M-1の開催意義を証明した大会
2007年 12月 27日
(9.サンドウィッチマン)
何度も言うが、正直期待していなかった(^^)。
最初の「名前だけでも覚えて帰ってくださいね」で、ちょっと場がなごんだ感じ(でも、このときは、その言葉どおり「名前だけは覚えるだろうな」ぐらいにしか思っていなかった)。
ネタは「街頭アンケート」。
いかにもカタギではなさそうな中年男に、ちょっと人の良さそうな青年(?)がアンケートを頼む設定。
はじめの方は、客の方もどんなコンビかつかみかねている感じで、「ざわっ」という小波程度の笑いだった。
それが、「このアンケートを何で知りましたか?」あたりで「おっ、面白いぞ」という反応に変わっていき、ややこしい血液型の聞き方でさらにその意が強まり「ぴんから兄弟みたいになってんじゃねえかよ……、なってねえよ」で小爆発。次の「やきたてのメロンパン」で完全に会場の気持ちをつかみましたね(^^)。
その後も飄々としたボケと小気味いいキレツッコミを続け、予想を覆す面白さを見せて終了。
結果は、キングコングを1点抑えて、なんと1位!
その評価は審査員の講評に譲るとして(大竹まことだけは84点)、これだけ爆発的な評価を受けたのは、見た目や言動は怖いけどやりとりの節々にいい人っぽさが垣間見えるツッコミ(のちに「伊達」と判明)、見た目は善人っぽいけど飄々とふざけたことを言うボケ(のちに「富澤」と判明)、というお互いのキャラがなんとも魅力的み見えたからではないかと感じた。
その後の今田耕司とのやりとりも、いい流れに乗って会場を引き込んだ感が。
これで残ったのは、サンドウィッチマン、キングコング、トータルテンボスの3組。
正直、誰が優勝するかまったく予想がつかないなか、いざ最終決戦へ。
ネタ順は、トータルテンボス→キングコング→サンドウィッチマン。
(トータルテンボス)
ネタは「さびれた駅前の旅行代理店の店員」。
「○○の仕事の練習やってみたいんだけど……」「じゃあ、おれが協力するよ(^^)」という入りは、ちょっとおぎやはぎを彷彿させる感じ。
相変わらずテンポのいいやりとりを続けるが、強いていえば、やはり藤田のツッコミが若干早い感が。大村の言葉がまだ続いているうちにツッコむ体制に入っている時がちょいちょいあるのが気になった。「修学旅行生と一緒」のくだりのところも、大村の「村岡二中…」を聞き終わらないうちに嫌な顔になっており、ここら辺のタイミングがもう少しバチーンと行くと、もっともっと面白くなると思うのだが。
とはいえ、いろんな仕掛けを随所に散りばめた大村のネタの良さと、喜怒哀楽どれをとっても素晴らしい表情をする藤田のいい人キャラぶりが、うまく盛り込まれたネタだったと思う。
結果はどうであれ、M-1ラストチャンス、本人たちは「やりきった感」が強かったのでは。
(キングコング)
ネタは「台風リポーター」。
1本目と同じく、見ている側に息つく間も与えないハイスピード漫才。
やはり、梶原の軽さと素早さは、このコンビの武器。
面白さ的には若干薄いボケも、このテンポのよさで笑ってしまう(逆に、漫才のテンポ的に、爆発力のあるボケよりもこうした軽いボケの方が合っているとも言える)。
「次は20号でお会いしましょう」「920ヘクトパスカル→もう一声」といったやりとりも面白かった。
考えてみると、これだけ若手芸人がいるにもかかわらず、こうしたスピード漫才をやる芸人はあまり見ない(ほとんど見ないといってもいいかもしれない)。手法としては決して新しいわけではない(それこそ80年代などはB&Bを筆頭に結構いた気が)が、少しテンポが遅れるだけでも命取りの漫才手法だと思うので、それだけ難しいのだと思う。
それをあれだけのハイスピードでやりきるキングコングは、やはり相当の練習量をこなしているのだろう。
(サンドウィッチマン)
1本目1位の優位を生かして、最後に登場。
「名前だけでも覚えて帰ってください」への客の反応も、1本目とは全然違う。
ネタは「ピザの宅配」。
1本目終了後、さんざんネタがないと強調していただけに、「さて、どうなるんだ?」と思ったが、「行くかどうかで迷った」のボケで、その心配は霧散。
よくよく聞いていると、伊達のツッコミは、見かけどおりの「キレる」ツッコミと、呆れたゆえの「テンション下がり気味」ツッコミの2パターンがある。この後者の「弱めのツッコミ」が、実は富澤の「非常識さ」をドーンと引き出しているように思った。
さて、ネタの序盤、ピザの配達という誰にでもわかりやすいシチュエーションはいいと思ったものの、ピザは配達が終わったら帰ってしまうので「この先どう展開するんだ?」と、ちょっと心配に。しかし、ネタは順調に、値段をまけさせる→ピザの種類が違う→ピザの内容を聞く→店長呼んでこいと進み、「なるほど、ちゃんと考えているんだね」と安心した(何分、2本目は面白くないと自分たちで言っていたので(^^))。
ネタ全般を通しても、「おつり20円」「誰のけじめピザだ」「テクニシャン呼んでこい」などなど、ボケ、ツッコミともに油断ならない仕掛けを随所に散りばめ、1本目に劣らない笑いをとる。
ただ、終わった瞬間は、「1.ピザ代支払 」→ 「2.ピザの中身についてのやりとり」に続く3番目の展開も期待しただけに、「もうひと展開ほしかったなあ……。う~ん、もったいない!」と思った。まだこの時は、サンドウィッチマンが優勝するという画が想像できなかったのが正直なところだった。
3組が終わっての自分の感想は、「これは選ぶのは難しい……。トータルテンボスかキングコングのどちらかかなあ~」。
強いて1組に決めるのであれば、なまじ好きなだけにトータルテンボスのあらがちょっと目についたということもあって、若干キングコングが有利かなと思っていました。
で、いよいよ結果発表。
トータルテンボス
↓
キングコング
↓
サンドウィッチマン
↓
トータルテンボス
↓
サンドウィッチマン
↓
サンドウィッチマン
↓
サンドウィッチマン ……
ということで、まさかまさかまさかのサンドウィッチマン優勝!!!
優勝決定の瞬間、大柄な2人が抱き合っている画は感動しましたね。
プロの目から見ると、「漫才の技術として素晴らしかった」ということなのだと思いますが、とにもかくにも素直に「面白かった」、その一言につきるでしょう(そしてわかりやすかった)。
結果として「前評判や知名度に左右されることのない」というM-1の開催意義を改めて証明した大会だったとも言えるでしょう(おととしのブラックマヨネーズ、昨年のチュートリアルも、大会前に優勝すると予想していた人はかなり少なかった)。
自分の予想は違いましたが、大竹まことが言っていたように「すがすがしくて気持ちいい」結末でした。
なお余談ですが、大会後、キングコング西野がブログで「自分のネタがウンコだから負けた」と書いていましたが、さすがに「ウンコ」はそのネタを笑ってくれた人に失礼。自己批判するのであれば、もう少し笑えるたとえの方が漫才師らしいと思います。
大会前は、決勝進出メンバーを見て、本当に「今年で終わるのでは…」と心配した今年のM-1。結果的には、お笑いのコアなファンにも、そして最近お笑いを見始めた人たちにも、漫才の面白さを伝えてくれた大会になってよかったです。
ただ、1つ言わせてもらえれば、決勝に残った9組中、掛け値なしに笑えるのが3組しかいなかったというのは、ちょっと確率的に低い気が。もしかしたら、他の準決敗退組でも、サンドウィッチマンのようなダイヤモンドがいたかもしれず、このあたり、準決勝→決勝の審査方法をもう一度再考してもいいのではと思いますね。