「感動」ではなく「熟考」させられる映画
2006年 04月 04日
正直、映画を観ることは少ないです(^^)。休日に映画を観に行くことはほとんどないですし、レンタル屋でビデオやDVDを借りて観るということもあまりありません(テレビで観ることも)。
ただ、ごくたま~に、単館上映系の映画の宣伝記事などを見て「あっ、観たいかも」と思って、突発的に見に行くことがあります(去年だと「亀も空を飛ぶ」とか「東京原発」など)。
で、今回見たのは「ホテル・ルワンダ」。
ご承知の方も多いと思いますが、当初日本での公開は予定されていなかったものの、「是非日本でも公開を」という署名活動の結果、公開にこぎつけたという映画です。
よくたとえで使われるのは「アフリカ版『シンドラーのリスト』」(ちなみに、僕は「シンドラーのリスト」を観たことがありません(^^)。また、文庫本を買ったのですが、これも途中までしか読んでいない)。
大まかにあらすじを言うと、アフリカのルワンダで1994年に起きた民族抹殺的な大虐殺のさなか、高級ホテルの支配人をしていた一人の人物が約1200人もの命を守ろうとする姿を描いたという映画です(実在の人物をモデルにした、半ノンフィクション的な内容)。
と書くと、正義感に満ち溢れた主人公が、人々の命を守るために奮闘する姿を描いた映画ととらえられるかもしれませんが、そう一言で片付けられる内容でもありません。
まあ興味がある方は、実際に見に行ってください(って宣伝マンか(^^))、というのは冗談ですが、月並みですが「なぜ、民族は殺しあうのだろう?」ということを強く考えさせられる映画でした(ただし、そうした背景について詳しく説明した映画ではないので、その点についてはあしからず)。
〔※ここから先は、ネタバレあり〕
それより何より、80万から100万もの人が、約100日の間に殺されたというとんでもない事実には愕然とします(死者数については記事によって差あり)。12年前を振り返って、確かにニュースで「ルワンダ内戦」という報道を聞いたことはある記憶がありますが、そこまでの悲惨な事態が起こっていたと認識していたかは、かなり危ういものがあります。
虐殺の映像が世界に配信されることで、国際的な助けの手が差し伸べられるだろうと期待する主人公に向かって、テレビクルーのカメラマンが言った「世界の人々はあの映像を見て-“怖いね”と言うだけでディナーを続ける」という言葉は、もしかしたらこの映画が一番訴えたかった「現実」だったかもしれません。
また、映画では、虐殺が起こっているにもかかわらず、「介入はできない」との方針のもと、国連軍が撤退してく様子が描かれていきますが、その中で国連平和維持具の大佐が主人公の立場を理解しているからこそあえて言った「君が信じている西側の超大国は“君らはゴミ”で救う価値がないと思ってる」というセリフも、考えさせられる言葉でした。
もう1点、この映画のよかった点は、悲惨なシーンを極力抑えているところでした。パンフレットで、製作者が「これはホラー作品ではない。この映画をできる限り多くの観客に見てもらうことが大切だと信じている」と語っているように、多数の遺体が転がっている場面が何シーンかあるものの、殺戮シーンや真正面から遺体を映したシーンはあまりなく、ビジュアル的に悲惨さを表現することは極力抑えた印象を受けました。
正直、内戦・虐殺を扱った映画ということで、そうしたシーンが多数出てくるのではと危惧していたのですが(正直、ちょっと疲れていたので、そういったシーンがたくさんあったらキツかった)、その点では、ある程度安定した気持ちで見ることが出来ました(もちろん、数え切れない人々が殺されたという現実は事実として消えないのですが)。
そうした意味では、「興味はあるんだけど、おどろおどろしいシーンがたくさん出てくるのは嫌だな」思っている人でも、見ることができる映画だと思います。
ストーリー的には、最後の主人公と政府軍の将軍とのやりとりがちょっと急すぎてわからない(自分の理解能力不足かもしれませんが(^^))といった部分などもありましたが、全般を通してはムリのない流れだったと思います。
「見た方がいいか?」と聞かれたら、「見た方がいい」と答えます(^^)。
と同時に、見終わって「感動した」「素晴らしい映画だ」と言ってハイ終わり、という性質の映画ではないことも事実でしょう。
映画自体は、ある意味ハッピーエンドで終わりますが、助かった主人公とその家族、ホテル・ルワンダに避難した人々の一方で、その数とは比べ物にならない人が殺されているという事実、さらには、この虐殺では加害者となったフツ族(「ホテル・ルワンダ」のパンフレットによれば、現在は「~族」という言い方は差別を連想させるため、公式の場では使用されていないそうです)を「完全悪者」としていいのかという問題、さらには(よく言われることですが)植民地時代の統治国の責任はどうなのか?(ルワンダの場合はベルギーやドイツ)といったことなど、見終えてからの方が考えるべきことが多い映画だと思います。
※「ホテル・ルワンダ」関連ブログ(1)
※「ホテル・ルワンダ」関連ブログ(2)
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この作品は、一言では語れない作品ですよね。ホアキン・フェニックスの言葉は私もとても重く受け止めました。
あまり多くのスクリーンにかからないのが残念ですが、とても観る意味の大きな作品だと思います。
コメントありがとうございます。僕は映画に疎いのですが、主人公の俳優さんはまさに適役でしたね。
ちょっと映画に触発されて(^^)、アフリカ関連の本を探しにいったのですが、まだまだ書籍は少なかったです(本作の参考になった「ジェノサイドの丘」は置いてありましたが)。
色々な人み観てもらいたいと思いましたが、特に高校生とかにも見てほしいなあとも思いました(押し付けという形ではなく)。
コメントありがとうございます。エンディングの歌詞は「アメリカがアメリカ合衆国なら、何でアフリカはアフリカ合衆国にならないんだ?」「イギリスが連合王国なら、何でアフリカはアフリカ連合王国にならないんだ?」といったものでしたね。「確かにそうだよなあ」と思いましたが、「それは……だから」という要因も現実に存在しているでしょう。そうした所を解きほぐす、あるいは争いといった方に向けないようにする、というのがこれから先求められていくことかもしれませんね。
コメントありがとうございます。僕があの映画を見て思ったのは、ちょっと冷静すぎるかもしれませんが、「まずアフリカをもっと知りたい」ということ。あとは、もしまたこうした類のニュースが起きたときは、その真実に目を向けようとしていこうということでした。もしかしたら観られたかもしれませんが、今回の記事で少し触れた「亀も空を飛ぶ」もいい映画でしたよ(舞台はイラクのある村)。