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とりあえず有罪。

先週フジテレビでやっていた『それでもボクはやってない』を観ました。
評判に違わぬ力作。特に「痴漢」という事例だからかもしれないですが、「『やってない』ことを証明することがいかに大変か」が話が進めば進むほど見えてくることによって、この映画が言いたかったことが、かなり多くの人に伝わったのではないでしょうか。

話の構成、人物設定、演出など、すべての面でよく出来た映画だと思いましたが、やはり配役の良さが、この映画をさらにリアルなものにしたといえるでしょう。
そのなかでも、一番の配役は主人公演じた加瀬亮ということになるのでしょうが、どうしてもメインではないところに気をとられてしまいがちな自分としては、小日向文世尾美としのりというところに惹かれてしまいました(^^)。
結果的に有罪判決を下した裁判官、主人公からすれば“敵”となる検事、というこの映画でのヒール役ともいえる2人の冷演は、この映画が言いたかったことを伝える効果を見事に倍加させたと思います。

ちなみに、小日向文世を初めて知ったのは、『非・バランス』という映画。この映画では、内向き主人公を励ますオカマ役(準主役)だったのですが、あっけらかんとしたところから弱々しい部分まで、「菊ちゃん」というキャラを見事に演じきっていた姿が印象に残りました(ちなみに、主役の派谷恵美という女優さんもなかなか独特の存在感を出していました(映画自体これが初出演だったとのこと。その後、あまり観る機会はありませんが)。

一方、尾美としのりは、大方の役で視聴者が期待する(?)キャラ(冷徹、神経質、プライド高そう、上からの目線etc)を、今回も演じきっていましたね。昨年末にやっていた「オトコの子育て」(高橋克典主演のテレ朝ドラマ)でのキャラとほぼ丸かぶりだったのがちょっと笑えましたが(「オトコの…」では、すぐ学校にクレームをつける保護者役)。出番の多少を問わず、観る側にその役の印象を強く残す役者さんだと思います。

ところで、実は今回の作品中、この2人以上に気になった人物がいました。
それは、“無罪判決”を出す傾向が強いといわれ、結果的に担当換えとなった(←あくまで憶測)、一人目の裁判官
見事なまでの七・三カット(しかも分け目の額部分は後退(^^))にフレームの小さい丸メガネという風貌。情的なものではなく、あくまで論理的に自身の「裁判理念」として“無罪判決”を出すその存在は、まるで「本物に演技をさせているのでは?」と思わせるほどリアリティがありました。特に、修習生に自身の裁判論をぶるシーンでは、とても俳優が演技しているようには見えず、本物の裁判官のアドバイスにしか聞こえませんでした。
この“異端”ともいえる裁判官のキャラが立っていたからこそ、小日向文世演じる、過去の前例の則った判決を下す“普通”の裁判官による“懲役三月”が強烈なものになったのだと思います。

ちなみに、名前を調べると「正名僕蔵」という俳優さん。プロフィールを見ると、これまでも見たことがあったかもしれないのですが、存在を認識したのが今回が初めてでした。
とにもかくにも、自分のなかで陰のMVPです(ちなみに、この裁判官が裁判論をぶるシーンで、右隅の方にぼやかして小日向文世演じる裁判官が仕事をしているのを映す(あまり強調して映ってはいないが、頭のシルエットでわかる…(^^))ところは、演出の心憎さを感じました)。

話をストーリーに戻すと、今までほとんど知ることのなかった刑事裁判の問題点を知らされるとともに、こんな判決を出すために、司法試験を目指している人たちはみんな、六法読んで、基本書買って、判例読んで、Wスクールで授業受けているのかと思うと、ちょっと寂しい気持ちになりましたね(民事裁判の場合はまた違うでしょうが)。

そう……、裁判員制度ももうすぐ始まるんです。
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by momiageculture | 2008-03-05 02:26 | 映画 | Comments(0)

お笑い・音楽レビューを中心に続いています。細々と更新し、20年目。SPECIAL OTHERS、スカパラ、ゴッドタン、クイズ☆タレント名鑑 etc。/スポーツ系記事はこちら→http://agemomi.exblog.jp/


by もみあげ魔神
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