一番のピークだったが、どれぐらいの人が、その伊藤の声張り上げについていけたか。
3組を見終わって、どのコンビが一番かは悩むところだったが、自分であれば、掛け合いという部分が一番だと思えたインディアンスに投票するかなと思った。
結果は、オズワルド→錦鯉→錦鯉→錦鯉→錦鯉→錦鯉→インディアンスで、錦鯉が優勝。
史上初の、50代、そして40代の優勝者。
長谷川と渡辺が抱き合う姿は、14年前のサンドウイッチマンの優勝を思い起こさせた。
なお、1stラウンドの個人的採点は、下記の通り。
1位 オズワルド 94点
2位 ロングコートダディ 91点
3位 インディアンス 90点
3位 もも 90点
5位 錦鯉 89点
5位 モグライダー 89点
5位 真空ジェシカ 89点
8位 ハライチ 88点
9点 ゆにばーす 87点
10位 ランジャタイ 78点
実際の審査員の点数も、1本目は、オズワルドが得点2位の錦鯉とインディアンスに10点差つけており、2本目との合計というシステムであれば、オズワルドが1本目のリードを守って優勝という画も考えられたが、M-1は、2本目でトップをとらなければ、優勝はない。
3年連続で決勝を果たしたオズワルドとインディアンスだが、スタイルが明らかになっているなか、その見ている側の慣れを超えて優勝を勝ち取るのは、かなり高いハードルが予想される。
3年連続決勝出場した見取り図が今大会、決勝を逃したように、決勝に上がってくること自体、容易なことではない。
優勝を逃したオズワルドとインディアンスの4人に去来した思いは、どういったものだったか。
そして、錦鯉。
「おじさんドリーム」とでもいうM-1優勝は、吉本以外の芸人としては、14年ぶり(10大会ぶり)の優勝でもあった。
今大会を象徴する、長谷川の涙。
ただ、自分のなかでは、優勝決定後、長谷川の「僕、ラストイヤーが56歳なんで…」に爆笑していた、ゆにばーす・川瀬の表情が、今大会のハイライトだった。
なお、決勝視聴後に見た、敗者復活。
自分が投票するなら、ダイタク、ヨネダ2000、東京ホテイソンの3組。
ダイタクは、双子ということを最大限に利用したネタではるが、正直、どのネタも完成度が高い。表現としては矛盾しているが、双子ネタではあるが双子ということに頼っていない。完成度の高いネタでそのテーマがたまたま双子だった、という印象。
派手さはないかもしれないが、そろそろ決勝で、より多くの人に見てほしいコンビ。
ヨネダ2000のインパクトは、今回の敗者復活では一番だった。
「THE W」は見ておらず、今回ネタを見るのは初めてだったが、ただ変わったことをやっているだけでなく、それがちゃんとネタとして成立しているところに才能を感じた。
ある程度上位に来るコンビでも、どこかで見たような漫才ということを感じさせるコンビも多いなか、唯一無二という武器をこの時点で持っているのは強い。
なお、Def Techの「My Way」が発売されたのは、二人がまだかなり小さい頃だったと思うので、なぜこの曲をセレクトしたかというのは気になるところ(^^)。
東京ホテイソンは、従来のパターンから、少し仕組みを変えてきた。
露出が増えてから時間も経ち、神楽ツッコミに感じる新鮮さも薄れがちになる時期ではあるが、まだ、このパターンの新たな可能性はあるように思えた。
課題としては、多くの人が感じていると思うが、やはり、ショーゴのセリフにもう少し感情が欲しい。
その他では、男性ブランコ、金属バット、からし蓮根が力を見せた印象だが、カベポスターのミュージシャン組み合わせネタもよかった。
「錦鯉の優勝」という、ドラマ性としてはこれ以上ないものを残したかもしれない今回のM-1だが、2020年、2021年のM-1は、それ以前の大会で上位陣が見せた「凄み」を感じる漫才は見れていないという思いも残る。
ユニットコンビの急増があるので当然ともいえる「過去最高の出場者数」という数字に依ることなく、2022年のM-1では、できれば漫才の「凄み」を感じたい。
〔※「M-1グランプリ」/「THE MANZAI」 過去記事〕○M-1グランプリ 2019
○M-1グランプリ 2017
○M-1グランプリ 2016(1、2)
○M-1グランプリ 2015(1、2)
●THE MANZAI 2014
●THE MANZAI 2013
●THE MANZAI 2012
●THE MANZAI 2011
○M-1グランプリ 2010
○M-1グランプリ 2009(1、2、3)
○M-1グランプリ 2008(1、2)
○M-1グランプリ 2007(1、2、3)
○M-1グランプリ 2006(1、2)
○M-1グランプリ 2005(1、2)
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M-1グランプリ2021 短評
http://agemomi2.exblog.jp/32416828/
2021-12-21T23:22:00+09:00
2021-12-22T02:45:51+09:00
2021-12-21T23:22:22+09:00
momiageculture
お笑い
今年は、書きます(^^)。
ただ、振り返って書くには、まだ時間がかかりそうなので、今回はひとまず、Twitterに挙げた短評を挙げる形に。
時間ができたところ(おそらく年明け)、また改めてレビューを書こうと思います。
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2021年M1グランプリ。
決勝メンバーを見て、荒れる予感もあったが、思ったより収まってた印象(^^)。以下、各芸人についての短評。
1組目はモグライダー。
さそり座の女という題材で始まった時にちょっと古いかなと思ったが、「そうきたか」という切り口。
観客がボケを期待する時間があるという点で上手い構成。
ともしげがもっと慌てるネタも見たい気持ちもあったが、洗練されたモグライダーという印象。
2組目はランジャタイ。
一般層に対し、今大会一番の正念場(^^)。
国崎、通常運転の暴走。
ある意味点数をつけるネタではないコンビを決勝に選んだ準決勝審査員の英断。
松本人志「体調を知るにはいいネタ」。
点数残さず、爪痕残す。
3組目は、ゆにばーす。
川瀬のネタ内での強弱が鍵と思っていたが、最初からフルスロットル。
審査員には、はらが巧くなったことを評価されていたが、天然感が減じてしまったことを考えると複雑。
意外性という意味では社会問題系のテーマでこのパターンをやってみてもと思った。
4組目は敗者復活から勝ち上がりのハライチ。
ラストイヤーは、また新たなフォーマットの漫才。
チャレンジ精神は見事だが「終盤のもうひと広がり」は今回も課題として残った印象。
結成4年目での決勝進出から12年。自身5回目の決勝。
本人達にやりきったという感覚は残ったか。
5組目は真空ジェシカ。
ボケの独創性に加え、ツッコミでボケの強度を増し、全体的にもよく練られた構成。
にもかかわらず少しツギハギ感を感じた。
コミカルとチョイ悪というビジュアルもネタの「センス」が伝わる邪魔をしていた感が。
なお、敗退時の仕込みには度胸を感じた。
6組目はオズワルド。
前半戦はなかなか殻を破るコンビが出なかったが、ここで爆発。
テーマも丁度よく突飛なボケも漫才の流れの中に入っていた。
昨年ツッコミについて真逆のことを言われたが「いかに畠中を生かすツッコミをするか」という正解点に着地。
優勝に半分手を掛ける。
7組目はロングコートダディ。
揺るぎない面白さと「まんまコントでできるじゃん」と言われる要素が同居したネタ。
両者とも面白さを醸し出すというコンビの強みをうまく出せたネタでもあり。
「コント漫才」というツッコミをさせないネタで勝負するかが来年以降の鍵か。
8組目は錦鯉。
ネタは合コン。渡辺のツッコミの強度が強い(^^)。
塙「ボケただけで笑いになる強み」。
個人的にはバカバカしさのその先も見てみたかったが、そのポテンシャルで最終決戦3組に残る。
昨年の決勝初進出にも満足しなかった気概がもう一段上を引き寄せた。
9組目はインディアンス。
ハイテンポでも澱みないコンビネーション。
以前は漫才のために作ったように見えた田渕のキャラも、月日を経て漫才の中に落とし込まれてきた。
願わくば、もっときむが弾ける姿も見たかったが、掛け合い力を見せ、3度目の決勝で初の最終決戦進出。
ラスト10組目は、もも。
ダブルツッコミという独特なスタイルだが、色々なコンビを見てきたせいかオーソドックスに見えてくる(^^)。
フォーマットが最後まで変わらないため後半落ちるかと思ったが、落とさず逆に上げてきたワードチョイスは見事。
手法が知られた来年以降は果たして。
最終決戦。
掛け合い力のインディアンス。バカバカしさの錦鯉。構成力のオズワルド。
最も支持を集めたのは錦鯉。渡辺が長谷川に抱きつく姿はサンドウィッチマンの優勝を思い出させた。諦めければ夢叶うを体現。
まさのりさん「ラストイヤー56歳」発言に爆笑する川瀬の表情が印象的。
本戦後に見た敗者復活。
自分が3組選ぶとしたらダイタク、ヨネダ2000、東京ホテイソン。「my way」ハモリで寿司握りのインパクト。
他にカベポスター、男性ブランコ、金属バット、からし蓮根も捨て難く。
できれば知名度の低い芸人に不利な視聴者投票制は変更を希望。
〔※「M-1グランプリ」/「THE MANZAI」 過去記事〕
○M-1グランプリ 2019
○M-1グランプリ 2017
○M-1グランプリ 2016(1、2)
○M-1グランプリ 2015(1、2)
●THE MANZAI 2014
●THE MANZAI 2013
●THE MANZAI 2012
●THE MANZAI 2011
○M-1グランプリ 2010
○M-1グランプリ 2009(1、2、3)
○M-1グランプリ 2008(1、2)
○M-1グランプリ 2007(1、2、3)
○M-1グランプリ 2006(1、2)
○M-1グランプリ 2005(1、2)
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史上最高の大会 -「キングオブコント2021」レビュー-
http://agemomi2.exblog.jp/32349889/
2021-10-22T02:31:00+09:00
2021-10-22T12:27:28+09:00
2021-10-22T02:31:45+09:00
momiageculture
お笑い
しかし、翌2020年のM-1は、2018年のM-1と同様、どうまとめていいか考えがまとまらず、10ヶ月が過ぎた。
そんななか見た、キングオブコント2021。
「史上最高の大会」。
できれば、ベタなブログ記事タイトルはつけたくないところだったが、今回の大会は、そう形容するしかない大会だった。それも、「M-1グランプリ」、コンテスト大会時の「THE MANZAI」を含めて「最高」といってもいいぐらいの大会だった。「素晴らしかった」というより、「凄かった」。
正直なところ、お笑い以外にも録り溜めしている番組が山のようにあるなかで、最近、ネタ番組を見る優先順位は下がっていた。今に始まったことではないが、笑わせることに保険をかけてテロップやカットまみれにしてるネタ番組が氾濫していることも、見たいという気持ちを失わせていた。
しかし、そんなネタへの温度の低さを、再び押し上げてくれた大会でもあった。
選曲も含め、いつもの大会とはかなりテイストの異なるオープニング映像で始まった今大会(コーヒーを飲みながら語らうジェラードンを見れる機会など、そうはない。ちなみに、流れていたのは、くるりの「アナーキー・イン・ザ・ムジーク」)。
審査員は、6年間務めたバナナマンとさまぁ~ずの4人から一新。かまいたち山内、ロバート秋山、バイきんぐ小峠、東京03飯塚、そして松本人志という布陣。
以下、ファーストステージからレビューを。なお、各組の最後に、個人的採点と実際の採点(5人の平均得点)を記した。
1. 蛙亭
「新たな生命体」とその研究者という設定。中野のヌルヌル具合、液体を吐くタイミング、そしてその液体の色(緑)とシャツの色(白)のセレクトが完璧だった。
蛙亭のコントの場合、設定が飛びすぎていて、理解が追いつかないケース(イワクラのぼそぼそ喋りという要素もあるため)も間々見られるが、このつかみの見事さは、その後に続く面白さの伝わり度の高さを予感させた。
バラエティでは、イワクラ(岩倉)にコテンパンに言われることも多い中野だが、演じ手としてのポテンシャルは高い。特に、今回のネタでは、未知の生命体というおどろおどろしさを、少し腹の出たフォルムと高い声で中和したことで、ネタを非常に見やすいものにした。
山内が言うように、「中野が格好いいことをするだけで面白い」状態を作ったことを考えると、「出番がもっと後ろだったら…」という思いは残る。
「トップバッターは、会場が温まっていないことを考えると少し高めに点数をつける」なんてことも言われるが、今回は、審査員に「トップバッターがゆえに、低めにつける」と思わせた珍しいケース。
蛙亭の「クセ」を残しつつ、見ている人にわかりやすい、という意味で、今後のさらなる可能性を感じるネタでもあった。
★個人的採点…94点〔3位〕/審査員平均…92.2点〔6位〕
2. ジェラードン
個人的に、ジェラードンとネルソンズは、なぜブレイクしないだろうと常々思っている(3年前に書いた「お笑い芸人で、プロ野球チームを作ってみる」でも、ラインアップに入れた)。
そんなジェラードンが、いよいよキングオブコント決勝に。
ネタは、かみちぃと西本のキャラ全開の「学園コント」(と言い切っていいのか、少しためらいはあるが)。
自分の場合は、ジェラードンが、ほぼ無条件に好きなので、なかなか客観的評価はしづらいのだが、ネタが濃いだけに、当日の観客がこの濃さを受け入れるかどうかが一つのポイントだと思っていた。
この日の反応はよかった。ジェラードンのネタの凄さは、相当濃いキャラであるため、登場がピークになりがちなところを、そこからさらに、見ていてツッコミたくなる仕掛けを複数用意しているところ。この日も、西本が発するワードはじめ、かみちぃの髪ほどき、西本のジャージ着替えなど、大小織り交ぜたツッコミどころを散りばめていた。
なお、小峠の「(ツッコミの)海野が、そこまで入らないところが、うまい」という見方は新鮮だった。
個人的採点は94点つけたいところだったが、自分がジェラードン好きだということもあって、1点下げての93点。
実際の採点は、462点で、蛙亭と、わずか1点差。結果的に最終3組に残れなかった蛙亭とジェラードンだったが、今大会の勢いをつけたのは、間違いなくこの2組だった。
★個人的採点…93点〔4位(同率)〕/審査員平均…92.4点〔5位〕
3. 男性ブランコ
蛙亭、ジェラードンと、1組目・2組目が初っ端から、いきなりの高得点。
ネタの「派手さ」という点では、おそらく前2組よりは無いであろうことを考えると、結構厳しい状況での出番。
しかし、清楚な出で立ちでの登場、そこからの千原ジュニアを彷彿とさせる口調とセンテンスの選び方とのギャップで、観客の心をとらえたように見えた。
とはいえ、ネタの肝がこの「ギャップ」の部分だけだとすると、それ一本で押し切るのは難しいかとも思って見ていた。
そこでの「ボトルメールを出した側」の、まさかのカミングアウト。この構成には意表を突かれた。
冒頭の浦井の語りも含めて、ものすごく起承転転(さらに言えば、起承転転転)がしっかりしたネタ。
5年前に放送された「笑けずり」のシーズン2(コント編)にも出ており、何度かネタは見ているものの、これまで、そこまではインパクトを感じることが無かったが、今大会決勝に残った「理由」を明確な形で見せてくれた。
どちらかというと、平井のキャラのインパクトが強いが、それを支えているは、浦井の「普通の人」を演じ切る演技力。
平井、浦井とも、数年後、「ドラマでちょくちょく見る顔になっている」といった状況になっても不思議ではないコンビ。
★個人的採点…93点〔4位(同率)〕/審査員平均…94.4点〔3位〕
4. うるとらブギーズ
1組目、2組目がウケて、3組目がさらにウケるという、かなりの逆境とも言えるネタ順。
冒頭、子どもが迷子になった父親のパニックぶりが続いたところは、「ちょっと(点数的に)危ないかな」と思った。しかし、アナウンスが始まったところで、それが大いなるフリだったことがわかる。
「迷子センターのアナウンス」という、笑ってはいけない設定を作り出したところで、フリをどんどん回収していく。何より、八木の半笑いの演技と表情が、ネタに見事にハマった。佐々木とのやりとりも、ちょっと懐かしのコントを見ているようで、二人のコント芸人としての力を見せた。
ただ、結果は、この時点で3位の蛙亭にわずか1点届かず。ファイナル3組の席に座ることなく敗退となった。最終的には7位(460点)だったが、今大会は4位から7位までがすべて1点差。4位との差はわずか3点で、もはや、これは誤差(という言い方は適切でないかもしれないが)といってもいい点差。出番順など、ちょっとした違いで、「あの伝説の『迷子センター』のネタ」となっていた可能性も十分にあった。
もし、もう少し加点を狙える要素があったとしたら、迷子の子の漢字のセレクトを、笑いを引き出す絶妙なラインの芸能人の名前にする、などいった方法があったかもしれないが、そのやり方は諸刃の剣でもある。本人たちには、決して慰めにはならないだろうが、「決して負けではない」7位だと思った。
★個人的採点…91点〔7位〕/審査員平均…92.0点〔7位〕
5. ニッポンの社長
今大会は、事前に「どこが優勝するか」といった順位予想的な視点では見ていなかったのだが、メンバー的に爆発があるとしたらこのコンビかなと思っていた。
昨年の「ケンタウロス」ネタは度肝を抜かれたし、漫才でも、一風というか、三風ぐらい変わったネタをするコンビ。
かなりの期待をもって見始めたが、ネタ始まりは静かな立ち上がり。ケツ演じる「バッティングセンターにいるおっちゃん」の佇まいが、なんとも言えぬ雰囲気を醸し出していたものの、ネタの笑いどころがハッキリするまでは少し時間がかかった(というか、あえて時間をかけるネタ構成だったのかもしれない)。
実際の笑いどころの設定の仕方は、さすがニッポンの社長という感じ。バッティングセンターに行ったことがない人には少しわかりにくかったかもしれないが、ボールが飛んで来る間隔、当たったときのリアクション、そして何より、ホームランのときの音楽のセレクトは満点だった。また、素振りしていたときのケツのスイングが、「体型的は上手くなさそうだが、軽~く振って飛ばせる人」のリアル感を出していたのも、隠れたフリになっていた。
しかし、この時点では2位の得点を獲得したものの、最終的には後に出てくる2組に抜かれ、今年もファイナル進出ならず。
「爆発力」や「冒頭からオチまでの展開の妙」という部分は少し欠けるネタだったがゆえに、今回の結果となったかと思うが、「らしさ」は十分見せた。果たして、本人たちの大会後の思いは、「らしさ」を見せたことで満足できたのか、それとも、やはりトップを取りたいと思ったのか、どちらであったか。
ちなみに、コンビ名の由来は、ケツが実業家の与沢翼に似ているところから来ているとのことだが、他にもっと似ている人物がいる気がする。
一方、辻は見るたび、なんとなくGRAPEVINEのボーカルの田中将之を思い出すのだが、実弟が元中日の辻孟彦(プロでは成績を残せなかったが、その後、大学の投手コーチとして、その評価は高い)というのは、野球ファンとして、ちょっとした驚き。
★個人的採点…92点〔6位〕/審査員平均…92.6点〔4位〕
6. そいつどいつ
ファーストステージ、ようやく折り返し。
男性ブランコが一歩抜けているが、2~5位は、すべて1点差という大接戦。全組ハズしていないなかでの、6組目。
冒頭からオチまで、市川(刺身)の「パックをした顔の怖さ」で押し切るネタ。冒頭のインパクトが大きいがゆえに、ネタ途中で飽きてしまう危険性もはらむネタだったが、市川の動きの多彩さもあり、そこまでペースダウンさせることなく最後まで見せたのは、このコンビ、そしてこのネタの力だと思った。
今後の改善点を挙げるとするならば、松本(竹馬)の演技か。前半は、本当の素人の若い夫婦っぽいその喋りがリアル感を出していたが、ある程度ネタの世界に入って見られる中盤以降は、その素人っぽい喋り方が演技力の「不足」に感じられてしまった。松本人志が比較的高得点をつけていたが、他の4人の評価がそこまで高くなかったのも、そのあたりがあるように思う。
「ボケを生み出す」演技でも、「ボケとは直接関係ない」演技でも、コントでは、その演技「力」が、面白さの「厚み」に関係してくる。
全体的なレベルの底上げもあり、最近は、片方のキャラの強さだけでは、抜きん出た存在にはなれない。その意味で、松本の演技「力」は、改善点でもあり、コンビの将来にとって、大きな「伸びしろ」だとも思う。
★個人的採点…89点〔8位〕/審査員平均…91.2点〔8位〕
7. ニューヨーク
ウェディングプランナーが「クズ」だった(^^)というネタ。
ニューヨークらしい「皮肉や偏見に満ちたネタ」というより、「ストレートに」クズなヤツというところが、ネタが凡庸に見えてしまった原因か。
松本の「『あんまウケんな』と思ってしまう」の発言が得点の低さにつながったとは、本人たちも実際には思っていないだろう(その意味では、M-1でのネタ後コメントに続いて、再び、平場での力を示したとも言えるが)。
「イヤな奴」が、「もっとクズな奴」だったという変換だけでは、5分間、見ている側の心をつなぎ留めるのには弱かった。
キングオブコントの場合、M-1よりも「テレビへの露出が多いことでのマイナス」は少なく(過去の優勝メンバーを見ても)、純粋にネタを評価されての今回の点数だと思う。
以前、2019年のM-1レビューのときにも書いたが、「イキってるヤツ」に対する違和感の「切り取り方」にセンスがあるコンビではあるが、「イキり」自体にクローズアップ(今回のネタは「イキり」とはまた違うが)してしまうと、対象への「不快感」の方が目立ってしまい、「切り取り方のセンス」が見えなくなってしまう。
テレビを見ている限りでは、この1~2年でかなり露出も増え、M-1も含め、コンテストへのモチベーション、また準備時間の確保の問題なども出てくると思われる時期。
本人たちの思いは、「どこ」にあるだろうか。
★個人的採点…85点〔10位〕/審査員平均…90.6点〔10位〕
8. ザ・マミィ
前半戦、かなりの高得点が続いたことで、「あと、どこが残っているのだろうか」ということへの意識が薄くなり始めた8組目。
そんななかでの、ザ・マミィの登場(さらにその次に、空気階段が控える)。
イントロは、映画などでありそうな、「ちょっと関わらない方がいいな」と思わせるおじさんが、一人でしゃべっている「画」。そこに、善良そうな若者が話しかけるという構図。
酒井の「いかにも」という風貌と喋り方の力も大きいが、「多くの人が、一度は遭遇したことがあるであろう状況」ということが、このネタの大きなフリにもなっている。
「それでも話しかける若者」という存在自体は非現実に近い部分もあるが、酒井が演じるおじさんの存在の説得力がある(あり過ぎる)ため、そうしたフィクションの要素が、今度は、コントとしての「力」となり、ネタに強さをもたらしていく。
途中、若者の風体が「クラブに行きそうな感じに見えない」ところは気になったが、その後の、かばん→財布という「ステージアップ」の流れも、見る側に「次は何が来るんだろう」という期待を持たせた。
そして、クライマックスでの、ミュージカルへの転換。理屈とかじゃなく、「コントって、こういうのが見たいんだよなあ」と思わせてくれるコントだった。
有名な「松ノ門」ネタは、ある意味、酒井の風貌とは真逆の役割を与えることで面白さを作っているように思ったが、今回のネタは、酒井のキャラそのままの役割を与えることで、ネタに説得力と強さを持たせた。
1組目、2組目、さらに3組目……と、その面白さのレベルの高さに驚かされ、さらに終盤に来て、またまた驚かされる。「なんて大会だ」と思った。
後日読んだ酒井のインタビューで、テレビ出演自体はうれしいものの、ドッキリや過酷なロケに出ることで「ヘンテコタレントになりかけていた」という発言を見たが、今大会で「決してヘンテコタレントではない」ことを明確に証明した。
点数が出た直後、酒井に「切り換えろ、切り換えろ」と言いつつも、嬉しさを隠し切れない林田の表情も印象的だった。
★個人的採点…96点〔1位〕/審査員平均…95.2点〔2位〕
9. 空気階段
冒頭、かたまりが裸で縛られている画のインパクト。
そして、ドアを蹴倒して入ってきた、パンストを被った、もぐら。
その後、パンツ一丁で、腕を縛られたまま、ステージ上を駆け回る2人。
見終わったときに書いた一言メモには、「なんだこれ(^^)」。ただ、もちろん、貶し言葉ではない。言うならば、「なんだこれ。最高(笑)」という感じ。
消防士のカミングアウトで、1つ目のロケットを切り離し、さらに警察官のカミングアウトで、2つ目を切り離し、パンストをかぶったもぐらの顔引っ張りで、大気圏を超えて、宇宙へ飛び出した。そんな見事な構成と2人の熱演に、「面白いコント」を見た充実感がしっかりと残った。
空気階段というと、やはり、もぐらのキャラがクローズアップされるが、ネタの途中で、かたまりが、さらにそれを上回る裏切りを見せる存在となったことが、このネタをもう一段階凄いものにした。「火事から逃げる」という合法的な手段をもって、「明らかに反則(^^)」である、もぐらのパンスト引っ張られ顔を見せるというテクニックも見せた。
冒頭、かたまりの薄笑いを浮かべながらの、ちょっと力のない「女王さま~」に始まる二人の演技も確かで、セットの壁が赤であることが「火事」という設定に味方してると思ってしまうぐらい、見ている側を圧倒するネタだった。
得点は、直前にトップに立ったザ・マミィをさらに10点上回り、優勝に王手。
ザ・マミィを見た感想とは、またちょっと異なり、「強者」が「強者」のコントを見せた、という印象ももった。
★個人的採点…95点〔2位〕/審査員平均…97.2点〔1位〕
10. マヂカルラブリー
いよいよ最後の組。知名度的は10組のなかでも1・2を争うが、ザ・マミィ、空気階段と、爆発したネタが2本続いた後での登場。
ネタはこっくりさん。そして、軸となるのは、野田の動きと、それに合わせた村上のツッコミ。
マヂカルラブリーの場合、野田の方に目が行きがちだが、それを笑いに変えていってるのは、村上のハイトーンのツッコミ、というか説明。
ただ、漫才のときは、衣装の違いもあり、「変わった人」と「普通の人」という構図が成り立つが、このコントでは、同級生ということからか、同じ衣装(制服)を着ていることもあって、そのあたりの差別化がされないことでのマイナスがあったように思う。
また、露出が多くなってきたことで、ある意味、ネタでの野田パターンが読まれ始めてきていることを考えると、村上の方の狂気(なんせ、村上は芸名(^^))の方を見せるやり方も考える時期に入ってきてるのかもしれない。
決して悪いネタではなかったと思うが、直前の2組がこれだけ完成度の高い、しかも、それぞれに笑いをとれる複数の「章」があるネタのあとだと、さすがに「差」を感じざるを得なかった。
★個人的採点…86点〔9位〕/審査員平均…91.0点〔9位〕
ということで、10組が終わって、ファイナル3組に残ったのは、空気階段、ザ・マミィ、男性ブランコ。1位の空気階段と2位のザ・マミィの差は10点。審査員一人に換算すると一人2点となり、「ちょっと差は大きいかな」とも思った。
続いて、ファイナル。
1. 男性ブランコ
レジ袋をケチったので、お菓子を抱えきれないほど持ったまま歩く男性、という設定は、1ネタ目に続き、このコンビの目のつけ所のすばらしさを感じる、立ち上がり。
ただ、その後のやりとりに、もう少し起伏が欲しかったところ。
平井、浦井の演技力があるがゆえに見ることができたが、「次、何が起こるんだろう」という期待を高めるネタだったがゆえに、途中、冗長に感じた部分もあった。
また、これは単なる自分の勘違いだったのだが、浦井と平井の関係性がわかった場面で、最初、自分は「生徒と恩師」という関係だったのかと思った。しかし、同級生ということがわかったときに、少し肩透かしを食らった感があった。その後の展開(「唯一友達認定」といったワード等)を考えると、同級生であるがゆえのネタの広がりもあったかと思う。ただ、もし同級生だったとすると、それを知ったときに、「一度は黙っておいて、去り際に」なんて行動をとるだろうか?とも考えてしまった。
もう一つ思ったのは、これだけ何組もネタをやっていると、どうしてもかぶる部分が出てきてしまう、という点。
人付き合いがうまくない人、という設定は、コントのなかでは結構ある設定で、この日披露されたネタだと、年齢などが同じというわけではないが、ザ・マミィの1ネタ目のおじさんと若干かぶる感じもある。
その意味では、ニッポンの社長は、こうした大会でも、絶対かぶらないだろうなあ(^^)とも思った。
★個人的採点…91点/審査員平均…92.6点
2. ザ・マミィ
1ネタ目とは打って変わって、酒井が「悪どい社長」、林田が「その悪事を暴こうとする社員」という設定。
「こうしたネタもできる」という部分を見せたが、ネタ内でのパターンがあまり変わらなかったために、大きくはアピールできなかった印象。
少し気になったのは、林田の声の細さ。見た目が極めて真面目そうというのがあるからかもしれないが、「社長を追い詰める」という設定に説得力を持たすには、もう少し声の太さが欲しいと感じた。
もちろん、持って生まれたものもあるとは思うが、今後、他の芸人とのコラボなども含め、さまざまなコントを演じるには、「太く」ではなくてもいいかもしれないが、少なくともいくつかの「声」のバリエーションを持っておく必要性を感じた。
審査員の点数もあまり伸びず(1ネタ目の点数でいうと、うるとらブギーズと、そいつどいつの間ぐらいの点数)、なんと合計得点が、男性ブランコと全くの同じに。
★個人的採点…91点/審査員平均…91.8点
3. 空気階段
自分が小学校のときに考えた架空キャラのコンセプトカフェ。設定自体は面白いが、すべてが妄想なので、見ている側がまったくついていけない(感情移入できない)というリスクも併せ持つネタ。
しかし、もぐらの「バランススクーターでの登場」で、見る者の心をつかむ。1ネタ目とは違って、コミュニケーションのなかでのかたまりの立ち位置は「普通の人」だったが、メガトンパンチマン(の設定)に苦笑をしつつも、店員が作った設定に乗っていく様が非常に上手い。
それは、もぐらにも言えることで、コントの登場人物を演じる「上手さ」がこのコンビを支えていることがわかるネタでもあった。
もぐら(店員)が、両替の仕方の間違いでキレる際の間なども、面白さを伝えるにはあれ以上ないタイミングでキレていた。
言うことが多少予想できた「豆にはこだわっております」のフレーズも、言う「タイミング」とその言い方で、強力な加点ポイントとなった。
前2組が、2ネタ目が1ネタ目に比べて少し間延びした部分があったなか、1ネタ目・2ネタ目とも、ほぼ笑いを途切れさすことなく、やりきった2人。
これだけ評価の高いネタが並ぶ今大会で、見事に、納得の「優勝」を勝ち取った。
空気階段の2つのネタを見て感じたのは、「フィクションの力」。「フィクションは現実に勝てない」といった言葉もあるが、この日の二人は、「フィクションだから表現できること」を最大限に見せてくれたと思う。
★個人的採点…95点/審査員平均…94.8点
さて、1ネタ目、そしてファイナルを含めた合計の個人的採点を振り返ると、下記のように。
〔ファーストステージ〕
1位 ザ・マミィ 96点
2位 空気階段 95点
3位 蛙亭 94点
4位 ジェラードン 93点
4位 男性ブランコ 93点
6位 ニッポンの社長 92点
7位 うるとらブギーズ 91点
8位 そいつどいつ 89点
9位 マヂカルラブリー 86点
10位 ニューヨーク 85点
〔合計得点(ファースト・ファイナル)〕
1位 空気階段 190点(95点・95点)
2位 ザ・マミィ 187点(96点・91点)
3位 男性ブランコ 184点(93点・91点)
1ネタ目で、ザ・マミィを空気階段より1点多く付けたのは、最後の「ミュージカル」という発想に敬意を表して。ただ、2ネタ合計では、やはり空気階段。
蛙亭は、さきにも触れたが、1ネタ目でなければもっと…という印象。
なお、実際の審査員の点数を見ると、「知名度だけでは上位に行けない」というシビアさを見せつけた大会でもあった。
最後に、大会全体の感想を。
すでに、色々なところで言い倒されていると思う(自分のレビューを書き終えるまでは他のレビューは見まいと思っているので、1記事を除いて、いまだに今大会の評価を見ていない)が、審査員の人選が見事に当たった。
コントの現役世代である4人が審査をしたために、点数の説得力があったし、何より「それぞれのコメント」に説得力があった。いい点をほめつつ、気になる点は指摘する場面もあり、気は早いが、「来年もこのメンバーで…」と言いたくなるほど、納得感を残した。
審査員の評価が分かれたネタもあったが、審査員によって点数の付け方が違うのは当然で、そのことがある意味、点数に説得力を持たせたようにも思う。
なお、松本人志が、若干、他の審査員と付け方が違う(なお、まだこのブログを書いている時点では「水ダウ」の審査企画は見ていない)印象があったが、「できる限り全組に違う点数をつける」という方式(コラムニストの堀井憲一郎が指摘していた。実際そうなのかはわからないが)で採点していたとすると、かなり採点が難しい大会だったのではないか。
もう一つ印象に残ったのは、会場の観客の反応。5年前に、観客の声だし反応に関するブログ記事を書いたことがあるが、観客がちょっとしたことで悲鳴を挙げたり、大袈裟な反応をしたりすることにもはや驚くことも少なくなってきたなか、今大会の、観客のネタへの反応は、非常にネタを見やすいものにしてくれた。
マスクをしているからかはわからないが(^^)、きちんと、笑いどころに合わせて、しかもその笑いに合った強弱で笑っていたのが印象的。もちろん「笑っていない場面=つまらない場面」というわけではなく、笑いの助走の部分では、過度に反応することはせず、静かに見守っている姿勢も伝わってきた。
今大会を史上最高の大会にした要因の一つは、この日の観客の人たちだと思う。
思えば、第1回キングオブコントのときには、レビューで、下記のようなことを書いた。
決して優勝者が面白くなかったと言っているわけではない。
ただ、ああいうネタをやって、結果、横綱相撲になるということは、大会の傾向がどこか偏っていることの裏返しのように思った。
それから13年が経った。
今回の大会で、キングオブコントは、M-1グランプリに匹敵する、ともすると、「ネタの質」という意味では、M-1グランプリを超える大会になったかもしれない。
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「M-1グランプリ2019」レビュー -本当に「これまでで一番面白い大会」だったか-
http://agemomi2.exblog.jp/30678513/
2020-01-19T04:20:00+09:00
2022-01-27T02:21:40+09:00
2020-01-19T04:20:22+09:00
momiageculture
お笑い
約1年半ぶりの投稿です(^^)。
そして、2005年の第5回から書き続けてきたM-1のレビュー(その間、「THE MANZAI」も)ですが、昨年は、とうとう書きませんでした。
〔※「M-1グランプリ」/「THE MANZAI」 過去記事〕
○M-1グランプリ 2017
○M-1グランプリ 2016(1、2)
○M-1グランプリ 2015(1、2)
●THE MANZAI 2014
●THE MANZAI 2013
●THE MANZAI 2012
●THE MANZAI 2011
○M-1グランプリ 2010
○M-1グランプリ 2009(1、2、3)
○M-1グランプリ 2008(1、2)
○M-1グランプリ 2007(1、2、3)
○M-1グランプリ 2006(1、2)
○M-1グランプリ 2005(1、2)
忙しくて書く暇が無かったというのが一番の理由ですが、「霜降り明星が和牛を抑えて優勝した」ことの意味をどう捉えるべきかの答えが出せなかったというのも、書くことをためらった一因ではありました。
正直、今回も、そこまで書く意志はなかったのですが、実際にM-1を見て、またその後の各芸人などの声などを聞いて、やはり「書きたい」という思いが出てきての、今回の投稿です。
なお、ここ数年は、ネタ番組はあまり積極的には見ていないという状況。
例えば、若手のネタを見るには貴重な機会である「ネタパレ」ですが、基本、ネタを持ち上げるスタンスのため、ネタの本当の面白さを把握するという意味でズレが生じてしまう気がして、あまり見ず。
同じく「にちようチャップリン」も、各ネタの得点を見る限り、いまだ審査基準がわからないため(^^)、時折見る程度。
以前は、3回戦ぐらいからM-1の動画を見ていたときもありましたが、「M-1決勝を楽しく見るには、フラットな視点で見た方がいいのでは」という思いから、最近はそれも見ていません。
ということで、時折、ふと引っかかった芸人のネタを見るぐらいのベースで見た、今回のM-1のレビューです。
まずは、敗者復活戦。
今回は16組が出場。
自分が投票するなら、和牛、トム・ブラウン、くらげの3組でした。
和牛は、やはりこのメンバーのなかでは抜きんでているネタの構成力に敬意を表して。
「川西の熱くなり方が、ちょっと今までとは違うな」ということは感じましたが…。
トム・ブラウンを選んだ理由は、何と言っても「勢い」。
正直、昨年の決勝では、布袋寅泰、木村拓哉といったセレクトに、ちょっと古さを感じていました。
今年も、鈴木雅之、工藤静香と、2019年にやるにしては…というラインアップでしたが、それを凌駕するバカさ加減。本当にコイツらは何やってんだと……(^^)。
くらげは、ボケの渡辺の風貌に見事にマッチしたネタというところを評価。ツッコミの杉の、抑えた感じの口調もネタの面白さをじわじわと倍加させていました。
実際の順位は上位ではありませんでしたが(8位)、ネタの作りと演じ方にセンスを感じました。
敗者復活に関して、もう少し書きたい芸人もいますが、長くなりすぎるので、ここから決勝のレビューに。
なお、各芸人の横は個人的な点数、審査員の点数は7名の平均点数です。
●ニューヨーク … 89点(審査員:88.0点)
ネタ後の松本人志のコメントに対する、屋敷の「最悪や…」の一言が評価された今回。
ただ、肝心のネタ自体の評価は高かったとは言い難い。審査員の評価も最終的に10組中最下位だった。個人的評価も、トップバッターということで3点プラスしての、86+3の89点。
歌ネタのため、どうしてもネタ中に間が空くハンデがあるといった芸人からの見方もあるようだが、それを差し引いても間延びした感があった。
そのこと以上に今回ちょっと気になったことが一点。
ニューヨークのネタというと「みんながちょっとした違和感を感じているもの」に対する大いなる偏見(^^)。その選び具合がこのコンビのセンスが出るところではあるのだが、なかでも、よくネタ中でやる「イキっているヤツ」という部分が時代とともに古くなったとき、それに対応していけるのかが気になった。
それこそ、よくネタでやっていた窪塚洋介や市原隼人、Dragon Ashは、露出度という点だけで見れば「少し前」という印象があり、そうした要素が強いネタをやり続けるようだと、「まだそこで止まってるんだ」と思われる可能性がある。
「違和感の切り取り方」のセンスはあるコンビなので、そうした見方が杞憂に終わればいいとも思うが、今回のM-1に限って言えば、「新しいニューヨークが見れるかも」という期待を上回るネタではなかった。
もし、ネタ後の立ち振る舞いへの高い評価に満足しているようだと、徐々にコンビとしての輝きは消えると思う。
●かまいたち … 93点(審査員:94.3点)
2組目にして、早くも優勝候補の登場。
ネタはUFJ(もとい、UFJ?)。
山内の「折れない」キャラが、見事にハマったネタ。
そして何より、このネタの面白さを倍加させてるのは、濱家の”本気”の怖がり方。
正直、キングオブコントを獲るあたりまでのかまいたちは、一定以上の”面白い”ネタをやるものの、そこまで印象に残るというコンビではなかった。
山内のボケ(と言い切れない部分もあるが)の方向性が少し異質なこともあり、面白さの伝わり方に、やや時間がかかるところもあったと思う。
しかし、徐々に山内のキャラが浸透し始め、その”狂気”の部分が説得力を持って、観ている側に伝わるようになってきた。
そして、前述した、濱家のネタ内での”本気”の感情表現が、今回の爆発を生んだと思う。
審査員も、「本当は2組目であまり高い点数をつけたくないけれど、これだけのものを見せられると…」という点数が並んだ。
ネタ内だけでなく、ネタ後も、山内の顔に「自信」の色が見えたところに、今のかまいたちの「力」がうかがえた。
●和牛 … 95点(審査員:93.1点)
3組目にして、早くも2組目の優勝候補が登場。
ということで、敗者復活戦を勝ち上がったのは和牛だった。
ネタは、敗者復活戦と同じく、不動産屋ネタ。
ネタ自体は、一度見てしまったためフラットな評価はしづらかったが、「一昨年、昨年とあれだけのネタをやってきて、まだ違うパターンのネタを作れるのか(そして、演じられるのか)」ということに敬意を表して(もっと言うならば「THE MANZAI」の「がんばっていきましょう」ネタあたりから)、かまいたちより高い点数に。
ただ、川西が途中からスイッチを変える部分が、いささか強引かな…という違和感は多少あった。その意味では、設定こそ唐突ながら、昨年のゾンビネタの方が流れは自然だったか。
なお、以前も書いたが、9~10年前にM-1の敗者復活で見た和牛は、残念ながら、ほとんど面白さが感じられないコンビだった(2009年・2010年の敗者復活は、◎○△×を付けながら見ていたのだが、今見ると、いずれの年も×をつけている)。
よく「ブレイクしたコンビは若手時代から光るものがあった」などと言われるが、自分の眼力の無さかもしれないが、和牛には、ほとんどそれを感じなかった。そこから月日を経て、二人はどうやって”面白さ”を生み出す力をつけていったのか。
どこにも何にもひっかからずにもがいている若手芸人に響くアドバイスが一番できるのは、この2人かもしれない。
●すゑひろがりず … 89点(審査員:91.0点)
かまいたち、和牛と、強豪2組が出た後での出番。
登場のインパクトは、10組中1番。その”つかみ”から、いかに失速することなく4分を演じきるかがポイントだったが、そこまで落とすことなく走り切った。
”爆発”とまでは行かなったが、爪痕は残したのでは。
「あえて、ネタの構成について、あれこれいうのは野暮だろう」というところが、このコンビの弱さでもあり、ある意味”強さ”でもある。
正月のネタ番組はほとんど見ることができなかったため、その後、仕事が増えたかはわからないが、M-1での得点とは関係なく、今回の出場を契機に露出を増やせるコンビではないか。
●からし蓮根 … 89点(審査員:91.3点)
芸人からの評価も高い、若手コンビ。
今回、結成6年目でM-1初出場となったが、正直なところ、あまり印象に残らなかった。
これまで、からし蓮根のネタは何度か見たことがあるが、そこまで面白さを感じられていない。
改めて見返してみると、伊織が杉本のツッコミに圧されているように見えるのが、ボケの面白さを半減させている原因のように感じた。
身長こそ高い伊織だが、視線が下がりがち、かつ杉本の口調が結構キツい(ように見える)ため、突飛なボケをしても、それがあまり入ってこない。
伊織のボケが色々な角度をもっているだけに、できれば「ツッコミが、ボケに振り回される」構造になった方が面白いと思うのだが、実際はツッコミが引っ張っている感じになっており、バランスの悪さを感じる。
この印象を打開するには、伊織の立ち振る舞いや表情を変えた方がいいのか、それとも杉本のツッコミフレーズを変えた方がいいのかはわからないが、初見の人たちにも面白さが伝わるコンビになるには、もう少し時間がかかる印象。
●見取り図 … 88点(審査員:92.7点)
昨年に続いて、決勝進出。
昨年はトップバッターながら、まずまずの健闘を見せた。結果的に今年は、(この時点で3位の)和牛までわずか3点差の得点と、さらにジャンプアップした。
ということで、昨年より得点は大きく上がったが、個人的には「たとえの出し合い」に終始した印象があり、もう一つ面白さを感じられなかった。
富澤がコメントで言っていた「あおり運転の申し子」は傑作だったが、たとえの出し合いが、大喜利の出し合いのように感じられてしまい、たとえ以外の部分も含めて、掛け合いで笑いをとる部分が無いのは残念だった。
同じ「たとえ」でも、風貌ばかりでなく、盛山のハイトーンボイスをいじるという手もあったかなとも思う(一方で、リリーの、あまり特徴の無い声に、絶妙なたとえをする、という手も)。
「ありそうな名前」を漫才後半で回収する、という手法は今回も入れたが、指摘後の畳み込みフレーズ(今回で言えば「TSUNAYOSI」なんて将軍しか知らん)に「考えた感」が出てしまうのも、少し気になった。
●ミルクボーイ … 97点(審査員:97.3点)
今回、ほぼネタを見たことが無かった唯一のコンビ。
見た目は、あまりフレッシュさを感じない二人。
ベルマークのつかみから、さてどんな漫才をやるのかと思ったところで始まったのが、コーンフレーク。
無名ではあるものの、予選を観覧した人の意見を見ると「今回の決勝進出は順当」という声が多かった。
ただ、ここまで爆発するとは、ベルマークの時点では思わなかった(^^)。
このネタの面白さについては、色々な人がすでに書いたり分析したりしているが、自分がこのネタの強みだと思ったのは、駒場が一度コーンフレークとは思えないヒントを言うことで、面白さの基準点を一度ゼロに戻すことができるという点。
ボケにボケを重ねていく漫才の場合、雪だるま式に笑いが膨らむ可能性もあるが、ボケの強さへの期待値がどんどん高くなるために、弱いボケがあった場合、そこで笑いが萎んでしまうおそれもある。
ミルクボーイの今回のネタの場合、毎ターン、笑いへの期待値がフラットに戻るため、見ている方も、毎ターン笑う準備ができた状態で見ることができる。
それにしても、赤いスカーフの虎、パフェのかさ増しは、「あるある」検定があったら、満点の答え。
内海の「ザ・漫才師」といった格好も、ツッコミ感情に説得力を持たせ、かまいたちを20点以上上回る得点も納得のネタだった。
●オズワルド … 87点(審査員:91.1点)
ミルクボーイが大爆発を見せた直後のネタ順。
実は、今回の決勝進出者のなかで一番、期待値を持って見ていたコンビ。
オズワルドのネタを最初に知ったのは、ラジオだった。つかみの時点では、ネタでよくありがちなテーマだなと思ったが、ツッコミ(伊藤)の「落着きのある戸惑い」というあまり無いタイプのツッコミが耳に残った。
その後、「ネタパレ」で見て風貌を初めて知った(また、伊藤沙莉(この人のコメディエンヌとしての力は半端ない)の兄というプロフィールも)が、基本どの芸人でも持ち上げられることの多い「ネタパレ」だと本当の力は見えないかなと思い、その時は少ししか見なかった。
ということで、今回、テレビでネタを見たのはほぼ初めてだったが、今後に十分な可能性を感じるものの、まだその持っている面白さの伝え方に課題があるように感じた。
見ていて思ったのは、思ったより伊藤のテンポが速いなということ。また、ネタ自体は独創性を持った十分な面白さがあるのだが、やりとりに台本を読んでる感が出ていたのも気になった。
すでに、「独自の面白さ」というポイントはクリアしているだけに、「伝え方」の部分が改善されるかどうかで、M1の優勝候補にもなり得るし、期待の若手という存在のまま、という可能性もあり得る。
個人的には、大会後にNON STYLEの石田も言っていたが、二人ともサスペンダーという衣装は、オズワルドのネタの面白さを伝えるには、合っていないように感じる。
●インディアンス … 91点(審査員:90.3点)
今回、ほとんどの組が爪痕や手応えを残したなか、一番厳しい結果に終わった芸人だったかもしれない。
いまやネタ番組では、上位の常連という感じで、今回、優勝候補の一角と考えていた人も少なくなかったと思う。
しかし、田渕のハイテンポなボケが思ったよりはまらず、結果は9位。審査員のコメントも結構厳しかった。
正直、田渕の芸風は好き嫌いが分かれるところ。すでに同じタイプで、アンタッチャブル山崎というとんでもない”化け物”(^^)がいるだけに、新鮮味という点では少し薄れるところもある(同じ系統(?)では、オテンキ・のりもいるが)。
それでも、ここまで実績を積み上げてきたのは素晴らしいと言えるが、このコンビが面白くなるかどうかの鍵を握っているのは実は、きむ(木村)の方だと思っていた。
田渕のキャラにそこまでハマっていなかった自分だが、ある時期から、木村のツッコミのキレが格段によくなったことで、田渕単体ではなく、コンビとしての面白さが増してきたように感じた。田渕のボケ倒しが生み出す面白さの上限がそろそろ見えてきたなか、インディアンスがもう一段階面白くなるには、やりとりによる面白さをどれだけ生み出せるかではないかと思う。
その意味では、今回の「おっさんみたい彼女」というセレクトは、”コンビ”としての面白さを見せるには向かなったかもしれない。
M-1は、ともすると、順調に積んできた実績を、厳しい評価によってマイナスにまでされる”怖さ”を持つ大会。
一方で、その”厳しい評価”を、新たな面白さを生み出す動力に変えて、その評価を見返すことができたら、芸人としてこれほど格好いいことはない。
●ぺこぱ … 92点(審査員:93.4点)
長丁場の決勝も、ついに最終組。
お笑いのパターンがあらかた出たなかで、最後に残ったのが、ぺこぱだった。
正直、ぺこぱに関しては、最初からフラットな気持ちでは見れなかった。
「笑けずり」でその存在を知ってから4年(※過去の「笑けずり」レビュー(1、2、3、4、5、6))。
その後、「有ジェネ」での松陰寺のみレギュラーなどを経て、全肯定ツッコミという新たなスタイルをひっさげて臨んだ「おもしろ荘」で優勝。
そして、ザ・パーフェクト、Aマッソの「笑けずり」上位組が伸び悩むなか勝ち取ったM-1決勝。
「果たして、『全肯定ツッコミ』が受け入れられるのか?」という不安を持って見た最終出番。
結果はウケた。それも、和牛を2点上回っての最終決戦進出。
「否定しない」という全く新しいスタイルが、これだけ高い点数を獲得できた一番の要因だが、そのバリエーションが豊富だったことも、さらに評価を一段階上げたと思う。
「笑けずり」のときも、ただのキワ者キャラではなく、審査員とのやりとりなどで、笑いの反射神経が高いことを感じさせた松陰寺。
2015年に、LUNA SEAの「ROSIER」に乗って登場してきても古さを感じさせない、そのキャラ力も含めて、かなりのポテンシャルをを持つ芸人だと思っている。
なお、シュウペイに関しては、また後ほど(^^)。
ということで、ミルクボーイ、かまいたち、ぺこぱの3組が、最終決戦進出。
和牛は、今年も優勝に届かず…。
正直、2018年も、2017年も、優勝しておかしくなかった和牛。
今年のネタも、決勝初進出のコンビであれば、もっと高い点数を獲得していただろう。
和牛が優勝できなかったことについて語ることは、「M-1を語る」ことと同義ではあっても、「漫才の面白さを語る」ことと完全に同義というわけではないと思う。
コンテスト形式の「THE MANZAI」から含めて、これだけ数多くの魅力あるネタを見せてくれたことに、改めて感謝したい。
さて、いよいよ最終決戦。
ネタ順は、1st ラウンドの点数の逆順に、ぺこぱ→かまいたち→ミルクボーイ。
ぺこぱの2本目は、「電車での席譲り」。
「否定しない」スタイルは、1本目と同じなので、ウケがどうなるか心配だったが、観ている側も「全肯定」を期待していたこともあってか、ウケ具合はよかったように感じた。
ただ、それぞれのボケどうしの関連性は1本目より薄く、多少、羅列感はあったか。
ネタを見る回数が増えてくると、やはり、スタイルへの慣れということもあって、シュウペイの力量がだんだんと露わになってきてしまう。
少なくとも、傍から見ている限りでは、ただボケを言っているという風にしか見えないこともあり、松陰寺の負担は相当に大きい(^^)。
問題は今後、このシュウペイの「仕事していない」感じを、このままで行った方がいいのか、それとも、やはりコンビとしてのやりとりのなかで笑いを取る要素を増やしていいのか、というところ。
シュウペイの、ネタ中での芸人としての力量不足という側面がある一方、逆に、「芸人として考えたときに『あまりにも普通』」という魅力が同居しているだけに、”策士”松陰寺としても、悩ましいところではないか。
個人的には、これでシュウペイの芸人としての力量が上がったら、さらにとんでもないコンビになるとは思うが。
続いて、かまいたち。
ネタは「トトロ見たことない自慢」という、これまた、山内の屁理屈キャラが、最大限に発揮されるネタ。
実は、自分も「トトロを見たことがない側の人間(^^)(ところどころは見たことはあるが)」なので、逆に、フラットな立場で見ようという思いが発動した。
構成力が高かった1本目と同じく、こちらも、1つのテーマながら、色々な展開で笑いを取っていくネタ。
さらに、最後は、観客に質問して、その結果如何でオチを変えるという構成。
ある意味リスクを伴う要素を、この決勝の舞台で入れてきた、かまいたち(逆に言えば「決勝の舞台だからこそ」かもしれないが)。
その姿には、コンビとしての「面白さ」「巧さ」だけでなく、「凄さ」を感じた。
最後は、ミルクボーイ。
お題(もはや、ネタではなく「お題」と言いたくなってくる)は「最中」。
構造は1本目と同じだったが、2本目もウケた。
さすがに、コーンフレークの「赤いスカーフを巻いた虎」ほどの共感度の高いフレーズは出てこなかったが、それでも「模様が怖い」など、「そうそう」と思わせる要素を散りばめる。
内海の方に目がいきがちだが、駒場の醸し出す「友達との会話感」も、ネタの見やすさにつながっていると感じた。
そして、結果発表。
個人的には、違うタイプの、しかもいずれもクオリティの高いネタを披露した、かまいたちかと思ったが、ミルクボーイに7票中6票が入り、まさにシンデレラ的な優勝。
この優勝に勇気をもらった芸人は数多いるだろう。
かまいたちが優勝できなかった残念さはあったが、ミルクボーイの優勝によって感じられた「公平感」は、今後のM-1にもプラスに働くのではないか。
なお、違う年、さらには違う審査員の点数を比べることはあまり意味があることではないとは思うが、今回、最低得点だったニューヨークは616点、続いて低かったインディアンスは632点。
これは、審査員が7人になった、直近2回に比べても高い得点(2018年…594点・606点、2017年…607点、618点)。
さらに、復活前のM-1の点数(審査員が7人となった第2回以降)を見ると、500点台の芸人が3~4人はいるなど、今よりだいぶ全体の点数は低い。
もちろん、初期の頃の張りつめた雰囲気といった要素もあるが、決勝進出者を見たときに、審査員(「決勝の審査員」ではなく、メンバーが公表されていない「準決勝→決勝」の審査員)の、「面白さ」より「こいつら、アホなことやってんなあ」ということを重視しするきらいのある審査傾向、また、「事務所として推したい」思惑が見え隠れする選出が、決勝の割には、ウケない芸人が頻発する原因だったのではないかと思う。
その意味では、決勝進出までの審査経緯を「順位発表」という形でクリアにした「THE MANZAI」を経て、復活後のM-1は、かなり「面白さ」に準じた審査傾向になったように思う。
「これまでで一番面白い大会」という評価も多い今大会だったが、つまるところ、それは「これまでで一番、準決勝から決勝進出者を決める審査員の「眼」が秀でた」大会だったと言えるかもしれない。
来年以降も、その年のM-1グランプリが、「これまでで一番面白い大会」になってほしい。
お笑いファンとして、そう強く思う。
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お笑い芸人で、プロ野球チームを作ってみる。
http://agemomi2.exblog.jp/29671925/
2018-08-05T17:43:00+09:00
2018-08-05T23:11:27+09:00
2018-08-05T17:43:20+09:00
momiageculture
お笑い
スポーツをメインに書いているもう一つのブログですでにアップした記事でもあるのですが、今回はチャレンジングなテーマで。
テーマは、ズバリ「お笑い芸人で、プロ野球チームを作ってみる」(^^)。
ちなみに、野球の上手い芸人(最近だったら、360°モンキーズの杉浦。それこそ、昔だったらポップコーン(懐かしい…))で野球チームを作るというわけではありません。
生み出す笑いの量や質、また他の芸人との絡みで生み出す笑いなどを、野球の能力にたとえたときに、果たしてどんなラインナップが一番笑いを生み出すかを考える、という、かなり無謀な企画。
野球があまりわからない方には「?」な記事かもしれませんが、野球・お笑いどちらも好きという方には、「自分ならこうするなあ」と思いながら読んでいただければと思います。
なお、チーム編成は、野手15人(先発9・控え6)、投手10人(先発5・ブルペン5)、そして首脳陣5人(監督1・コーチ4)の計30人で考えていきます。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
まずは、スタメン野手の9人(指名打者制)。
1(中)バイキング小峠
2(左)銀シャリ橋本
3(二)ナイツ
4(三)アンタッチャブル
5(指)柳家喬太郎
6(遊)和 牛
7(一)ハライチ澤部
8(捕)陣内智則
9(右)チョコレートプラネット
まず一番には、どんな状況でも、フレーズ一発で笑いをとれ、かつ安定感のある、バイキング小峠。『有田ジェネレーション』での、粗削りな若手を引き上げる力などを見ていると、実は単なるイジられキャラではなく、場をリードする力も持っている。
続く二番には、漫才だけでなく、バラエティ番組でのツッコミコメントでも力を見せ始めている、銀シャリ橋本。
クリーンアップ一番手は、ナイツ。従来の言い間違い漫才での安定感はもとより、最近は、どんなに好き勝手なパターンの漫才をやっても笑いがとれる、ほぼ“無双”状態に入りつつある。
実は一番最後まで迷ったのが、四番。他の芸人とのバランスを考えると、なかなか収まりがいい芸人が見つからなかった。
そんななか。最終的に四番に据えたのが、アンタッチャブル。コンビでの活動をしなくなってから8年が経つが、やはり、漫才内での笑いの連続度は、芸人のなかでトップクラス。しかも、予備知識がないとわからないネタではなく、ごくごく平易なテーマで、かつ爆笑をかっさらうところが凄い。コンビでの活動を再開するようであれば、文句なく四番打者。
五番には、他の芸人とは毛色が全く違うが、落語家の柳家喬太郎を。日頃から落語を熱心に見ているわけではないが、この人のとぼけ加減は最高。実際に何度か生で見たこともあるが、三人会で、他の噺家がまくらで柳家喬太郎が太っている話をしている最中に、ビール腹を見せながら登場し、その噺家の後ろを横切って、また袖に消えていったときには度肝を抜かれた。一方で、ただ笑かすだけでなく、見ている側をホロリとさせる新作も持っている。「落語を見たことが無い」という人にはぜひ一度は見てほしい落語家。ただし、体形的にとても守れそうにないので、指名打者に。
六番には、漫才の完成度を究極まで高めつつある、和牛。幅広い年齢層を笑わすことができるという意味で、守備位置はショートに。現在の実力からするとクリーンアップを打ってもおかしくないので、三番を和牛にして、代わりにナイツを六番に下げて、もう少し好きに打ってもらうという打順もありかもしれない。
七番には、ハライチ澤部。ファーストにしたのは、ネタでの役割的に、ボケ側のどんな逸れた送球でも拾ってくれそうだから(^^)。
八番には、キャッチャーで、陣内智則。キャッチャーというと司令塔的な役割が求められがちだが、ここでは、ネタ番組のMC的な立場になることも多い最近の出演状況から、「各芸人の活躍を見守る」バランサーとしての役割を期待してのキャッチャー起用。
九番は、松尾のIKKOのものまねで、ようやくブレイクを果たしたチョコレートプラネット。キャラ芸人のように思われがちだが、これまで披露してきたコントのレベルはおしなべて高く、しかも、自作の小道具も相まってバリエーションも豊富。将来的には、十分、主軸を打てる存在。
控えの野手は、あとで紹介するとして、続いて投手。
〔先発1〕アンジャッシュ
〔先発2〕東京03
〔先発3〕シソンヌ
〔先発4〕柳原可奈子
〔先発5〕四千頭身
〔中継ぎ〕スピードワゴン
〔中継ぎ〕チュートリアル
〔ワンポイント〕イワイガワ
〔セットアッパー〕タカアンドトシ
〔抑え〕サンドウイッチマン
先発1番手は、アンジャッシュ。ここ数年はピンでの活動が目立っているが、コントの安定度は、いまだ健在。一年通してエースとして活躍してもらい、できれば15勝ぐらいはしてほしいところ。
2番手は、東京03。こちらも、非常に安定度の高いネタを持つ3人。アンジャッシュとの2組がいることで、どちらかで必ず勝ちが計算でき、チームとして連敗をしない形に持っていきたい。
3番手は、シソンヌ。万人受けという部分ではアンジャッシュ・東京03より下がるかもしれないが、キャラへの憑依具合、掛け合いのテンポなどは、芸人のなかではトップレベル。相手打線(観客?)をペースに引き込むことができれば、こちらも二桁勝利は計算できる。
4番手は、今回のメンバーのなかでは、唯一の女性メンバーとなった柳原可奈子。最近はナレーションやコメンテーターの仕事が増え、ネタを見る機会はかなり少なくなったが、時折見るネタは、今でも完成度は高い。最近は、ロバート秋山の憑依ネタが注目を浴びているが、素人を題材にした憑依テイストのネタという意味では、ある種、はしりはこの人と言えるかもしれない。毎回7イニングを投げるのは難しいかもしれないが、5~6イニングであれば、十分任せられると思う。
5番手は、若手育成枠。四千頭身のネタは、まだ数多くを見たわけではないが、中央に位置する後藤の「まれに見る“昔の高校球児顔”」とボソボソとしたツッコミは、初めてみたとき、強烈なインパクトだった。3人ともまだ21歳という本当の若手コンビだが、将来への期待値も込めて、先発に抜擢。
ブルペン陣は、まず抑えから。「やはり、抑えは重要」ということで、ラインナップからするとトリといってもいい、サンドウィッチマンを。この起用で、ブルペン陣の安定度はぐっと増すはず。
セットアッパーには、同じく安定度を考え、タカアンドトシを。30代前半の頃の勢いは無いかもしれないが、掛け合いから生み出す笑いの確率はまだまだ高い。最近の野球界のセットアッパーは、どちらかというとボールの勢いを武器にするタイプが多いが、このチームでは安定度をとった。
中継ぎには、スピードワゴン。メインを張ることは少ないが、小沢が独自の色を持つ一方で、井戸田も意外と起用にその場その場での役回りをこなす。ビハインドの状況など試合展開が苦しいときも含め、イニングを任せたい芸人。
もう一つの中継ぎ枠は、チュートリアル。最初は徳井単独での起用を考えたが、単体で笑いを生み出すというより、他の芸人をいじることで笑いを生み出すタイプ(ex. フットボールアワーの後藤や、『球辞苑』での塙に対してのコメント)なので、コンビでの起用とした。最近はテレビでネタを披露する機会は減ったが、それでも時折『ENNGEIグランドスラム』などで見せるネタの切り口は、チュートリアルというか、徳井にしかできない発想のものが多い。キャリアや実力を考えると、単なる中継ぎというより、セットアッパーの前の大事な7回を任せたいところ。
ワンポイントは、テレビに出始めた頃から若手なのか中堅なのかわからなかった、イワイガワ。この枠はアキラ100%も考えたが、岩井ジョニ男の、長尺は持たないかもしれないがある種の安定性(^^)を買って、起用。
ここで、再び野手に戻って、控え陣を。
〔捕手〕博多華丸
〔内野〕パンクブーブー
〔内野〕うしろシティ
〔外野〕ジェラードン
〔外野〕ガリットチュウ福島
〔内・外野〕タイムマシーン3号
捕手の控えには、博多華丸。こちらも、陣内と同じく、「司令塔」というより、チームの雰囲気を和ませる意味合いが強い起用。一方、打者としても、豊富なものまね(ただし、若干マニアック)のレパートリーなど、安打も期待できる。
内野として入れたパンクブーブーは、実力は確かながら、華がない(^^)ため、控えに。
阿諏訪が『得する人損する人』での「サイゲン大介」としてプチブレイクするなど、単体での露出は増えたが、ネタに関してはまだ持っている実力を開花しきれていない、うしろシティは、期待を込めてベンチ入り。
外野は、飛び道具的な2組。コントでの強烈なキャラが印象に残るジェラードンは、今後伸びてくるであろう若手の最右翼といってもいい。同じくトリオ、かつキャラの強いコントで頭角を現してきているネルソンズとどちらにするか迷ったが、こちらを選んだ。
「そろそろ怒られそうな(?)ものまね」で露出が増えているガリットチュウ福島は、そのものまね歴のキャリアの長さを考えると、代打の切り札として起用したい。
漫才もコントも起用にこなす(ただし、起用すぎて、逆にいまいちブレイクできていない?)タイムマシ―ン3号は、内外野どこでも守れるプレーヤーとしてベンチ入り。
さて、最後に、アクの強いプレーヤー(芸人)を指揮・指導する首脳陣を。
〔監督〕くりぃむしちゅー有田
〔ヘッドコーチ〕バナナマン設楽
〔打撃コーチ〕今田耕司
〔守備・走塁コーチ〕博多大吉
〔トレーニングコーチ〕バカリズム
監督には、自身がMCを務める番組で若手芸人と絡む機会も多い、くりぃむ有田。若手のよさを引き出す「眼」を持っている一方、時折抜けた面も見せるところが、チームの雰囲気をよくするのではと思い、監督に起用した。
そうした有田が時折見せる隙を埋めるのが、ヘッドコーチの設楽。芸人を俯瞰で見る能力に長けており、“影の監督”という立ち位置になるかもしれない。
打撃コーチには、『レッドカーペット』などのネタ番組で、必ず各組に対するフォローコメント(しかも的確)をする、今田耕司。「ここの部分を、さらにこう伸ばしていくといいのでは」という、プラスの視点でのアドバイスを期待。
もう一翼の守備・走塁コーチには、最近、ネタの審査を担う機会も出てきた、博多大吉。こちらは、今田とは逆に、現状で気になるポイントや欠点に対してのアドバイスを。ここ数年で一気に出演が増えた自身の経験から、ネタだけでなく、バラエティでの立ち振る舞い方についても、有用なアドバイスをしてくれそう。
そして、トレーニングコーチには、バカリズム。最近はずいぶん番組でも笑うようになったが、以前は人のネタを見ても、めったなことでは笑わなかった。ここでは、そのかつての厳しさを復活させ、芸人たちが妥協しそうになりそうな部分を締めてほしい(^^)。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今回のラインナップを選ぶにあたって、大物芸人は、原則入れないようにしました。
また、上記の他にも起用したい芸人はいましたが、うまくはまるポジションがないなどの理由で、選外に(ex. みやぞん(先発5番手の候補)、ドランドラゴン塚地(『LIFE』などコントでの抜群の安定性を買っての中継ぎ起用も)、日本エレキテル連合(以前からネタを見ている人は「ダメヨダメダメ」だけの芸人ではないことをわかっているはず)。その他、オードリー、石田靖、NON STYLE石田 etc)。
なお、もう一つのブログのアップ時には書きませんでしたが、現代の野球では、現場と別に重要なポジションであるGM(ゼネラルマネージャー)も追加でセレクト。
「水曜日のダウンタウン」「クイズ☆タレント名鑑」など、唯一無二の番組をつくっている藤井健太郎氏(TBS)も候補に考えたのですが、ちょっと脱線し過ぎてしまう可能性もあるので、ここは、まさかの長寿番組になった「ゴッドタン」の佐久間宣行氏(テレビ東京)にお願いしたいと思います(^^)。
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今年も1年、ありがとうございました。
http://agemomi2.exblog.jp/28857248/
2017-12-31T23:27:00+09:00
2017-12-31T23:27:08+09:00
2017-12-31T23:27:08+09:00
momiageculture
未分類
今年は、わずか一度しか更新できなかった拙ブログですが、来年こそは、もう少し更新を(^^)。
お笑いに関しては、正直なところ、最近、「ネタ」というものに飽きを感じてるところもあり、2018年は、また新たなお笑いの楽しみを見つけていきたいなという思いもあります。
音楽も、また「これは!」と思うアーティストに出会いたいですね。
また、来年もよろしくお願い致します。
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M-1グランプリ 2017 -漫才の評価の難しさを感じた大会-
http://agemomi2.exblog.jp/28483665/
2017-12-06T01:52:00+09:00
2018-12-04T00:56:32+09:00
2017-12-06T01:52:46+09:00
momiageculture
お笑い
もう一つのブログは更新していたのですが、自身の環境が変わったこともあり、こちらのブログはなかなか更新できず(書くつもりだった「真田丸」のレビューも完全に書き損ねてしまいました…)。
せめて、このブログを始めてからずっと書いている、M-1(THE MANZAI)レビューだけはということで、今年のM-1の、個人的な振り返りを。
【敗者復活戦】
今回は20組が出場。
今回初めて投票してみたのだが、自分が入れたのは、囲碁将棋、笑撃戦隊、三四郎。
囲碁将棋のネタは、正直、自分たちの好きなフィールドへの持っていき方が強引すぎるため、これまであまり好きではなかった。だが、今回は、テーマへの持っていき方が自然かつシンプルで面白いネタだったと思う。
笑撃戦隊は、以前よくやっていた逆クイズネタのような、変わったフォーマットへのはめ込みで笑いをとるネタ。このあたりのセレクトにはセンスを感じるし、ネタ中の柴田の表情の作り方も上手い。あとは、ネタのなかで、もう2つぐらい、さらに盛り上がる展開が欲しいところ。
三四郎は、本人たちのキャラクターを見る側が知っている前提でのネタだったが、ボケに加え小宮のツッコミフレーズでも笑いがとれるのが強い。以前より、小宮の滑舌いじりに頼らないところを評価した。
その他のコンビでは、期待のランジャタイは、いくらなんでも、ちょっとエキセントリック過ぎという印象。Aマッソも、最近は、以前に比べて面白くなくなっている、というのが正直な感想。天竺鼠は、うまく会場の観客の気持ちをつかんだような気もしたが、二歩届かず…。
結果、勝ち上がったのは、スーパーマラドーナ。
なお、スーパーマラドーナに入れなかったのは、「スーパーマラドーナの実力なら、もっと隙の無いネタを作ってほしかった」という思いから。ただ、ネタ中のバリエーションの多さを考えると、決勝に行って互角に戦えるのはスーパーマラドーナかなという思いもあった。
【決勝・1回戦】 ※数字は個人的点数
(ゆにばーす) 91点
今回は、直前での順番決定。ということで、ある意味、トップバッターの不利感は、そこまで無かったのではないか。以前は、はらのインパクトに頼るところが多かった、ゆにばーすだが、やりとりを使っての笑いの割合がかなり増えたように思う。「ゴッドタン」で川瀬名人の素性(?)が暴かれ始めているが、ツッコミにかなり感情が乗るようになってきた印象。松本人志が指摘していたように、かなり「笑ってくれる」観客(にしては、斎藤さんはかなり滑っていたが(^^))だったこともあってか、会場の笑いも結構とっていたように感じた。
(カミナリ) 86点
以前よりは、少し展開の仕方を変えてきたが、「まなぶの理論の盲点を、たくみが突く」というフォーマットは変わらず。もちろん、それがカミナリの持ち味でもあるのだが、M-1で上位を目指すのであれば、もう2ひねりは欲しい。前日の「IPPONグランプリ」では大喜利力も見せた、たくみさんの今後の発想に期待。
(とろサーモン) 91点
15年目にして、ようやく決勝出場。正直、ここまで決勝に来ておかしくない年は何回もあった。決勝で全くウケずに終わるコンビも少なくないなか、「なぜ選ばれないのか」と思う芸人の最右翼といってもいい存在だった。一方で、2008年、2009年あたりですでに決勝に残ってもおかしくない漫才をやっていたことを考えると、ピークは過ぎているかもしれないという思いもあった。しかし、その力は錆びついてはいなかった。ただ、見終わって「とろサーモンなら、もっと面白い漫才ができるはずだ」という思いも残った。
(スーパーマラドーナ) 92点
敗者復活では、2位に大差をつけての決勝進出となったが、もう一つ食い足らない感もあった。決勝では、田中の場を読まない感を、ネタの最初から出してくるネタ。それがハマった。ジャイアンキャラの武智と、のび太キャラの田中のコンビだが、その関係性をストレートに出すだけだと、笑い的には限界がある。そこで、田中の醸し出す「失礼感」を前面に出すことで、爆発的な笑いを生む可能性が出てくる。欲を言えば、武智がさらに田中に振り回されている感じが出ると、もっと面白い気もするが、小さい伏線回収も含め、「隙」がほとんど無いネタだったという部分で、全組の最高得点に。
(かまいたち) 89点
怪談話がテーマだが、後半、畳みかけていくところなど、笑いの上昇曲線をうまく考えたネタ。ただ、「悪くはないけれど、3組には残れなかった」という結果に。強いて言えば、前半の笑わせ量の少なさと、テンポが早かったせいか、セリフとセリフの間に空白がほとんど無かったところか。いずれにせよ、平場のコメントも含め、山内の人を食った感じは、徐々に浸透しつつある感も。にゃんこスターに惑わされることなく(^^)、さらにネタを洗練し続けていってほしい。
(マヂカルラブリー) 78点
今大会、「ネタの面白さ」という部分では、唯一、大爆死したコンビ。
随分前から準決勝に上がってきているコンビだけに、「ようやく、そこからの上積みが…」と期待して見たが、審査員・観客の反応と同様、面白くなかった(^^)。野田が以前より顔がふっくらしたせいもあってか、野田の奇抜さが悪い意味で消えてしまっているようにも思った。もともとマヂカルラブリーを知っている人が観客の場合は、また違うのかもしれないが、初見であのネタでは、マヂカルラブリーの良さは伝わらない。上沼恵美子とのバトル(?)は思わぬ副産物だったかもしれないが、ネタの途中の時点で展開が広がらないことがわかってしまったのは致命的だった。
(さや香) 88点
初見のコンビ。ネタは「うたのおにいさん」への過剰反応。テーマが誰でも知っているものということもあって、比較的入りやすいネタ。ゆえに、そこからどう笑いに持っていけるかは技量が求められるが、“自然な感じ”の勢いで、大きな笑いに転化していった。審査員の点数が見事にみんな「90点」だった(^^)のが、今回のM-1での評価を表していたが、今後に期待を持たせるパフォーマンスだった。
(ミキ) 90点
兄弟による、怒涛のしゃべくり漫才。テレビでは、昨年から急激に露出が増え始めた印象だが、早くも優勝候補に名前が上がるほどの評価も得ている。その評価に違わぬ勢いで、ネタ時間をフルスピードで突っ走った。「漢字」というわかりやすいテーマもハマった。ただ、ミキのネタを見ていて思うのは、ちょっと、昴生がキレるタイミングが早すぎるのではないか、ということ。ネタ中のほとんどの時間、フルスロットルで漫才できるのがミキの強みではあるが、必然性があって、昴生が「キレる」モードに入るというより、フルスロットル状態に入るがために「キレる」モードに移行している感は拭えない。「作った」ネタを、「作った」ように見せない技は見事だが、そこに、本当の感情が乗ってくると、さらに面白さが倍加するようにも思う。
(和牛) 90点
前評判では、今大会の優勝候補。ただ、予選を見た人のなかでは、必ずしも、その前評判どおりの出来ではなかったという声もあった。実際、ウェディングプランナーネタで挑んだ決勝の本戦。前半は「おいおい、大丈夫か」とも思った。ただ、そこからの伏線回収は見事。川西の演技力も相変わらず高いし、水田のとぼけ加減も絶妙。ただ、審査員からのコメントにもあったように、やはり前半での笑いの少なさは気になってしまった。もちろん、最後まで見れば最高のネタではあったのだが。
(ジャルジャル) 92点
正直、ジャルジャルのネタは当たり外れが大きい印象。今回のネタは、個人的には「大当たり」だった。ジャルジャルの場合、「新しい試みをやる」という部分が「笑い」を超えないことも間々ある。今回も、正直、ネタの最初の方は不安を感じた。創作ゲームという設定の「強引さ」が、「笑い」よりも勝ってしまうのではないか。ただ、その予想を遥かに超えた構成。「ポンピーン」を最後の最後まで出さなかったところが、このネタの勝利の要因だろう。ただ、審査員の得点は予想通り割れた。博多大吉が言っていたように、確かに、もう少し裏切る展開があってもよかったのかもしれないが、それでも、あれだけのネタを作って最終決戦に残れないのは酷だなと思った。
【決勝・最終決戦】
(とろサーモン)
つかみは、肩がぶつかったときの対応。そこでのボケが面白かっただけに、そこから、全く話題を変えて、本ネタであろう「石焼きいも」にすぐ移行したのは、「ちょっともったいなあ」と感じた。ただ、その後、神様のくだり含め、久保田のキャラ憑依がウケた。それは、目に見える技ではないものの、村田のツッコミのタイミングの良さがあるからこそでもあるのだが。
(ミキ)
スター・ウォーズと、暴れん坊将軍のテーマが、メインとなるネタ。1本目に続き、コンビネーションもよく、ノンストップ漫才が炸裂。ただ、ちょっと気になったのは、「暴れん坊将軍」が、今の20代前半以下だと、わからなくなってくるのではないかということ。昴生・31歳、亜生・29歳ということなので、現在のお笑いのなかでは若手であるミキだが、こうしたテレビネタの切り替え時期は、結構敏感にならなければいけない部分だと思う。テレビで観ている限りでは、結構観客にはウケていたように思ったが、果たして審査員の評価は?
(和牛)
昨年の「彼女」ネタとは、人物が違うが、「旅館の女将」という、これまた川西の女性役の巧さが映えるネタ。そこに、水田の相変わらずの、とぼけウザキャラ(^^)。1本目とは違い、ネタの最初から笑いの取れるネタで、最後までの構成も完璧。少し格好よく言えば、ディスコミュニケーションがテーマのネタだが、2人の間に完璧なコミュニケーションが成立してるからこそ、そのディスコミュニケーションぶりが引き立つネタ。
3組を見て、自分は、和牛が優勝だと思った。ただ、審査員が迷っている姿を見ると、もしかしたらミキもあるのか?とも思った。
いざ、投票結果がオープンされ、出てきた名前は、和牛→とろサーモン→とろサーモン→とろサーモン→とろサーモン→和牛→和牛。
もしかしたら、本人たちが一番びっくりしたであろう、とろサーモンの優勝に…。
優勝が決まった瞬間、村田の「何が起きたんだ?」とでもいうような、優勝という現実をすぐに受け入れられないような表情。そして、優勝トロフィーがとろサーモンに渡されているときの、水田の悔しそうな表情が印象に残った。
これまで、第1回をのぞくと、最終決戦の優勝者は、ほぼ自分の思った芸人と同じだったが(2008・2010年・2015年あたりは僅差で迷ったが)、今回は違った。それほどまでに、和牛の最終決戦の出来は素晴らしいと思った。
ただ、優勝決定後、コメントを求められた渡辺正行の涙が、今回のM-1のすべてを表しているように思った。
今まで、数えきれないほど苦渋を舐め続けてきた、とろサーモン。決勝進出者のなかに、必ずといっていいほど「なぜ、この組を決勝に上げたんだろう」という組がいた復活前のM-1時代に、とろサーモンを決勝に上げるべきだったという思いは今も残る。
それでも、「こうした日が来るんだなあ」と思わせてくれた大会だった。
なお、上記にも挙げたが、1本目につけた個人的採点は、下記のとおり。
1位 92点 ジャルジャル
1位 92点 スーパーマラドーナ
3位 91点 とろサーモン
3位 91点 ゆにばーす
5位 90点 和牛
5位 90点 ミキ
7位 89点 かまいたち
8位 88点 さや香
9位 86点 カミナリ
10位 78点 マヂカルラブリー
久々に点数をつけてみて、改めて点数のつけ方の難しさを実感した。
10組すべて見ての点数づけだと、また違ってくるが、各組のネタ終了後すぐ採点をするとなると、かなり自分のなかで、明確な採点基準を持っておかないと、自分が面白いと思った感覚と実際の点数が異なってくるということも起き得る。
自分の場合、トップバッターのゆにばーすは、基準点が無い状態でつけたということもあり、和牛よりも上の得点になった。最近、立て続けにゴッドタンで川瀬名人を見た影響が無いとも言えない(^^)が、和牛にあまり高い点をつけなかったのは、和牛への期待値が高かったがゆえ、という部分もあった。そうした“期待値”というのは、見る人と対象となる芸人の数だけ存在し、それぞれ異なる。また、各組が競ったときに差をつけるポイントをどこに置くかというのも、見る人によって違う。博多大吉は、最終決戦で、とろサーモンに投票した理由を、「つかみが一番早かった」と、明確に語ってくれた。
今回のM-1。「和牛、あまりに残念」と「とろサーモン、おめでとう」という感情が交差する大会。そして、漫才を評価することの難しさを改めて感じた大会だった。
〔※「M-1グランプリ」/「THE MANZAI」 過去記事〕
○M-1グランプリ 2016(1、2)
○M-1グランプリ 2015(1、2)●THE MANZAI 2014
●THE MANZAI 2013
●THE MANZAI 2012
●THE MANZAI 2011
○M-1グランプリ 2010
○M-1グランプリ 2009(1、2、3)
○M-1グランプリ 2008(1、2)
○M-1グランプリ 2007(1、2、3)
○M-1グランプリ 2006(1、2)
○M-1グランプリ 2005(1、2)
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BOOM BOOM SATELLITES の10曲
http://agemomi2.exblog.jp/26276939/
2016-12-30T03:32:00+09:00
2017-03-06T21:49:47+09:00
2016-12-30T03:32:43+09:00
momiageculture
音楽
デジタル・ロックの雄とも言うべきバンドだが、そのキャリアは川島の脳腫瘍との戦いでもあった。
昔から聴いていたバンドではあるが、実は昨年初めてそのライブを観に行った(EX THEATER ROPPONGI)。友達に誘われてのライブだったが、「これが最後かもしれない」ということで、わざわざアイルランドから日本に観に来た友達の知り合いの人も一緒になって観た。
病気から復帰したばかりの身でのライブということもあってか、緊張感のある始まりだったが、BOOM BOOM SATELLITESのこれまでのアルバムの中でも一番の傑作といっていい『SHINE LIKE A BILLION SUNS』の曲を軸に、川島氏の歌声が会場に響く。
曲調のせいもあって、初期の荒々しい感じとは違い、一曲一曲かみしめるように歌っていたのが印象的だった。
ただし、迎えたラストの「KICK IT OUT」は、会場の感情が爆発したようなお祭り騒ぎ(^^)。アンコールでは「DIVE FOR YOU」。そして、サポートドラマーの福田洋子氏の叩きっぷりが素晴らしい「BACK ON MY FEET」も。さらに、アンコール2回目では、4人のポールダンサーがアクロバッティック過ぎる動きを披露し、まるでショーのような光景。
最後、川島氏の、あまり動きはないながら嬉しそうな表情が印象的だった。
その後、5度目の脳腫瘍を発症。最後の力を絞り出すような作業で、BOOM BOOM SATELLITESの最後の作品となる「LAY YOUR HANDS ON ME」を完成させ、その活動の幕を閉じた。
なお、病気云々だけで、このバンドを語るのは逆に失礼にあたると思うので、音楽という観点に絞って、個人的な感想を書きたいと思う。
デビューから20年ものキャリアを積んできたBOOM BOOM SATELLITESだが、初期の頃は、光る曲はあるものの、アルバム通してすべて良曲というところまでは言い切れなかった(個人的にアンビバレント過ぎる曲が凄く好きというわけではないこともあるが)。
アルバムとしての完成度をぐっと上がったのは、6thアルバムの『EXPOSED』あたりからではないかと思う。
そして、前述したが、フルアルバムとして最後の作品となった『SHINE LIKE A BILLION SUNS』は、完全なる世界観を作り上げたアルバムとなった。
こうした言い方が正しいかわからないが、自身の生きる時間と向き合っている人の力というのは、こんなにも強いものなのかと思った。
そうした、数多ある日本のバンドのなかでも稀有な存在であったBOOM BOOM SATELLITESについて、これまで、the band apart、フジファブリック、サカナクションについて書いた時と同じく、個人的に挙げてみたい10曲を選んでみた(順番はリリース順、括弧内は収録アルバム)。
1. 「Scatterin' Monkey」 (1th 『OUT LOUD』)
映画「ピンポン」でも使われたことで知られている曲。リリースから18年経っているのに、今聴いても、ほとんど古さを感じられないのが凄い。1分40秒あたりでのリスタートっぽい曲調の変化、3分10秒あたりからの音の抜き具合など、リズムは全編同じながら、各所各所に仕掛けがちりばめられているビックリ箱のような一曲。
2. 「Ride On」 (4th 『FULL OF ELEVATING PLEASURES』)
初期の、うねりのある攻撃的な感じがよく表れている曲。間奏での「叫ぶ合いの手」とでもいう雄叫びは、ベースラインと相まって、この曲の凄みを倍加させている。
3. 「Dive For You」 (4th 『FULL OF ELEVATING PLEASURES』) 【MV】
こちらも攻撃性の高い一曲だが、「Ride On」のうねる感じとは違い、開放的な攻撃性。曲終わりのデジタル・ドラムだけの構成が、BOOM BOOM SATELLITESらしい感じ。夜、高速をドライブするのにピッタリな曲。
4. 「KICK IT OUT」 (5th 『ON』) 【MV】
イントロの引き付け度は、他のアーティストの曲と比べても、最上位に位置するといってもいいかもしれない。BOOM BOOM SATELLITESにとってキラー・チューンとでも言うべき曲。メロディは意外とシンプルながら、各楽器の音が直に伝わる感じが、曲のインパクトを高めている。そして、効果的過ぎる、女性コーラスの使い方。
5. 「SHUT UP AND EXPLODE」 (6th 『EXPOSED』)
曲の速さはミドルテンポながらも、疾走感が重視されている曲。デジタル・ロックの特性もあり、フレーズ繰り返しを使うことの多いBOOM BOOM SATELLITESだが、そのなかでも、これでもかというほど(^^)、サビフレーズ連呼の一曲。こちらも高速ドライブ向き。
6. 「BACK ON MY FEET」 (7th 『TO THE LOVELESS』) 【MV】
オリジナルアルバムからの出典ということで挙げたが、出色なのは、ライブバージョン(ライブアルバム『EXPERIENCED II』に収録)。メンバーではないが、前述したとおり、サポートドラマーの福田洋子氏の叩きっぷりが素晴らしい。
7. 「NINE」 (8th 『EMBRACE』) 【MV】
BOOM BOOM SATELLITESが新しいステージに行ったことを感じさせる曲。穏やかな歌声と、曲から感じとれる解放感は、聴く者に、いろいろな世界を想像させてくれる。疲れたときや悩んだときに聴くのには打ってつけの曲。これだけ優しいデジタル・ロックの曲が作れることに感慨を覚える。
8. 「SHINE」 (9th 『SHINE LIKE A BILLION SUNS』)
最初の歌声が始まった瞬間に、引き込まれる一曲。この完成度の高い世界の曲をもっともっと聴かせてほしかったという思いもあるが…。ピアノのメロディーと歌声のシンクロ度も高い。「NINE」で作った世界をさらに深いところに広げていった印象もある。
9. 「A HUNDRED SUNS」 (9th 『SHINE LIKE A BILLION SUNS』) 【MV】
イントロのメロディーから、声高ではないものの、向かうべき指標を指示しているかのような曲。個人的には「決意」というイメージを抱いた。デジタル・ロックという枠から完全に抜け出たとも言える一曲。
10. 「LAY YOUR HANDS ON ME」 【MV】
BOOM BOOM SATELLITES、最後のリリースとなった曲ではあるが、「希望」を感じさせる一曲に感じた。デビュー時の曲調を考えると、こうした曲を作るとは本人たちも思っていなかったもしれない。音楽の「重み」を感じる曲でもある。
以上、10曲を挙げたが、もちろんその他にも挙げたい曲は何曲もある(その他では、「LOADED」「PILL」「Fogbound-Flit Through-」「ANOTHER PERFECT DAY」「FLUTTER」など)。
デジタル・ロックというジャンルにカテゴライズされるバンドではあるが、その各所各所に人間の感情を見せてくれたバンド、BOOM BOOM SATELLITES。
その残した音楽は消えない。
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今回のM-1は爪痕を残せた、和牛について。
http://agemomi2.exblog.jp/26250621/
2016-12-20T01:34:00+09:00
2023-05-24T22:34:33+09:00
2016-12-20T01:34:09+09:00
momiageculture
お笑い
その後、まだ書きたいことがいくつもあったのだが、今回は、惜しくも準優勝に終わった和牛について。
今大会の和牛は、敗者復活・決勝ファーストラウンド・最終決戦と、3ネタすべてウケた。そして面白かった。
大会後、同業者である他の芸人のコメントを聞いていると、評価の高かったのが、川西のツッコミ。
3ネタとも、コント漫才という形のネタ。そして、川西の役割はすべて女性だったが、一風変わった男子である水田に呆れつつも、なんとかその関係を楽しいものしていこうという、そのけなげさ(?)は、オードリーの若林に「川西さんがネタでやっていた彼女と付き合いたい」とまで言わしめるものだった(^^)。
ちょっと変わったキャラ(水田)との“距離感”の絶妙さが、ツッコミ役としての川西の素晴らしさであるが、同時に、水田が話しているときに「表情の変化でツッコんでいく」という、演技ツッコミのクオリティも相当に高い。
その演技ツッコミ力は、今回のような「彼氏彼女設定」以外のネタ、例えば「がんばっていきましょう」のようなネタなどでも発揮される。
もちろん水田の「かなりの屁理屈キャラなんだけど、なぜか憎めない……とまではいかない(^^)」キャラも面白いのだが、そのやりとりの面白さを倍加させているのは、間違いなく川西のツッコミ。
他の芸人が「ツッコミが素晴らしい」とその実力を激賞するのもわかる。
なお、自分は関東にいるので、全国放送のネタ番組以外でその姿を見ることはあまり無いが(たまたま、家事えもんを生んだ「あのニュースで得する人損する人」に、盛り付け得意芸人として水田が出ているのを見たことはあるが)、5・6年前ぐらいの和牛は、決して才能を感じさせるコンビではなかった(このブログで書いた、6年前のM-1の敗者復活戦のレビューでは、59組のなかで5組しかつけなかった「×」をつけているので、当時は、相当つまらないと感じたのだろう)。
そこから、どうやって、ここまで面白い漫才を作り上げるに至ったのか、その過程には、かなり興味がある(前回も書いたが、少し変わったコント部分への導入など、ネタの構成的にも、だれる時間を作らず隙の無い、素晴らしい構成のネタだった)。
また、彼女彼氏ネタに限ったことになるかもしれないが、多くの漫才が「いかにディスコミュニケーションを生み出すか」というなかで作られているなか、「ディスコミュニケーションになりがちな状況のもとで、なんとかコミュニケーションをとろう」とするという意味で、”コミュニケーション分断の時代に抗う漫才“と言ったら、言い過ぎか(反駁的要素の大きい漫才のなかに、「プラス」のコミュニケーション的要素を盛り込んだのは、おぎやはぎあたりからかもしれない)。
昨年のM-1では、決勝に出演こそしたものの、爪痕を残せたとは言い難かった、和牛。
しかし、今回のM-1では、完全に足跡を残し、一気に知名度も広がったと思う。
さきの水田の「美メシヒーロー」的なテレビ出演も増えるかもしれない。
ただ、その“漫才”の技術は、本当に高い。
川西が「ワイドナショー」で出たい番組として挙げていた「バカ殿」には出演させてあげたいところだが、基本は、末永く、今の「派手さはないかもしれないが、和牛の二人でしかできない」漫才を続けていってほしい。
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