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『笑けずり』 ~新たな「お笑い」の可能性を感じる番組~

『水曜日のダウンタウン』と『オサレもん』以外、コレといったお笑い番組がなかったこの1~2年(『水曜日の…』は、お笑いというより「バラエティ番組」という感じだが)だったが、ここへ来て抜群に面白いのが、今月中旬からNHK BSで今月から始まった『笑けずり』(金曜 22:00~23:00、再放送 月曜0:20~)。

番組内容は、ほぼ無名の若手芸人9組が、富士山ふもとのペンションに何も知らずに連れてこられて、そこで共同生活。ただし、毎クール、ネタ見せなどにより、1組つづつ「けずられ」ていき、最終的には、残った3組で優勝者を決定するというもの。
若手芸人たちが生活するペンションには、毎回、先輩芸人が講師として授業をしに来るのだが、そのメンバーが、中川家、笑い飯、千鳥、バイきんぐ、サンドウィッチマンと豪華。
ただし、そのメンバーが、「けずり」の審査も兼ねるため、若手芸人にとっては、かなりシビアな状況でもある。

番組は全7回で、すでに3回が放送済。ということで、すでに3組がけずられている。
初回放送にいたっては、「選ばれた芸人同士で審査する」という、究極過ぎる展開で、そういう意味では、「お笑い番組」にプラスしてドキュメント要素もある番組。
何と言っても、「人を笑わす」ことを仕事としている人間が、「お前たちはつまらない」ということを突きつけられる。これほど残酷なことは無い。

なお、今回選ばれた若手芸人は、ザ・パーフェクトオレンジサンセットAマッソいらんいらんぺこぱアルドルフダイキリこゝろ天然ピエロの9組で、中川家・笑い飯・千鳥 + 倉本美津留らの審査によって、選ばれたメンバー。

最近、若手芸人をチェックすることもあまり無く、ほぼ知らない芸人(「こゝろ」にいたっては、芸歴3ヶ月)だったが、この番組が成功している一番のポイントは、この9組を選出したことだろう。
若干大阪寄りな審査メンバーということで、少し偏りもあるかとも思ったが、選ばれた9組は見事にバランスのとれたメンバー。
最初の芸人紹介のときのネタをパッと見た印象では、ザ・パーフェクトとオレンジサンセットが少し抜けている感もあったが、番組を見ていくと、他のコンビも「選ばれるもの」をもっているのがわかる。
素人による審査がいいか、それともプロによる審査がいいのか、というのは、たまに議題に上がるテーマだが、この番組に関しては、「プロの審査する目の確かさ」を思い知らされた。
ちなみに、番組が各芸人につけたキャッチフレーズは、こんな感じ → ザ・パーフェクト(予測不能のボケツッコミ)、オレンジサンセット(たたみかけシュール漫才)、Aマッソ(独創系クール女子)、いらんいらん(昭和風絶滅危惧種)、ぺこぱ(背水の陣の舞)、アルドルフ(渋谷の貴公子)、ダイキリ(反逆のブサメン)、こゝろ(浪速の不良コンビ)、天然ピエロ(夜のクラブ部長)。

また、毎回、ネタ見せの際に、中川家・笑い飯・NON STYLE石田ら、審査する芸人からの指摘も的確(「本当に「そうなんだ~」と思ってセリフを言っていないことが伝わってしまっている。コンビ間での視線が違う方向を向いている。つかみからのテンションの変わり方が急すぎる。いきなり「ファミレス」の話に持って行ったが、設定への入り方が台本を読んでいるように感じられる etc)。結果を出している芸人たちが立っているステージの「高さ」を認識させられる。

一方で、出ている芸人たちのネタを見ていて、新たな可能性も感じる(平均年齢は26歳ぐらいか)。
現在売れている芸人の多くは、40歳前後に集中している感があるが、それから少し離れた(5~8年ぐらい)世代のネタを見ていると、総じてその縮小版に見えてしまうことが多かれ少なかれある。要は、どこかで見たものの焼き直しというか…。

ただ、そこからさらに5~8年ぐらい離れてくると、今度は、子どもの頃から「M-1グランプリ」などがあった時代に突入してくるわけで、見てきたお笑いのネタの素地という意味では、少し上の世代よりは濃くなってくるのではないか。
となると、勘のいい芸人は、「今ウケているものや流行っているものと同じようなことをやっても、そこまで面白くない」ということはわかってくるわけで、じゃあ、そこから「どう新しいものを作っていくか」といった探究心は、かなり高いのではないか、という期待感がある。

自分は、今中心にいるお笑い芸人と同じぐらいの世代だが、自分が子どもの頃のことを考えると、本質的には、10代の世代の多くが、40オーバーの芸人を面白いと思うような状況は健全ではない(^^)と思っている。
そうした意味では、40代以上の人間が、「よくわかんねえよ。(でも、なんか面白いけど…)」と思うような若手芸人がたくさん出てくることが、最近ペースが落ちている「面白い芸人」の輩出度が再び上がってくる契機になるのではないか。

そうした期待も込めて、次週以降の『笑けずり』も見ていきたいところ(今回の視聴者の反応如何によっては、第2シーズンもある?)。

なお、些細なことだが、「笑けずり」のなかのネタ見せで感じたこと。

オレンジサンセットは、結構好きなコンビではあるのだが、ネタのなかで、「あご勇」というフレーズがあった(オンエアには無かったが、HPでの全編ネタ紹介の方で)。ただ、24歳という年齢を考えると、あご勇を実体験として知っているとは思えないので、少し「笑いをとりに行った安易なフレーズ」のように感じてしまった。どうせ「あご勇」を使うなら、「『あご勇』ってよく名前は聞くけど、テレビに出てるの、一回も見たことねえよ」ぐらいまで行ききってほしいところ。

一方、Aマッソのネタのなかで、音楽の授業で音を外して歌うというシチュエーションがあったが、そこで歌ってたのがTHE YELLOW MONKEYの「プライマル。」。おそらく、見ていた人で曲名まで分かった人は5%もいないと思うが、ネタとしては「音を外して歌ってそう」ということがわかればいいので、ここは、曲が何であるかまでは見ている人にわからなくてもいいところ。ただし、そこにメジャーな曲ではなく、(おそらく)自分の好きな曲を挟み込んで来るところに、センスを感じた(もう、だいぶ前のことになるが、M-1グランプリの決勝で、スリムクラブの真栄田が、THE BLUE HEARTSの「青空」を入れてきたのとおんなじ感じ)。
ネタに、芸能人や歌の要素を挟み込むときは、結構その芸人のセンスが露わになる。

『笑けずり』追記
『笑けずり』芸人レビュー
『笑けずり』― 改めて「いま一番面白いお笑い番組」
『笑けずり』セミファイナル。 ~第6回レビュー~
『笑けずり』ファイナル レビュー


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by momiageculture | 2015-08-30 00:53 | お笑い | Comments(0)

お笑い・音楽レビューを中心に続いています。細々と更新し、20年目。SPECIAL OTHERS、スカパラ、ゴッドタン、クイズ☆タレント名鑑 etc。/スポーツ系記事はこちら→http://agemomi.exblog.jp/


by もみあげ魔神
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