世界の始まり
2010年 11月 23日
流れていたドラマは『霊能力者 小田霧響子の嘘』。曲は、世界の終わりの『天使と悪魔』。
といっても、もともとこのドラマを見ようと思って見ていたわけではなく、録画していた『やべっちFC』の前番組だった『小田霧~』の最後の部分が、その前の映画放送枠拡大でたまたま入っていただけ。
なのだが、エンディングでの切なさとコミカルさの両方の要素を入れたシーンと、その裏に流れるポップとしか言いようのないメロディ、そしてこれまたポップ過ぎる歌声が合いすぎて、一気に持っていかれた。
実は「世界の終わり」の存在自体は、以前から知っていた。白い服装で男性2人、女性1人、そしてなぜかピエロ1人というメンバー構成、さらにバンド名とは裏腹に曲調はポップ、というところまで認識はしていたのだが、『「世界の終わり」はミッシェルだけだろう』という変なこだわり(?)もあって、あえて聴いていなかった。
が、このエンディングテーマにはやられた。出演者クレジットを画面の下部に流し、曲が始まってもドラマ自体は最後まで続く、という展開のせいもあるが、曲がドラマのいい感じの添え物になっているし、俳優のセリフのバックに流れているという状況にもかかわらず曲も耳に残る、ということで、双方がプラスの影響を与え合っているように感じた。
最近ほとんどドラマを見ないせいもあるが、こうした「ドラマとテーマ曲のいい関係」という構図をあまり見ない。思えば、ミリオンヒット連発だった90年代は、ドラマとテーマ曲の結びつきがすごく濃かった。それこそドラマ自体を見ていなくても、予告CMを何度か見ているだけで、「このドラマ=この曲」という結びつきがインプットされた。
特徴的だったのが、ドラマ『同窓会』とMr.Children の『CROSS ROAD』。正直、キャスティングの地味さ(主演は斉藤由貴と西村和彦)もあってドラマの方は一度も見たことがなかったのだが、予告CMで流れる何とも重い人間模様と『CROSS ROAD』の切ないメロディーが妙に合って、耳に残った。その前にリリースされた『Replay』(ポッキーのCMに使われる)でちょっとブレイクの兆しを見せ始めたミスチルだが、結果この『同窓会』のテーマ曲で想像以上の大ブレイクをすることに。
当時は、ドラマだけでなくバラエティ番組も曲のヒットに大きく影響を与えることがあった。
スピッツがブレイクした『ロビンソン』(実は11thシングル!)は、フジテレビの夕方に放送していた『今田耕司のシブヤ系うらりんご』のテーマ曲になったから売れたといっていいが、毎回エンディングでミュージックビデオ自体を流してくれたのも大きかった(しかも月曜から金曜まで毎日)。
また、深夜番組のエンディング(オープニング)テーマも、今よりもテーマ曲としての意味を持っていたような気がする。
これは「番組のテーマ曲に使われたから売れた」というのとはちょっと違うが、ミッシェルガンエレファントの『バードメン』が『ぷらちなロンドンブーツ』のテーマ曲に使われたときは、「いよいよ売れていくんだなあ…」と感じた記憶がある。
深夜番組は、意外と新しいアーティストを知る機会にもなる。
ザ・ダークネスを知ったのは、テレ東の深夜番組で 「I Believe In A Thing Called Love」がやたら流れていたからだし、moumoonを知ったのは『むちゃぶり!』のエンディングテーマに使われていたことがきっかけだった。深夜番組の場合、内容とテーマ曲の感じが全然違うこともあるが、逆にそのことで印象に残ったりすることもある。
そう考えると、番組の最後に小さい音量で申し訳程度に流される、最近の数多の深夜番組のエンディングテーマは可哀想に感じる。
ヒット曲がドラマやCMのタイアップばかりで批判を受けた時代もあるが、「タイアップ曲」という事自体は別に悪いわけじゃない。
「番組と曲がうまくマッチすれば、想像以上の新しい世界が広がる」。そう思わせてくれた、世界の終わりの『天使と悪魔』だった(ポップ過ぎる曲調とは裏腹に、歌詞は結構深いが)。