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M-1グランプリ 2017 -漫才の評価の難しさを感じた大会-

2017年も12月を迎え、今年初投稿です(^^)。

もう一つのブログは更新していたのですが、自身の環境が変わったこともあり、こちらのブログはなかなか更新できず(書くつもりだった「真田丸」のレビューも完全に書き損ねてしまいました…)。

せめて、このブログを始めてからずっと書いている、M-1(THE MANZAI)レビューだけはということで、今年のM-1の、個人的な振り返りを。


【敗者復活戦】

今回は20組が出場。

今回初めて投票してみたのだが、自分が入れたのは、囲碁将棋笑撃戦隊三四郎
囲碁将棋のネタは、正直、自分たちの好きなフィールドへの持っていき方が強引すぎるため、これまであまり好きではなかった。だが、今回は、テーマへの持っていき方が自然かつシンプルで面白いネタだったと思う。
笑撃戦隊は、以前よくやっていた逆クイズネタのような、変わったフォーマットへのはめ込みで笑いをとるネタ。このあたりのセレクトにはセンスを感じるし、ネタ中の柴田の表情の作り方も上手い。あとは、ネタのなかで、もう2つぐらい、さらに盛り上がる展開が欲しいところ。
三四郎は、本人たちのキャラクターを見る側が知っている前提でのネタだったが、ボケに加え小宮のツッコミフレーズでも笑いがとれるのが強い。以前より、小宮の滑舌いじりに頼らないところを評価した。

その他のコンビでは、期待のランジャタイは、いくらなんでも、ちょっとエキセントリック過ぎという印象。Aマッソも、最近は、以前に比べて面白くなくなっている、というのが正直な感想。天竺鼠は、うまく会場の観客の気持ちをつかんだような気もしたが、二歩届かず…。

結果、勝ち上がったのは、スーパーマラドーナ。
なお、スーパーマラドーナに入れなかったのは、「スーパーマラドーナの実力なら、もっと隙の無いネタを作ってほしかった」という思いから。ただ、ネタ中のバリエーションの多さを考えると、決勝に行って互角に戦えるのはスーパーマラドーナかなという思いもあった。


【決勝・1回戦】 ※数字は個人的点数

ゆにばーす) 91点
今回は、直前での順番決定。ということで、ある意味、トップバッターの不利感は、そこまで無かったのではないか。以前は、はらのインパクトに頼るところが多かった、ゆにばーすだが、やりとりを使っての笑いの割合がかなり増えたように思う。「ゴッドタン」で川瀬名人の素性(?)が暴かれ始めているが、ツッコミにかなり感情が乗るようになってきた印象。松本人志が指摘していたように、かなり「笑ってくれる」観客(にしては、斎藤さんはかなり滑っていたが(^^))だったこともあってか、会場の笑いも結構とっていたように感じた。

カミナリ) 86点
以前よりは、少し展開の仕方を変えてきたが、「まなぶの理論の盲点を、たくみが突く」というフォーマットは変わらず。もちろん、それがカミナリの持ち味でもあるのだが、M-1で上位を目指すのであれば、もう2ひねりは欲しい。前日の「IPPONグランプリ」では大喜利力も見せた、たくみさんの今後の発想に期待。

とろサーモン) 91点
15年目にして、ようやく決勝出場。正直、ここまで決勝に来ておかしくない年は何回もあった。決勝で全くウケずに終わるコンビも少なくないなか、「なぜ選ばれないのか」と思う芸人の最右翼といってもいい存在だった。一方で、2008年2009年あたりですでに決勝に残ってもおかしくない漫才をやっていたことを考えると、ピークは過ぎているかもしれないという思いもあった。しかし、その力は錆びついてはいなかった。ただ、見終わって「とろサーモンなら、もっと面白い漫才ができるはずだ」という思いも残った。

スーパーマラドーナ) 92点
敗者復活では、2位に大差をつけての決勝進出となったが、もう一つ食い足らない感もあった。決勝では、田中の場を読まない感を、ネタの最初から出してくるネタ。それがハマった。ジャイアンキャラの武智と、のび太キャラの田中のコンビだが、その関係性をストレートに出すだけだと、笑い的には限界がある。そこで、田中の醸し出す「失礼感」を前面に出すことで、爆発的な笑いを生む可能性が出てくる。欲を言えば、武智がさらに田中に振り回されている感じが出ると、もっと面白い気もするが、小さい伏線回収も含め、「隙」がほとんど無いネタだったという部分で、全組の最高得点に。

かまいたち) 89点
怪談話がテーマだが、後半、畳みかけていくところなど、笑いの上昇曲線をうまく考えたネタ。ただ、「悪くはないけれど、3組には残れなかった」という結果に。強いて言えば、前半の笑わせ量の少なさと、テンポが早かったせいか、セリフとセリフの間に空白がほとんど無かったところか。いずれにせよ、平場のコメントも含め、山内の人を食った感じは、徐々に浸透しつつある感も。にゃんこスターに惑わされることなく(^^)、さらにネタを洗練し続けていってほしい。

マヂカルラブリー) 78点
今大会、「ネタの面白さ」という部分では、唯一、大爆死したコンビ。
随分前から準決勝に上がってきているコンビだけに、「ようやく、そこからの上積みが…」と期待して見たが、審査員・観客の反応と同様、面白くなかった(^^)。野田が以前より顔がふっくらしたせいもあってか、野田の奇抜さが悪い意味で消えてしまっているようにも思った。もともとマヂカルラブリーを知っている人が観客の場合は、また違うのかもしれないが、初見であのネタでは、マヂカルラブリーの良さは伝わらない。上沼恵美子とのバトル(?)は思わぬ副産物だったかもしれないが、ネタの途中の時点で展開が広がらないことがわかってしまったのは致命的だった。

さや香) 88点
初見のコンビ。ネタは「うたのおにいさん」への過剰反応。テーマが誰でも知っているものということもあって、比較的入りやすいネタ。ゆえに、そこからどう笑いに持っていけるかは技量が求められるが、“自然な感じ”の勢いで、大きな笑いに転化していった。審査員の点数が見事にみんな「90点」だった(^^)のが、今回のM-1での評価を表していたが、今後に期待を持たせるパフォーマンスだった。

ミキ) 90点
兄弟による、怒涛のしゃべくり漫才。テレビでは、昨年から急激に露出が増え始めた印象だが、早くも優勝候補に名前が上がるほどの評価も得ている。その評価に違わぬ勢いで、ネタ時間をフルスピードで突っ走った。「漢字」というわかりやすいテーマもハマった。ただ、ミキのネタを見ていて思うのは、ちょっと、昴生がキレるタイミングが早すぎるのではないか、ということ。ネタ中のほとんどの時間、フルスロットルで漫才できるのがミキの強みではあるが、必然性があって、昴生が「キレる」モードに入るというより、フルスロットル状態に入るがために「キレる」モードに移行している感は拭えない。「作った」ネタを、「作った」ように見せない技は見事だが、そこに、本当の感情が乗ってくると、さらに面白さが倍加するようにも思う。

和牛) 90点
前評判では、今大会の優勝候補。ただ、予選を見た人のなかでは、必ずしも、その前評判どおりの出来ではなかったという声もあった。実際、ウェディングプランナーネタで挑んだ決勝の本戦。前半は「おいおい、大丈夫か」とも思った。ただ、そこからの伏線回収は見事。川西の演技力も相変わらず高いし、水田のとぼけ加減も絶妙。ただ、審査員からのコメントにもあったように、やはり前半での笑いの少なさは気になってしまった。もちろん、最後まで見れば最高のネタではあったのだが。

ジャルジャル) 92点
正直、ジャルジャルのネタは当たり外れが大きい印象。今回のネタは、個人的には「大当たり」だった。ジャルジャルの場合、「新しい試みをやる」という部分が「笑い」を超えないことも間々ある。今回も、正直、ネタの最初の方は不安を感じた。創作ゲームという設定の「強引さ」が、「笑い」よりも勝ってしまうのではないか。ただ、その予想を遥かに超えた構成。「ポンピーン」を最後の最後まで出さなかったところが、このネタの勝利の要因だろう。ただ、審査員の得点は予想通り割れた。博多大吉が言っていたように、確かに、もう少し裏切る展開があってもよかったのかもしれないが、それでも、あれだけのネタを作って最終決戦に残れないのは酷だなと思った。


【決勝・最終決戦】

とろサーモン
つかみは、肩がぶつかったときの対応。そこでのボケが面白かっただけに、そこから、全く話題を変えて、本ネタであろう「石焼きいも」にすぐ移行したのは、「ちょっともったいなあ」と感じた。ただ、その後、神様のくだり含め、久保田のキャラ憑依がウケた。それは、目に見える技ではないものの、村田のツッコミのタイミングの良さがあるからこそでもあるのだが。

ミキ
スター・ウォーズと、暴れん坊将軍のテーマが、メインとなるネタ。1本目に続き、コンビネーションもよく、ノンストップ漫才が炸裂。ただ、ちょっと気になったのは、「暴れん坊将軍」が、今の20代前半以下だと、わからなくなってくるのではないかということ。昴生・31歳、亜生・29歳ということなので、現在のお笑いのなかでは若手であるミキだが、こうしたテレビネタの切り替え時期は、結構敏感にならなければいけない部分だと思う。テレビで観ている限りでは、結構観客にはウケていたように思ったが、果たして審査員の評価は?

和牛
昨年の「彼女」ネタとは、人物が違うが、「旅館の女将」という、これまた川西の女性役の巧さが映えるネタ。そこに、水田の相変わらずの、とぼけウザキャラ(^^)。1本目とは違い、ネタの最初から笑いの取れるネタで、最後までの構成も完璧。少し格好よく言えば、ディスコミュニケーションがテーマのネタだが、2人の間に完璧なコミュニケーションが成立してるからこそ、そのディスコミュニケーションぶりが引き立つネタ。

3組を見て、自分は、和牛が優勝だと思った。ただ、審査員が迷っている姿を見ると、もしかしたらミキもあるのか?とも思った。
いざ、投票結果がオープンされ、出てきた名前は、和牛→とろサーモン→とろサーモン→とろサーモン→とろサーモン→和牛→和牛。
もしかしたら、本人たちが一番びっくりしたであろう、とろサーモンの優勝に…。

優勝が決まった瞬間、村田の「何が起きたんだ?」とでもいうような、優勝という現実をすぐに受け入れられないような表情。そして、優勝トロフィーがとろサーモンに渡されているときの、水田の悔しそうな表情が印象に残った。

これまで、第1回をのぞくと、最終決戦の優勝者は、ほぼ自分の思った芸人と同じだったが(2008・2010年・2015年あたりは僅差で迷ったが)、今回は違った。それほどまでに、和牛の最終決戦の出来は素晴らしいと思った。
ただ、優勝決定後、コメントを求められた渡辺正行の涙が、今回のM-1のすべてを表しているように思った。
今まで、数えきれないほど苦渋を舐め続けてきた、とろサーモン。決勝進出者のなかに、必ずといっていいほど「なぜ、この組を決勝に上げたんだろう」という組がいた復活前のM-1時代に、とろサーモンを決勝に上げるべきだったという思いは今も残る。
それでも、「こうした日が来るんだなあ」と思わせてくれた大会だった。

なお、上記にも挙げたが、1本目につけた個人的採点は、下記のとおり。

 1位 92点 ジャルジャル 
 1位 92点 スーパーマラドーナ
 3位 91点 とろサーモン
 3位 91点 ゆにばーす
 5位 90点 和牛
 5位 90点 ミキ
 7位 89点 かまいたち
 8位 88点 さや香
 9位 86点 カミナリ
 10位 78点 マヂカルラブリー

久々に点数をつけてみて、改めて点数のつけ方の難しさを実感した。
10組すべて見ての点数づけだと、また違ってくるが、各組のネタ終了後すぐ採点をするとなると、かなり自分のなかで、明確な採点基準を持っておかないと、自分が面白いと思った感覚と実際の点数が異なってくるということも起き得る。
自分の場合、トップバッターのゆにばーすは、基準点が無い状態でつけたということもあり、和牛よりも上の得点になった。最近、立て続けにゴッドタンで川瀬名人を見た影響が無いとも言えない(^^)が、和牛にあまり高い点をつけなかったのは、和牛への期待値が高かったがゆえ、という部分もあった。そうした“期待値”というのは、見る人と対象となる芸人の数だけ存在し、それぞれ異なる。また、各組が競ったときに差をつけるポイントをどこに置くかというのも、見る人によって違う。博多大吉は、最終決戦で、とろサーモンに投票した理由を、「つかみが一番早かった」と、明確に語ってくれた。

今回のM-1。「和牛、あまりに残念」と「とろサーモン、おめでとう」という感情が交差する大会。そして、漫才を評価することの難しさを改めて感じた大会だった。


〔※「M-1グランプリ」/「THE MANZAI」 過去記事
○M-1グランプリ 2016(12
○M-1グランプリ 2015(12
THE MANZAI 2014
THE MANZAI 2013
THE MANZAI 2012
THE MANZAI 2011
M-1グランプリ 2010
○M-1グランプリ 2009(
○M-1グランプリ 2008(
○M-1グランプリ 2007(
○M-1グランプリ 2006(
○M-1グランプリ 2005(



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by momiageculture | 2017-12-06 01:52 | お笑い | Comments(0)

お笑い・音楽レビューを中心に続いています。細々と更新し、20年目。SPECIAL OTHERS、スカパラ、ゴッドタン、クイズ☆タレント名鑑 etc。/スポーツ系記事はこちら→http://agemomi.exblog.jp/


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