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お笑いにおける、観客の声出し反応は是か非か

先々週放送された『ENGEIグランドスラム』でも、その事態は起こった。

最近とみに目だつ、ネタ内のセリフへの、観覧客の「おーっ」「へ~え」「えーっ!」という驚き、感心、そして悲鳴の声。(今年初めの記事の最後にも書いたが)

前回、そのことに触れたときは「気にかかる変化」と書いただけで、特に意見は書かなかった。それは、「そうした声をどうとらえたらいいのか」を、まだ自分のなかで整理できなかったから。

お笑いネタが時代とともに変わるのと同じで、観客の反応も時代とともに変わる。
また最近は、事前にスタッフに「なるべく笑うよう」言われているのか、コンテスト系の番組でも、「ネタが面白いかどうかを見る」というよりも、「一緒になって楽しもう」という気持ちで見ている人が多いのかもしれない。
さきの『ENNGEIグランドスラム』などは、番組としてノリを重視していることもあり、そうした雰囲気によって、感情が素直に、感嘆の声として出ている部分もあるだろう。

で、今回、改めて考えてみた。
やはり一番気になるのは、「漫才内のやりとり」に対しての、そうした反応の声。
もちろん、「こう見えても、コイツ○歳なんですよ」という、事実系の話への反応はわかる。ネタをやる側も、そうした反応ありきのセリフといえる。
しかし、漫才内のコントシチュエーションのセリフにも、そうした声が挙がる。「明らかに、フィクションでの話」にもかかわらず。
演じる側としては、あくまで「笑わすためのフィクションの話」前提で話しているのに、そこでのセリフに対し、あたかも「事実を聞いているか」のような反応…。
そのことが、こうした歓声への一番の違和感をもたらしている。

昨年の『M-1グランプリ』では、予想外のところで観客の声出し反応があったコンビが、ネタが終わった後、「客を鍛えなあかん」と言ったそうである。
半分は冗談だろうが、半分は本心だろう。「ネタの流れを寸断される」という部分で、やっている側としても、かなりの戸惑いがあったと思う。
また、観客の側からしても、「お~っ」と言っている観客以外の観客、そしてテレビを見ている視聴者で、「ネタを楽しむ」気持ちにちょっと水を差されたように思う人も多いだろう。
自分は、「お笑いを見る姿勢」云々というよりも、「フィクションと事実の区別」がついていないかのような反応が、ちょっと怖かった
個人的な考えだが、「即反応文化」を生み出しているとも言える、今のネット情報が飛び交う状態は、本質的には、人間の「人間らしさ」をちょっとずつ削っているように思う。

話を、お笑いのことに戻す。
このブログでお笑いレビューを書く際は、基本「面白いお笑いが見られる状況が続くためには、こうなった方がいいのでは」という思いを出発点に、レビューなどを書いている。
なので、ただ、「○○○はつまらない」「○○はけしからん」「○○は神!」「○○最高」といったことだけを書く気は、あまりない。
観客の過剰(とも思える)声出し反応についても同様である。

こうした反応の声は、今後、さらに増えていくかもしれない。ときに、芸人たちが、その影響を無視できないほどに。
ただ、そこで、「黙って!」と怒ったりする対応(まあ、テレビでそうした対応をする芸人はいないとは思うが)からは、笑いは生まれない。
余裕のある芸人なら、「ありがとう!」とか「(相方に対し)みんなもビビってるよ」といったアドリブを入れたりするだろう。
一番いいのは、笑いながら「まあまあ、フィクションですから(^^)」と、一回、場を和ませるやり方かもしれない(「みんな、信じやすいね(^^)」だと、ちょっと反感を買ってしまうか)。

いずれにせよ、ネタが、過剰にこうした声出し反応に影響されるのは、あまりいいことではないだろう。
主導権は、あくまで、演じる側が持つ
そうでないと「お笑い」の価値は下がってしまうと思う。

一方で、「お~っ」という声を挙げてしまう人たちへ。
できれば、その歓声が「ネタを面白くすることに、つながっているのかどうか」を、少し立ち止まって、考えてほしい。


※過去記事「お笑いニュースリテラシー



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by momiageculture | 2016-02-23 00:08 | お笑い | Comments(0)

お笑い・音楽レビューを中心に続いています。細々と更新し、20年目。SPECIAL OTHERS、スカパラ、ゴッドタン、クイズ☆タレント名鑑 etc。/スポーツ系記事はこちら→http://agemomi.exblog.jp/


by もみあげ魔神
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