M-1感想(続き)
2005年 12月 29日
ファイナルラウンドに進めたのは、ブラックマヨネーズ、麒麟、笑い飯。
点数が良かった方から、ネタをやる順番を選べるとのことで、一番点数の高かったブラックマヨネーズは、一般的に有利とされる最後(3番目)を選択。
続く麒麟は1番を選択したので、笑い飯は自動的に2番目となりました。
麒麟が1番を選択したことについては、通常、お笑いコンテストの場合、後ろになればなるほど与える印象が強くなることが多いとはいえ、最初に「ガーン」と審査員に強い印象を与えるという方法もあり得、そうした点では「勝負に出たな」という感じを持ちました。
その麒麟。
最初に川島が唐突に「怖い話」をし始め、観客がちょっと「おやっ」と思ったところで、どさくさまぎれに「麒麟です。」を挟むという裏ワザに。
実はこのとき、ネタの初めに『麒麟です。』と言わなかったので、「もしかしたら、どっかで出すのかな?」と思っては見ていたのですが、さすがにあの出し方には不意を突かれました(観客もドカンと来てた気がします)。
しかし結果的には、そこが笑いのピークで、その後に続く「ファッションショー」ネタは、ちょっと弱く感じました。平坦なボケが多く、しかもググググッと上がっていく感じがなかったために、正直、途中で飽きてしまいました。
ただ、今回の決勝を通して感じたのは、以前に比べて川島の表情が多様になったこと。低音ボイスと飄々した感じがウリの川島ではありますが、長年見てきたことで新鮮さがなくなってきたのも事実。しかし、川島の表情が多様になったことで、よりネタに深みが出てきた印象を持ちました。今回のファイナルのネタは、ちょっと尻つぼみ感がありましたが、今後また、さらなる進化を見せてもらいたいと思います。
さて、続いて笑い飯。
「『ハッピバースデー』の後の『トゥーユー』を言うタイミングがわからん」という、どうでもいい(^^)ネタフリからスタート。
笑い飯の場合、1回のネタの中で2つの題材をやることも多いので、一瞬、「おいおい、どっちかというと、それ2番目に持ってくるテーマじゃないか?(1発目よりさらにしょうもないテーマを持ってくることで、「このネタ、どうやって広げるんだ?」と更なる視聴者の興味を煽るという意味で)」と思いました。裏を返せば「このテーマだけで4分持つのかなあ」という心配がありました。
正直、最初の方は、ありきたりなボケのように感じました。哲夫がいきなりマリリン・モンローをやり出した時も、観客の笑いはそれほど起きなかったように思います。
ただ哲夫が「サン、ハイ」をマリリン・モンローでやり出したところから、久々に見る笑い飯ワールドへ。
最後の部分、ネタの中で歌を全部歌いきるというのは「間伸びする可能性がある」という点でリスクを伴うことだと思うのですが、結局、(最高にヘンチンクリンな)「ハッピバースデー」を歌いきった所はスゴいと思いました。
見終わった後、「果たして、これ『笑い飯ワールド炸裂!』ととるか? それとも、ちょっと勢い任せだったんじゃないかととるのか?」が評価の分かれ目になるように思いました。
そして最後、ブラックマヨネーズ。
正直な所、「初戦で燃焼してしまったんじゃないか」と思って見ていた視聴者は少なくなかったと思います。
そんななか迎えた決勝ネタの始まりは、「街で絡まれることが多いんですよね」→「いざという時のために、格闘技の一つでも習おうと思っているんですよ」という、オーソドックスなフリでした。
でもって、最初の題材は「柔道」。ここで、この日初めて吉田の顔のブツブツをいじります。前回の余韻もあったためか、結構観客の笑いはとったものの、「もしかして、このまま吉田の顔をいじる流れで行くのかなあ(そうだとすると、ちょっと厳しいかもなあ)」と思って見ていました。
しかし、見た目の引用で笑いをとったのはここまで。その後は、空手→相撲→熊(^^)という流れの中での「考えすぎボケ」を繰り出しますが、この考えすぎボケの練り具合が絶妙。というかよくよく分類するとボケではなくて、常識人過ぎるが故のコメントなのですが、それが見事にネタにはまっていました。特に、相撲での「最後に一言添えなあかんケンカってなんやねん!」「何個目かの赤信号で『コイツ、車道に押し出す気はないな』ってバレるわ!」は絶妙でした。
最後は、初戦と同じく「いつも行ってる皮膚科の先生に相談するわ」で締めましたが、テレビで見ていても、「観客も十分満足してのオチ」という感じが伝わってきました。
そして結果は……ブラックマヨネーズ4票、笑い飯3票の僅差で、ブラックマヨネーズが優勝!
(番組途中で、得点が表示されなかったり、前の演者の得点が出たり、とトラブル続きのモニターでしたが、この最後の審査員が入れた票を一枚づつめくる演出はよかったです)
前回も書きましたが、ブラックマヨネーズの優勝が決まって感じたのは、「ガチンコでよかった」という思いでした。
もちろん、見た人によっては「笑い飯(あるいは麒麟)が一番面白かった」と思った人もいると思います。ただ、この日に関しては、ブラックマヨネーズのネタの完成度(+ネタへの引き込ませ度)が一番だったと思いました。
笑い飯に関しては、以前のM-1で見せてくれた「オレの○○(←具体的なボケの名前)取るなあ!」ほどの衝撃は感じることができなかったのが残念でした(まあ、なかなかアレを超えるのは難しいと思いますが…)。
正直、始まる前は、優勝者が抜けたり、出場を見合わせる芸人(スピードワゴン)も出てきていることで、多少物足りなさを感じた今回のM-1でした(それこそ、そろそろコントも出られるようにして、O(お笑いの「オー」)-1とかにしてもいいのではとすら思っていました)。
しかし、今大会を見て、改めて漫才の面白さ(+難しさ)を感じさせらました。
ただ、第1回(中川家優勝)・第2回大会(ますだおかだ優勝)の時とは、若手お笑いをめぐる状況がまったくといっていいほど変わっている現状のなか、M-1は、今後どうなっていくのか?
もしかしたら、来年は劇的な変化があるかもしれませんね。
来年からブラックマヨネーズは東京進出でしょうか。。。あまりテレビ消耗しすぎない事を望みますが、、、、世間がほっとかないだろうなぁ。
笑い飯はもうM1出ないんじゃないかとすら思ってしまいます。それだと逃げたとか言われそうですけど、、、。
笑い飯ですが、まだまだこれから先、面白くなっていく可能性はあると思いますよ。「あの時(第3回)勝っていれば」という見方もあるみたいですが、まだまだ世界を広げていけるでしょう(今後、今までのWボケ手法を更に極めていくのか、それとも新たな手法を出してくるのかという所も要注目ですが)。
M-1については、そろそろコントにも間口を広げてもいいのではとも思っています。もちろん漫才の「勝負している」感もいいのですが、「一番面白い」という理念を考えると、さらに多くの中で一番を決めてもらいたいとも思います。いずれにせよ、来年はさらなる新鋭芸人にも出てきてほしいですね。